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まるぽろ

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第五章:諸国漫遊Ⅲ

シーカーウルフへの対抗策

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「デッドリーベアって?」

 初めて聞く魔物の名前に、朔はナタリアに尋ねた。険しい表情の彼女は、矢に強弓に番えながら答える。

「魔の森北方に住むAランクの魔物です。体毛は硬く、魔法防御力に優れています。生半可な斬撃や魔法ははじかれますので数よりも威力を優先してください。注意すべきはその膂力です。また、矢と魔法が攻撃の主体であるエルフの天敵でもあります」

 魔の森北方はナタリアの故郷でもある神樹国からほど近く、一度獲物を見つけるとどこまでも追い続けるデッドリーベアはエルフを恐れさせていた。その天敵を目の前にして、ナタリアの目に力がこもる。

「北方からここまでシーカーウルフに追われ続けていたのでしょう。双方かなり深手を負っているため今が好機です。放置すればシーカーウルフに上位種が誕生してしまうため、ここで仕留めるしかありません」

(たしかに翼亜竜よりは強そうだけど、暴龍に比べればまだましかな)

「了解。ここに引き付けて迎え撃ちます。必ず助けますので、即死だけは避けてください」

 朔はそう言って皆を鼓舞しつつ、練り上げた魔力で巨大な火玉を作り上げた。さらに魔力を込め、それを圧縮していく。

 シンとデッドリーベアの距離が徐々に広がっていく中、朔たちは魔術を行使するタイミングをじっと待っていた。ナタリアが息を吸い込もうとしたそのとき、群れのリーダーであるハイ・シーカーウルフがデッドリーベアの後ろ脚に噛みつき引きずり倒した。

「今です!」

 間髪なく叫ばれたナタリアの指示に、朔たちは一斉に魔術を発動させる。同時に、シーカーウルフの群れがデッドリーベアとハイ・シーカーウルフを追い越し、口を開いた。

(なんだ!?)

「「「「「ウオオオオオオオオン‼」」」」」

 シーカーウルフの群れが発動したのはただの風壁──のはずだった。しかし、何重にも重ねられたその風壁は、朔たちの魔術を大きく減衰させることに成功していた。

「魔術の共鳴です!」

「共鳴?」

「同属性の魔術を同時に重ね合わせることで効果を高めることができる技術です。あの群れは相当に練度が高いということになりますね」

(だから風壁に撃ち落とされたのか。特に火魔法は推進性が弱いし、接近戦でいくしかないかな)

「リア、エマさんはここから攻撃を。ロジャーさんはここを守ってください。ヒトミとリトも──」

 朔は即断し、皆に指示を出していくが、言葉の途中でヒトミが口を挟んだ。

「ハニー、ボクは一緒に行くよ」

「フゴゴッ!」(僕もです!)

「……わかった。でも、ナタリアがフォローできる範囲に必ずいること。リトはヒトミの近くにいて守ってあげてね」

 さらにリトまでが続き、朔は躊躇いながらも了承する。そこに、護衛のロジャーが難色を表情で示しつつ朔に尋ねた。

「アサクラ男爵はどうされるおつもりなのですか?」

「デッドリーベアがやられる前に狼の群れを倒します。幸い、狼相手ならいいものがあるんですよ」

「いいもの?」

(腐った魚醤も効きそうだけど、これにしようかな)

 朔がアイテムボックスから取り出した樽の中にあるのは赤い液体──塩・酢・唐辛子・ハーブで作成したチリペッパーソース──ようはタバ〇コの一種である。辛い料理が好きなミラのために作ったものだが、彼女の求める辛さにするだけの量をかけると酸味が強くなりすぎるためお蔵入りされていたものだった。

「リア、この中身を狼がいる辺りに散布できないかな? できれば細かい霧状だとなお良いんだけど」

「霧状……可能ではありますが、風壁で防がれる可能性があるため狼の注意を引きつける必要があります」

「了解。リトと一緒にやってみる」

 ナタリアが素早く方法を考案し、朔は頷きながら答えた。そんな朔に、馬車の上にいるミラから声がかかる。

「意外」

「俺だって食材を無駄にしたくないけど、美味しく食べられないものは有効に活用しないとね。じゃあ、そろそろ行こうか。タイミングはリアに任せるよ」

 朔はミラの短い言葉の意味を正確に読み取り返答した。それから、朔、ヒトミ、リトの三人は土壁の上から飛び降り、平原に着地する。

(とりあえずシーカーウルフのリーダーらしきあいつからいってみますか。看破の魔眼!)

species:ハイ・シーカーウルフ
Lv:47
rank:B

ステータス
HP:2719/9784(128)
MP:1350/5107(64)
STR:613(5)
VIT:669(6)
AGL:857(7)
DEX:525(5)
INT:567(5)
MAT:669(6)
MDF:520(5)

Skill:噛みつきⅣ、爪撃Ⅳ、追跡Ⅴ、気配察知Ⅵ、指揮Ⅳ、風魔法Ⅳ、魔力操作Ⅳ

(あれ、こんなもの? ってか、HPもMPも3割切ってるし……)

「ハニー、どう?」

「Bランクのレベル47。HPMPは三割以下。スキルは高いけど、ステータスは一番高いAGLでも翼亜竜より低い。ってか、AGL以外俺の方が高いんだけど……なんで?」

「大分ぼろぼろだねー。魔物にも色々種類があるし、全部が亜竜と同じくらい強いわけないからね。それに、ハニーはいい加減ステータスお化けってことに気付いた方が──来るよ!」

 朔から魔眼を向けられたハイ・シーカーウルフは唸り声を上げ、今にも駆けだしそうになっていたが、息を切らして腹ばいにうずくまるデッドリーベアを睨みつけ、口を上に向ける。

「ウォオオオオオオオオン!!」

 リーダーの号令一下、シーカーウルフの群れは朔に向かって走り出した。

(接近戦を覚悟はしたけど、正面から殴り合うつもりはない!)

「火壁! 土操作!」 

 朔は分厚い火壁をシーカーウルフとの間に生み出し、群れを包み囲むように左右に広げていく。さらに、炎の壁の手前に土操作でいつもの城壁のごとき壁を作り上げた。

 土壁が見えていないシーカーウルフが選んだのは風魔法による正面突破。リーダーの強い殺気を帯びた命令も相まり、朔の罠へといざなわれる。

「「「「「「ウォオオオオオオン!!」」」」」」

 魔術の共鳴による強烈な風玉が発動され、朔の火壁を散らしていく。しかし、その先にあった分厚い土壁はびくともしない。経験豊富なシーカーウルフであっても、想定外の事態に足が止まる。その隙を、彼女・・が見逃すはずがなかった。

「このような使い方は初めてですが、意外とできるものですね。行きなさい」

 シーカーウルフに気付かれないように上空を漂っていた六つの赤い玉が、ナタリアの意思に従い動き始めた。



※後書き※
皆さま、お久しぶりでございます。
まるぽろです。

大変お待たせして申し訳ありません。
昨日発売された本作の3巻(完結版)の約6万字に及ぶ書き下ろし作業を進める中で、世界の歴史がどう変わるのか、それをWEB版にどの程度影響させるのかを悩んでおりましたが、WEB版はWEB版として進めて行こうと決めました。

更新速度が遅い作者ですが、本作や本作の続きを書けなかった間に公開した新作につきまして、これからもお楽しみいただけますと幸いです。

まるぽろ
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感想 231

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みんなの感想(231件)

2020.07.22 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2020.07.23 まるぽろ

ネコニコッバンバンさん、ご感想ありがとうございます!
メインの熊さんはまた別の展開がまっておりますゆえ(*´艸`*)
おっしゃる通り、粉末ではなくチリペッパーソース(霧状)なので、狼さんたちが魔法を使おとすると……
続きもお楽しみいただけると幸いです!

解除
yana
2020.07.21 yana
ネタバレ含む
2020.07.21 まるぽろ

yana様、いつもありがとうございます!

ペッパーボムいいですね!
タバ○コまみれの狼の肉は……ラッキーフラワーが処理してくれるはずです!(笑)

解除
黒うさぎ
2020.03.05 黒うさぎ

おー 今思えばストックしてる読みたい作品じゃないですか 作者が凪さんとは……見てなかった
●●●のおかげで稼ぎが皆無になりつつあるので見たくても見れないのですよね
せめてレンタルがぁー…………

解除

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