猫の手、貸します。

りー

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猫の手、貸します。2話

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ルカはシルクと一緒にお祭りの楽器隊をしてくれる人を探しに行った。
ルカが緊張している様子だったのを見て、シルクはルカに話しかけた。
「ルカ、妖怪の世界はどう?」
ルカはシルクの顔を見て微笑んだ。
「まだよく分からないけど、なんだか久しぶりにワクワクする。」
「このお祭りは猫又と山猫たちで準備したものなんだ。猫又と山猫の先祖が祀られたことから、このお祭りが始まったと言われているんだよ。」
「そうなんだ。協力して準備してるんだね。山猫にも会ってみたい。」
「これから猫又たちが集まるところに行くけど、そのうち会えると思うよ。」
「うん!楽しみ!」
シルクとルカは階段を上がって猫又たちが居る広場に向かった。
「ルカ、ついたよ。」
階段を上がるとすぐに広場が見えた。
広場ではお祭りの屋台の準備が整っていた。
「わー!屋台が沢山ある!人間のお祭りと変わらずに綿飴やたこ焼きがあるんだね。」
「この世界でも美味しいものは変わらないんだ。後で一緒に食べよう。」
「うん。楽しみ!」
ルカは久しぶりのお祭りが楽しみになっていた。

「シルクさーん!」
猫耳が生えている茶髪の男性がやって来た。同じような見た目だから猫又だとすぐに分かった。
「お疲れ様、マール。準備が整ってきてるね!」
シルクはマールの肩をたたいて労った。
「ありがとうございます!あれ、シルクさん、この方は?」
マールはルカの顔を不思議そうに見ていた。
「そうだ、紹介するね。この人はルカ。僕の大切な人なんだ。」
シルクは淡々と説明をした。
「ほう、大切な人って恋人ですか?」
マールのまさかの言葉にルカとシルクは驚いて顔を見合わせた。
「いやいや、違います!家族なんです!」
ルカは恥ずかしかったので、慌てて弁解した。
「そうだったんですか。確かに家族は大切ですもんね。シルクさん、わざと紛らわしい言い方をしたでしょー!」
マールはシルクをからかうように言った。
「大切な人なのは変わりないよ。」
シルクは真面目な表情で答えた。マールがからかったことは完全にスルーしていた。
「私にとってもシルクはとても大事な人だよ。」
ルカも真面目なトーンでシルクの言ったことに答えた。
マールは少し戸惑っていたが、2人の雰囲気を見てニヤニヤしていた。
「なんで笑ってるの?」
シルクは不思議そうな表情でマールに言った。
「シルクさんはそのままでいいんです。そういえば、楽器隊を探してるんですよね?見つかったんですか?」
「ううん、まだ見つかってない。誰か候補になる人って居る?」
シルクはマールに相談している。
「そうですね。猫又の中にも楽器隊が出来る人はいたはずです。広場にいるメンバーを呼んできます!」
マールはほかのメンバーを呼びに行った。
「シルク、楽器隊って和太鼓の他になにがあるの?」
「篠笛、鉦があるよ。和太鼓を含めて3人集まれば良いかなと思ってる。」
「そうなんだね。私が参加したお祭りだとCD音源が流れてたから、生演奏は初めてだな。」
「氏神様のお祭りだから生演奏は必須なんだ。人間界のお祭りは生演奏じゃないんだね。」
シルクは人間界のお祭りには参加した事がないので知識がないのである。
「シルクさん!呼んできました。和太鼓経験者は集まりました。」
和太鼓経験者は2人居た。和太鼓は全身で叩く楽器で疲れてしまうことも考え、2人をメンバーとして決定した。
「あとは篠笛と鉦だけだね!すぐに集まりそう。」
「いやー、ルカさん、厳しいです。あと1人に声をかければ全員に聞いたことになるんですけど、それ以外は演奏出来ないって言われてしまいました。」
「そうなんですか。集まらない場合って、今から楽器未経験の人を練習させて本番に演奏させるんですか?」
「いや、そんな簡単ではないですよ。長時間演奏するので付け焼き刃では出来ないです。」
氏神様に演奏を捧げる訳だから、下手な演奏をする訳にはいかない。
シルクとマールが困っていると、向こうから声が聞こえた。

「シルクー!いたいたー!」
シルクを呼ぶ女性が近付いてきた。
「メイ!」
シルクがその女性に声をかけた。
「お祭りの装飾の準備をしていたんだ。あれ?その女の子は?」
シルクとマールと腕を組みながら話している。
顔は所謂あざとかわいい系女子という感じだ。服装は巫女服っぽいのだけど胸元が空いていてセクシーな服装に見える。
「私はメイっていうの。シルクとマールは猫又だけど、私は山猫なんだ。あなたは?」
ルカにメイが話しかけた。
「ルカって言います!」
ルカは驚きながらメイに話しかけた。
「よろしくね。」
ルカに笑顔で話しかけると、すぐにシルクに話しかけた。
「装飾はもう終わりそうだよ。ここに来る途中、提灯の灯りが綺麗だったでしょ?」
「綺麗だったよ。この灯りを見るとお祭りが始まったって感じがする。」
2人は仲が良さそうに話している。
「メイ、相談してもいいかな。」
シルクはメイに相談をした。
「何かあったの?なんだか慌ててる様子だけど。」
「お祭りの楽器隊が足りないんだ。マールに募集してもらったんだけど、篠笛と鉦が集まらないんだ。」
シルクは困りながらメイに相談した。
「仲間に篠笛と鉦を演奏出来る人がいるから声をかけてみる。」
「ありがとう、メイ。」
シルクはメイの手を取って握手をした。
「じゃあ、また後で来るね!」
「うん!また後で!」
シルクとマールは安堵した顔でメイを見送った。

「演奏出来る人が居るといいね。」
ルカはシルクとマールに言った。
「メイに任せれば大丈夫だよ。メイにはいつも助けられてるんだ。」
「そうですよね!メイさんは凄いですよね!」
マールも笑顔でそう答えた。
「美人で仕事も出来るなんてカッコイイや。」
「彼女は山猫のリーダーなんだ。仕事が出来るし、美人だし、とっても仲間思いなんだよね。」
シルクはメイをベタ褒めしていた。
ルカはモヤモヤした気持ちになっていた。

「シルクー!楽器隊が集まったよ!」
メイはすぐに楽器隊を連れてきた。
「すごい!もう連れてきたの?」
シルクとマールは驚いていた。ついさっき話したばかりなのに、早すぎたからだ。
「メイ!凄いね。助かったよ。」
シルクは喜びながらメイに近付いて話しかけた。マールも拍手しながらメイの方に向かって歩いていた。
ルカは喜ぶべき所だと認識しているのに、何だか疎外感を感じて上手く反応できなかった。
「役に立てて良かった。じゃあ楽器隊を集めて練習を開始させよう!」
メイがシルクにそう伝えると、連れてきた楽器隊にも練習を開始する旨を説明している。

「なんだか皆の動きが早すぎて上手くついていけないな。」
ルカはシルクに伝えた。
「仕事の依頼だから早く動かないといけないんだ。でも大丈夫だよ。ルカはさっき妖怪の世界に来たばかりで分からなくて当然なんだ。」
シルクはルカを励ますように言った。
「そうだね。でも、自分が何も出来てなくてもどかしいんだ。」
ルカが正直な気持ちを伝えると、シルクが優しく手を繋いでくれた。
「ルカ、ちょっと移動してみようか。」
「練習があるんじゃないの?」
シルクが気を遣ってくれて嬉しかったが、お祭りの準備を頑張っているのに、水を差す様なことはしたくなかった。
「シルク、私は大丈夫だから練習を手伝いたい!迷惑をかけないようにするから。」
ルカは皆の役に立つことをしたいと考えていた。
「手伝ってくれるんだね、ルカ。ありがとう。じゃあ早速だけど、僕と楽器の準備をしてもらえる?」
「分かった。ここに置いてある楽器を設営すればいい?」
「うん!お願い!」
さっき居た場所から少し離れたところに箱があり、その箱の中に鉦や篠笛が入っていた。その箱たちを練習する広場の隅に運んだ。

楽器隊のメンバーたちは、メイが招集して集まっていた。太鼓が2人、篠笛が1人、鉦が1人だった。今はメイから説明を受けて、2曲を演奏する為に楽譜を読み込んでいる。
「分からない点はある?今のうちに質問してね!」
メイはテキパキと曲の演奏練習に向けて動いていた。ルカは小学生の時に行なった演奏会のことを思い出した。ルカは楽器経験がなかったのでそこまで積極的に参加出来ていなかったことが悔しかったのだった。
「メイさん、楽器はここに置けば良いですか?」
ルカはメイに話しかけた。
「ありがとう!ここに置いてくれる?助かった!」
「はい。演奏練習、頑張ってくださいね!」
ルカは笑顔で皆にそう伝えた。
「ルカちゃん、演奏練習を見学していかない?」
メイはルカを演奏練習へと誘った。
「はい!見学していきます!」
「お祭りでは盆踊りって必ずあるよね。踊る為には楽器隊が必要なんだよね。」
「そうですね。私もそう思います。練習ってどんな風にやるんですか?」
「盆踊りで演奏する曲の楽譜を読んでから楽器ごとに演奏練習をするの。その後に合わせて演奏をするんだよ。他の楽器と練習方法は変わらないと思う。でも、今回の練習は練習時間が少ないってことね。」
「メンバーがやっと揃ったんですもんね。」
「そうだね。私やシルクが練習を手伝って、上手くいくように指導していくの。」
「メイさんやシルクは色んな事をやるんですね。大変そう。」
「何でも屋だからね。役に立たないとね。」
ルカは自分が疎外感を感じて拗ねている自分が恥ずかしくなった。メイやシルクはみんなのために動いているだけなのに、ルカは自分のことしか考えられていなかったから。
「ルカちゃんもきっとできるようになるよ。今だって真面目に取り組んでるしね。」
ルカはメイの優しい所が素敵だと思った。
「メイさんみたいになりたいです。頑張ります。」
「よし!それじゃあ、リズム練習のために手拍子をしてくれる?和太鼓の2人、これからリズム練習をやるから来て!」
メイはルカと一緒にリズム練習を始めた。
シルクはその様子を微笑みながら見守っている。


※こちらはnote、アルファポリス、小説家になろうで公開しています。
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