【完結】私を振った元カレからプロポーズされました

葉月光

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8.溺愛の毎日

 その後、私の両親へ一道を紹介した。母は嬉しそうに「よかった・・・ありがとうございます・・・」を繰り返し、父は「うちの娘なんかでいいんでしょうか」と謙遜していた。妹は「お姉ちゃんがあんなにいい男を捕まえるとは!」とビックリしていた。こちらは40近い娘がやっと結婚するとあって、反対のはの字もなく、むしろどうぞどうぞ、よろしくお願いします感満載の挨拶となった。

 晴れてお互いの両親への挨拶も済み、両家顔合わせの日。お祝いの席といえば鰻よね、という一道のお母さんの提案もあり、鰻の割烹料理屋さんに来ていた。実は一道のお父さんが鰻が大好きらしい。

 「で、入籍はいつにするの?」

 「ああ、いつでもいいんだけど。早い方がいいかなと思ってはいる」

 「今は一緒に暮らしてないんでしょう?もう一緒に暮らしちゃいなさいよ。入籍より前に一緒に住んでも問題ないんだし」

 相変わらず話をぐいぐい進めるのは一道のお母さんだ。私の両親は必死さを出さないようにするためか、にこにこ微笑んで事の成り行きを見守っている。行き遅れている娘の両親の方から「もう先に一緒に住んじゃいなさい」とはなかなか言えないのだろうなぁ・・・。

 「そうだな、瑞希さんと話し合ってみるよ」

 そういって私を見て微笑む一道は両家顔合わせの場でも余裕を感じさせる。私はといえばどうも落ち着かない気分だ。ここで何かドジをしてはいけない。かといって喋らなさ過ぎて重たい空気にしてもダメ。いい人が来てくれたと思われたい。

 私と一道との間で、結婚前でも一緒に暮らそうという話は出なかった。私は一道のご両親に反対される可能性を考えていた。一道は反対されても結婚すると言ってくれたけど、やっぱり認めてもらえるまでは・・・ということも頭の隅にあったからだ。

 だけどこうして無事に両家顔合わせの日を向けると、本当に一道と結婚するんだなと実感してきた。あまりにも話がトントン拍子で進むから、現実かなって心配になるくらいだ。だけどよく考えてみたら、男女ともに40手前の大人同士。ご縁があればこうやって話はスムーズに進むものなんだろう。

 両家顔合わせが無事に済んだこの日、私は一道の部屋に来ていた。一緒に暮らしてはいないが、数着部屋着などを置かせてもらっている。私の部屋にも一道用のスウェットがある。

 「無事に終わってよかったよーーー」

 「本当だな、お疲れ様」

 一道はシャワー上がりの私の髪の毛にドライヤーをかけてくれている。自分でできると言ったのだが、初めて一道の部屋に来てから、一道は何故か必ず私の髪の毛をドライヤーで乾かしがるのだ。一道はソファの上で、床に座る私の髪の毛を乾かしてくれている。その間に私は化粧水を入念に塗り込み、乳液と美容液でしっかりたっぷり保湿した。

 ドライヤーが終わると、一道は白湯を入れてくれた。お風呂に入る前に歯磨きを終わらせるというルーティンができてしまった私を気遣って、紅茶などではなく、白湯を入れてくれるのだ。万年冷え性の私にはありがたい心遣いだった。とはいえ、ウオーターサーバーがあるから、冷水とお湯を合わせるだけなんだけど。

 「で、家なんだけど、どうする?」

 「あ、そうだねぇ・・・」

 私の会社と一道の会社は近いけれどそれぞれ使っている電車が違う。一道はJR、私は地下鉄。お互い通勤がしやすいところがいいだろうけど、やはり朝早く行って夜遅く帰って来ることが多い一道が通いやすい方がいいのではないだろうか。ちなみに、今一道が暮らしている部屋は1LDKの賃貸。2人で暮らしても問題はなさそうだ。

 「私は、なんならここでもいいけど」

 「ここでもいいけど、荷物置けるかな?瑞希、荷物多いだろ?」

 「うっ・・・」

 確かに少し荷物が多いなとは自覚していた。今の家に引っ越す前の引っ越し作業で『ミニマリストは無理だけど、モノを減らさなきゃ』と決心したのに、気が付けばまた荷物が増えている。何か大きな買い物をしたわけではないんだけど、昔買ったカバン、帽子などの服飾品が捨てられないままだし、そこに加えて新しいものを買ってしまっていた。

 「ちょっと、整理してみる。いらない服とかいっぱいあるし」

 「手伝ってやろうか?今度の休みとか」

 私の髪の毛を撫でながら一道が提案してくる。うん、1人だと苦手なお掃除も、誰かと一緒なら大丈夫かもしれない。

 「じゃ、お願いしよっかなー」

 「いいよ」

 そういって一道は私の両脇に手を入れてソファの上に座らせようとする。

 「恥ずかしいからそれやめて」

 「恥ずかしい?くすぐったいんだろ?」

 ニヤニヤしながら私をソファの横に座らせる。私が横に座ると、私の腰に手を回し、ぎゅっと引き寄せた。

 「・・・ここ、座って」

 物足りないのか、一道は少し足を開いて座り直し、私にその間に座れと目で促した。ちょっと一瞬ためらいつつ、私は一道の足の間に横向きに座る。すると、一道が両腕でぎゅっと抱きしめてくれた。

 「あー、落ち着く。疲れが回復するな、マジで」

 「一道も今日疲れたよね。お疲れ様」

 私も一道をぎゅっと抱きしめ返す。一道のぬくもりがあたたかくて私も安心した。

 しばらく抱き合っていると、一道が両腕の力を抜いたのが分かったので私も同じようにして力を抜き、そっと一道から身体を離してみる。一道の顔が近づいてくる気配を感じ、私は目を閉じた。
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