罠に嵌められた悪役令嬢は流刑先の辺境で聖女と讃えられる

まるぽろ

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「シェリィ、あなた冒険者がどういうものか分かっているの?」

 凛とした表情のまま、フィーナ先輩は問いかけてきた。なんだか懐かしい。先輩はいつもこうだった。私がどんなことを言っても呆れたような表情なんて一切見せることなく、諫めてくれた。

「命がけで魔物を狩ることで町や民を守り、さらにはその素材で衣食を支える方たちです」

「確かに冒険者は魔物を狩る立派な職業だけどそれだけじゃない。彼らはどうしようもなく粗暴な面もある。そんな荒くれ者たちの中に入っていくのが心配なの」

「ルゥ、パステル、ノア君の三人がいますから」

 三人に視線を向けながら、紹介がてら一人ひとりの名前を言っていく。先輩は三人に目礼してから視線を私に戻した。

「ルゥさんはともかく、パステルさんは小柄な女性だし、ノア君に至ってはまだ幼いじゃない」

 心配は本当にしてくれれるんだろう。でも、先輩の目が言ってるのは別のことだ。先輩は私に覚悟があるのかを問いかけている。

「パステルは強いですよ。ノアくんはこれから強くなりますから」

「だけど──」

「──フィーナ先輩、私決めたんです」

 それなら言葉は必要ない。さっき思いついたことだけど、私は真剣だ。できるだけ多くの子たちの助けになれる方法が見えていて、選ばない理由なんてない。

「……まったく。おっとりしてそうなのに、こうだと決めたら頑固なのは相変わらずか」

 ふっと身体の力を抜き、先輩は天使のような微笑みを向けてくる。こんなとこも変わってない。この笑顔に何人が骨抜きにされたことか。

「ルゥさんとパステルさんの言うことをよく聞くように」

 人差し指を立て、顔をずいっと近づけてくる先輩。いや、ちょっと、それは初めてのパターンなんですけど、可愛すぎませんか?

「返事は?」

「は、はいっ」

「よろしい。孤児院には私から話を通しておくよ。何かあったら、いつでも相談に来なさい」

 先輩はそう言うとルゥたちと挨拶を交わし、もう一度私に微笑んでから去っていった。


「お嬢、本当に良いのか? 治療院というのは悪くないと思うが」
 
 先輩が歩いていった方をぼうっと眺めていた私に、ルゥが話しかけてきた。いけない、しゃきっとしないと。

「うん。ルゥとパステルに頼ることになるけど、私は強くなりたい。……それに関係することで、皆に話しておきたいことがあるの」

 ノア君のこともあるし、いつまでも隠しておくべきじゃない。タイミングを見計らってたけど、ちょうどいい機会だと思う。

「話しておきたいこととは?」

 すーっと息を吸い込む。お父様やお母様にも話さなかったこと。もしかしたら職業発現の儀式の際にマザーアンナだけは知っていたかもしれないけれど、自分から言うのは初めてだ。そう考えると、どうしても緊張してしまう。

「実は……私もノア君と同じでギフトを授かってるの。恩恵は仲間の成長を促すこと。だから、私も一緒に戦いたい」

「なんと」

「にゃんと、お嬢にそんな秘密があったなんてにゃ」
 
 驚いた様子だが、疑うようなそぶりなんて微塵もない二人。その表情に心が安らいでいく。打ち明けてしまえば、意外とすんなり受け入れられることはままあるとはいえ、この世界のギフトはそんなに軽くないと思っていたんだけど……。

「信じてくれるの?」
 
「もちろんだにゃ!」

「僕も信じます」

 パステルに続いて、ノア君もはっきりと意志を示してくれた。嬉しそうにしてくれている姿に、こっちまで嬉しくなる。ノア君の頬に触れてから返事がないルゥの方に視線を向けると、彼は何かを考え込んだ後で口を開いた。

「……信じる。それについては心当たることもある」

「心当たり?」

「イラトゥスエルクを倒したとき、僅かに違和感があった。久しぶりだからかと思っていたが、あの程度の魔物にしては自身が強化される感覚が強かった気がしたのだ」

「強化って何?」

 私が何か言うよりも早く、ノア君が尋ねた。少しずつだけど修行も始めたし、強くなりたいなら気になるよね。

「ノアは森で魔物を倒したことはないのか?」

「村の外に出たらダメだった」

「……そうか。魔物を倒すと少しずつ自身の力が強くなるのだ。修行で技術を磨き、魔物を狩って力を付ける。強くなるには、この二つをバランスよく行うことがいいとされている」

 そう。レベルやステータスがある訳じゃないけれど、この世界では魔物を倒すと身体能力や魔力が強化される。イラトゥスエルクとの戦闘以降、私もなんだが調子がいいと思っていて、これがそういうことなんだとしばらくして気が付いた。

「……僕も?」

「ああ。お嬢のギフトとノア自身のギフト。努力次第では、常人の何倍ものスピードで強くなれるやもしれんな」

「そっか。……僕、頑張る」

 自分の手を見つめ、ノア君はそう呟いた。そんなノア君の背中を軽く叩き、元気が有り余っている様子のパステルが飛び跳ねるように右手を上げる。

「そうと決まれば、早く冒険者ギルドに行こうにゃ!」

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