捨てられ令嬢は、騎士団に拾われる

太もやし

文字の大きさ
14 / 34
捨てられ令嬢、騎士団に入る

アティ、錬金の準備をする

しおりを挟む
 そしてアティとバートは、すぐにアイテムを錬金することになった。

「ここが僕の錬金工房だ。早速、準備をしよう。ところで、君は何を使って錬金するんだい?」

 バートはアティを工房と書かれた部屋に案内すると、早速尋ねた。

 その工房には、大きな竈(かまど)が部屋の奥にある。大きな面積を取る竈の他には、実験器具や錬金術に使う道具や素材がところ狭しと置いてあった。

「いつもは、お鍋でポーションを作っています。錬金術の実験で習うレシピにそって作っているので、それ以外の作り方を知らないんです」

 アティは困ったように、眉を下げた。そんな彼女を気にせず、バートは興奮したように早口で喋りだす。

「僕が思った通り、君は本当に錬金術の申し子だ。現在、流通している基本レシピを作ったのは僕だが、あのレシピであの完成度を作れるとは思ってもいなかったよ」

 手放しにアティを褒めるバートに、彼女は喜びを覚えると同時に、彼の言葉に驚いた。

「あのレシピを作った人って、バートさんだったんですか!? すごいです!」

 バートは部屋の奥に入ると、レシピ本を本棚から取りだした。そして本をめくり、レシピを探す。

「まあ、これでも錬金術の最先端を走っている自信があるからね。レシピのコンペで優勝したときは、当然と思ったさ。
 しかし君のような優秀な子が、僕のレシピを使っていると考えると感慨深いな。上級錬金術士向けのレシピもあるんだ。今度からはぜひ、そちらを使ってみてくれ」

 コンペとは、コンペティションの略で、競技会のことだ。

 バートのあまりの早口に、アティはとりあえず頷くしかなかった。バートはレシピ本の方を見ていると、アティは思っていた。しかし、彼は頷いている彼女の方を勢いよく向いた。その顔は喜色に満ちていた。

「そうか、使ってみてくれるか! とても嬉しいよ!」
「え、ええ。ぜひ使わせてください」

 そんなバートに向かって、アティは微笑んだ。天才は人とは違うと言うし、彼もそうなのね。そう思うと、自然と笑みが生まれたのだ。

「他に何か作ったことはあるかい? まあ、作ったことのないものはこれから学べばいいだけの話だが、一応、教えておいてくれ」

 上機嫌に尋ねるバートに、アティは悪いことをした気分になった。

「いえ、その授業で習ったポーションしか作れないんです。錬金術のことは、ほとんど知らなくて……」

 アティがそう言うと、バートはズカズカと彼女に近寄り、肩をがっしりと掴んだ。

「それなら、たくさん学ぶことがあるな。これからは、たくさん錬金して共に学んでいこう! 君は素晴らしい錬金術士になれるよ!」

 バートの美麗な顔は喜色に満ちていた。そんな彼を見ると、アティはフツフツと勇気がわいてきた。

「これから、ですか?」

 なんて素敵な言葉かしら。やりたいことがまた増えるなんて、とっても素敵だわ。アティは柔らかく微笑み、バートの手を握った。

「ああ、これからだ。共に頑張ろう」

 バートも優しそうに笑っている。
 アティはこれからが楽しみになった。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ
恋愛
 ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。  ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。  解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。 「君は、おれに、一体何をくれる?」  呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?  強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。   ※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...