柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

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第2章 北楊村編

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昨日晏寿が休んでいる間に秀英と景雲で説明が終わっていたようで、村人達も含めて酒造りを行っていた。

その場がとても活気づいていたので、晏寿は上手くいっていることを感じた。
酒造りに使っている建物は温度管理をしなければならないので、冬場とはいえど温度が高い。
力仕事もあるので、村人は汗だくになりながらそこで作業していた。

大変な仕事ではあったけれど、冬に暇をしていることが今までは多かったので皆いきいきと働いていた。
そして発酵期間が過ぎ、出来上がった酒を村の大人に振る舞われた。
酒を飲むのが初めてという者も多く、皆感激して振る舞われた酒を飲んだ。

「兄ちゃん、姉ちゃん、おれも欲しい」

大人達が飲んでいるものを子供達も欲しがり、三人の周りに集まっていた。
裾を引っ張られ、転びそうになりながらも子供達を諭す。

「大人になったらね」
「むー、いくつになったら大人ー?」

いくら言われても子供には渡すわけにはいかない。
何とか子供達を掻い潜り、酒を皆に配ることができた。

「はぁ~、疲れた」

三人が寝泊まりしている小屋でうつ伏せに倒れて景雲が呟く。
晏寿は服をたたみ、寝る準備をする。

「これで、特産のほうも一歩進んだね」
「ああ。だがこれからこれを世に浸透させないといけないから、やることは尽きないが」

秀英はいち早く寝る準備を済ませ、明日の準備までしていた。
先程の秀英の発言を受けて、景雲が

「浸透、か」

と復唱した。

「具体的に何をすればいいんだろうな」
「ひとまず大臣に送ってみる?」
「いや、それはやめたほうがいい。
あの大臣なら、この案にいちゃもんつけてきそうだ」

晏寿の提案に心底嫌そうな顔をする。
けれど景雲の言うことも一理あるので、二人は何も言わなかった。

「人の噂を使うのもありだろうな」
「噂?」
「城下でまずここの村の名前を伏せて売る。
生産場所がわからないとなると、なかなか手をつけないだろうが味がよければ貴族ほど生産者にこだわらないだろう。
生産者のわからない旨い酒となれば話題にもなる。
だいぶ話題になったところで種明かしをすれば、それだけ衝撃をあたえることもできる」

「成程な」

この北楊村は世間的に言えば見下されている部分がある。
そんな村の名前を最初から出しても、売れはしないだろう。
だから名を伏せて販売することで、世間から見返す効果も望めるのだ。

「じゃあ、誰が売りに行くかだが…」
「景雲がいいと思う」
「俺もそう思う」

景雲の発言を遮って晏寿が意見し、秀英も同意する。
名前を挙げられ不服そうな顔をする景雲。

「なんで」
「「口が上手いから」」

晏寿と秀英に口を揃えて言われてしまい、ぐうの音も出なくなる景雲なのだった。
結局、景雲は村で作られた酒を城下に売りに行くために一旦村を離れることになった。

「何とか景雲行ったね」
「ああ。最後まで渋ってたな」

景雲が発った道を二人で眺めながら話す。

「ふふ、面倒臭がりだからね。さて、景雲がいない分も頑張らないと」
「張り切りすぎるなよ。また倒れてもらっても困る」
「もう大丈夫です!」

秀英は晏寿を心配するようなことを言っているが、口の端が少し上がっているためからかっているのがわかった。
それに気づいた晏寿はむっとしながら秀英に噛みつき、ずんずんと仕事場に戻り始めた。
そんな晏寿の態度を見ていた秀英は、笑みをこぼしながら晏寿のあとを追うのだった。
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