柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

文字の大きさ
78 / 133
第6章 景雲の姉襲来編

3

しおりを挟む
後輩の所に泊まらせるわけにはいかないため、ひとまず家に帰りたがらない景雲を連れて晏寿は帰宅したのだった。

「で、どうして秀英もついてきたの?」

家の前でなぜかついてきた秀英に晏寿は尋ねる。

「晏寿の家に男が泊まると考えただけで腹が立つ。だから俺も泊まることにした」
「泊まることにしたって、私の了承は…?」
「婚約者だろう」
「まだ婚約してないし」
「いずれする」

譲る気配のない秀英に呆れながら、晏寿を筆頭に家に入った。
すると中から、瑚蘭が誰かと談笑しているのが聞こえてきて、晏寿は首を傾げた。

「母様ただいま。お客様?」
「晏寿おかえりなさい。あら秀英君と景雲君もいらっしゃい」
「お邪魔しています」

にこやかに瑚蘭が晏寿を迎え入れ続けて秀英・景雲と入っていったところで、景雲の動きがぴたりと止まった。

「景雲…?」

景雲の視線の先には、瑚蘭と談笑していた女人の姿があった。
若草色の服をまとい、煌びやかな簪を髪にさした女人が優雅に微笑んでいる。

「晏寿、こちら景雲君のお姉様の杏歌さん」
「初めまして、景雲の姉の容 杏歌よう きょうかと申します」

「あ、姉上、なんでここにー!?」

そこにいたのは、景雲が最も会いたくない姉、杏歌であった。



「お母様に景雲がどこに行ったか聞いたら、ここではないかということでしたの。愚弟がお世話になっているんですもの。それにお母様も時々お世話になっているということだったので、ご挨拶に伺うのは通りでしょう」

歌うように軽やかに話す杏歌に対し、顔を真っ青にしながら隣に座る景雲。
とりあえず、客人達に席についてもらって晏寿は茶の用意をした。

「そうだったんですか。お茶も出さずに申し訳ございません。母はそういったことが苦手で…」
「いえいえ、急に訪れたのは私ですもの。お気になさらず」
「杏歌さんはとても淑やかで明るい方よ、晏寿。私とても気に入ってつい話し込んでしまったわ」
「まぁっ、ありがとうございます。私もとても楽しゅうございます」

瑚蘭と杏歌が盛り上がっている中で少し引いた状態で、秀英も様子を伺っていた。
秀英の前に茶を出すと小さな声で礼を言い、口へと運んだ。

「そうそう、こちらに座っている秀英君が先程話していた晏寿の婚約者候補なの」
「ぐふっ」
「秀英!?」

唐突に自身に白羽の矢が刺さり、飲んでいた茶を引っかけむせる秀英の背を晏寿が慌ててさする。

「軒下で熱烈な愛を叫んだというお方ですか?そうは見えませんが、大胆な方ですのねぇ」
「げほっ」
「それも景雲との縁談を破談にした直後に行われたとか」
「うっ、か、母様!色々と話さないで!」

更なる攻撃が秀英にされ、流れ弾が晏寿にも当たる。
晏寿は瑚蘭を咎めたが、瑚蘭は意味をわかっていないようで、
「あら、駄目だったかしら」
とのほほんとしている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...