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第1章 官吏試験編
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興奮冷めやらないまま、晏寿は自室へと帰っていた。すると、遠目から部屋の入り口に人が立っているのが確認できた。近付いていくとそれが秀英だということに気付く。そして何故部屋に入っていないのかと疑問になる。
晏寿が近付くと秀英も晏寿の姿を確認した。
「部屋に入らずに何を?」
「晏寿を待っていた」
秀英の発言に目を丸くする晏寿。
晏寿は秀英から名前を呼ばれた記憶がないし、まさかの自分を待っていた発言。
秀英の皮を被った別人なのではと思ってしまっていた。
「大丈夫だったか?」
「はい?何が?」
「大臣に呼ばれてたみたいだったから。
やはり、大臣も性別のことを気にしてるのではと思って」
「ああ。
啖呵切ってやったよ」
「は…?」
晏寿があっけらかんと「喧嘩売ったけど何か?」という態度をとるので、秀英はぽかんという表情になる。
それを特に気にもせず晏寿は続ける。
「金が目的か、男が目的かって言われたから
『そこまで落ちぶれていない』って言い返してきた。
そしたら私でそういうことが目的じゃないってことを示せだと」
「…そうか」
秀英は安心したように軽く微笑む。
その表情を見て、晏寿は尋ねた。
「その、心配してくれたの?」
「まぁ、多少なりに。
同室の好もある」
「…秀英も私が女だってことを気にしてる?」
気になっていたことを口にする。
晏寿は儀円に啖呵切ったときには感じなかった緊張を、なぜかこの場では感じていた。
なぜか、秀英や景雲には自分の存在を拒絶されたくなかった。
「…気にしてない、とは言いきれない。
けれど晏寿の実力は認めているし、他の者が女ということで晏寿を卑下したとしても、晏寿はそれに臆すことはないと思っている」
「ならさっきみたいな、心配するのはやめて。
私の実力を認めてるのなら尚更。
私は何もできない子供じゃない。
私のことを女だと思わないで。
すぐには無理だと思うけど、私は自分の力でちゃんと地面に立ちたい。
頼ってばっかりの弱い女だと思われたくない!」
「それだけ口が動けば心配するほどではないだろうよ」
晏寿と秀英はこの場には二人だけと思っていたので、第三者の声に虚を衝かれる。
声の主は部屋にいたらしい景雲で。
部屋の入り口から顔を出し、呆れ眼で二人を見ていた。
「痴話喧嘩に口出すつもりもなかったけど、気が変わった。
とりあえず、部屋で続きはやれ。
『ご近所迷惑』ってやつだ」
景雲に常識的なことを言われ、晏寿は頬を朱らめ秀英は気まずそうな顔をする。
そして景雲に促されるまま部屋に入る。
「俺のことは気にせず、続きをどうぞ」
などと景雲から言われるが一度冷静になってしまっているため、口を開こうにも開けない。
微妙な空気が流れる。
「心配するなっていうやつだが」
不意に景雲が晏寿のほうは見ずに、口を開く。
「それは無理な相談なんじゃないか?」
景雲にいきなり言われ、晏寿は衝撃を受ける。
「どうして――」
「たとえば、
仕事中でも晏寿が熱を出したと聞けば、きっと晏寿の容体を気にする。
秀英が怪我をしたと聞けば、きっと秀英の怪我の具合を気にする。
こういった心配を晏寿はしないか?
それとも、周りを気にしないほど冷酷な人間か?」
「違っ」
「だったら、俺達だって晏寿のことを心配したっていいだろう?
そこは男だとか女だとかはないはずだ。
ただ、同朋の身を案じているだけ。
心配するななんて寂しいこと言うなよ」
このとき初めて晏寿と景雲の目は合った。
景雲の目はとても優しく、諭してくるような眼差しで晏寿は胸がきゅっとなるのを感じた。
「…私、どこか焦ってたのかも。
女だからっていう理由で馬鹿されて、卑下されて。
ずっと気を張ってた。
秀英、景雲。
変なこと言ってごめんなさい」
晏寿が深く腰を折って謝ると、秀英がそっとその頭をなでた。
それが晏寿には『気にするな』と言っているかのようで、更に胸が締め付けられた。
「気に病むことはないさ。
礼は晏寿の膝枕でいいぞ」
それまでのしんみりとした空気から一変し
異様な空気になる。
は?という表情で晏寿は景雲を見た。
そこにはいつものしたり顔の景雲がいた。
先程まで良い事を言っていたのに、丸つぶれである。
「…景雲」
地を這うような声がしたと思い横を晏寿が見れば、秀英が眉間に皺を寄せながら景雲を睨んでいた。
「お前という奴は口を開けばくだらないことばかり…」
「はは、冗談だ、だからそんなに怒るな…
いや、本当にすまん、秀英!」
結局景雲がかっこいいままでは終わらないのであった。
「ん?杜補佐、この書類は?」
「それは秀英君達に来週から任せようと思っている仕事です」
「三人で東苑地区の管理をか?」
「はい。
東苑地区なら治安も安定してますし、初めての仕事ならここがいいかと」
「却下」
「はい?」
「北楊村に変更」
「えぇ!北楊村にですか!?
そこは、初めて仕事をする彼らに任せるにはちょっと…」
「大丈夫大丈夫。
甘やかすな。あいつらの技量を見てみようじゃないか」
「は、はぁ…」
「せいぜい、死なないようになぁ~」
「(鬼だ…)」
晏寿が近付くと秀英も晏寿の姿を確認した。
「部屋に入らずに何を?」
「晏寿を待っていた」
秀英の発言に目を丸くする晏寿。
晏寿は秀英から名前を呼ばれた記憶がないし、まさかの自分を待っていた発言。
秀英の皮を被った別人なのではと思ってしまっていた。
「大丈夫だったか?」
「はい?何が?」
「大臣に呼ばれてたみたいだったから。
やはり、大臣も性別のことを気にしてるのではと思って」
「ああ。
啖呵切ってやったよ」
「は…?」
晏寿があっけらかんと「喧嘩売ったけど何か?」という態度をとるので、秀英はぽかんという表情になる。
それを特に気にもせず晏寿は続ける。
「金が目的か、男が目的かって言われたから
『そこまで落ちぶれていない』って言い返してきた。
そしたら私でそういうことが目的じゃないってことを示せだと」
「…そうか」
秀英は安心したように軽く微笑む。
その表情を見て、晏寿は尋ねた。
「その、心配してくれたの?」
「まぁ、多少なりに。
同室の好もある」
「…秀英も私が女だってことを気にしてる?」
気になっていたことを口にする。
晏寿は儀円に啖呵切ったときには感じなかった緊張を、なぜかこの場では感じていた。
なぜか、秀英や景雲には自分の存在を拒絶されたくなかった。
「…気にしてない、とは言いきれない。
けれど晏寿の実力は認めているし、他の者が女ということで晏寿を卑下したとしても、晏寿はそれに臆すことはないと思っている」
「ならさっきみたいな、心配するのはやめて。
私の実力を認めてるのなら尚更。
私は何もできない子供じゃない。
私のことを女だと思わないで。
すぐには無理だと思うけど、私は自分の力でちゃんと地面に立ちたい。
頼ってばっかりの弱い女だと思われたくない!」
「それだけ口が動けば心配するほどではないだろうよ」
晏寿と秀英はこの場には二人だけと思っていたので、第三者の声に虚を衝かれる。
声の主は部屋にいたらしい景雲で。
部屋の入り口から顔を出し、呆れ眼で二人を見ていた。
「痴話喧嘩に口出すつもりもなかったけど、気が変わった。
とりあえず、部屋で続きはやれ。
『ご近所迷惑』ってやつだ」
景雲に常識的なことを言われ、晏寿は頬を朱らめ秀英は気まずそうな顔をする。
そして景雲に促されるまま部屋に入る。
「俺のことは気にせず、続きをどうぞ」
などと景雲から言われるが一度冷静になってしまっているため、口を開こうにも開けない。
微妙な空気が流れる。
「心配するなっていうやつだが」
不意に景雲が晏寿のほうは見ずに、口を開く。
「それは無理な相談なんじゃないか?」
景雲にいきなり言われ、晏寿は衝撃を受ける。
「どうして――」
「たとえば、
仕事中でも晏寿が熱を出したと聞けば、きっと晏寿の容体を気にする。
秀英が怪我をしたと聞けば、きっと秀英の怪我の具合を気にする。
こういった心配を晏寿はしないか?
それとも、周りを気にしないほど冷酷な人間か?」
「違っ」
「だったら、俺達だって晏寿のことを心配したっていいだろう?
そこは男だとか女だとかはないはずだ。
ただ、同朋の身を案じているだけ。
心配するななんて寂しいこと言うなよ」
このとき初めて晏寿と景雲の目は合った。
景雲の目はとても優しく、諭してくるような眼差しで晏寿は胸がきゅっとなるのを感じた。
「…私、どこか焦ってたのかも。
女だからっていう理由で馬鹿されて、卑下されて。
ずっと気を張ってた。
秀英、景雲。
変なこと言ってごめんなさい」
晏寿が深く腰を折って謝ると、秀英がそっとその頭をなでた。
それが晏寿には『気にするな』と言っているかのようで、更に胸が締め付けられた。
「気に病むことはないさ。
礼は晏寿の膝枕でいいぞ」
それまでのしんみりとした空気から一変し
異様な空気になる。
は?という表情で晏寿は景雲を見た。
そこにはいつものしたり顔の景雲がいた。
先程まで良い事を言っていたのに、丸つぶれである。
「…景雲」
地を這うような声がしたと思い横を晏寿が見れば、秀英が眉間に皺を寄せながら景雲を睨んでいた。
「お前という奴は口を開けばくだらないことばかり…」
「はは、冗談だ、だからそんなに怒るな…
いや、本当にすまん、秀英!」
結局景雲がかっこいいままでは終わらないのであった。
「ん?杜補佐、この書類は?」
「それは秀英君達に来週から任せようと思っている仕事です」
「三人で東苑地区の管理をか?」
「はい。
東苑地区なら治安も安定してますし、初めての仕事ならここがいいかと」
「却下」
「はい?」
「北楊村に変更」
「えぇ!北楊村にですか!?
そこは、初めて仕事をする彼らに任せるにはちょっと…」
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