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5. 告白
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翌日私はロマンがいるであろう時刻を狙って家に戻った。両親は仕事でいない。玄関には、ロマンの履き潰された白いスニーカーがあった。
玄関を開ける音で気付いたのか、ロマンが二階の自室からバタバタとやってくる足音が聞こえた。リビングに立つ私を見たロマンは、私に目を止めるなり泣き出しそうな表情を浮かべた。
「エイヴェリー……」
ロマンは消え入りそうな声で私の名前を呼び、駆け寄るなりそっとその二本の腕で私の身体を包むように抱きしめた。
「心配したよ、急にいなくなるんだから」
「……あの時、見てたの」
ロマンの目が私を見つめる。その深みのあるセピア色の目には、涙が浮かんでいる。
「劇の後、あなたが誰かとキスをするのを廊下で見た。私はあなたのためにキャサリンを演じた。だけど、あなたが見てたのは私じゃなかった」
「エイヴェリー、あなたの出ている場面は全部観た。本当に素晴らしかったよ。あなたは私の自慢の妹だ。キスをしていた相手には、復縁を迫られて……」
彼女が嘘をついているのは、その落ち着きのない目の動きから分かった。そもそもあの時ロマンはされるがままではなく、相手の女生徒を強く抱きしめていたではないか。
「もう嘘をつかなくていいわ」
ため息の後で、熱を帯びた言葉が口をついて出る。
「ロマン……私はあなたを愛してる。あなたに会った時からずっと。この先あなたほど愛せる人がいるなんて思えないわ」
姉の目をもう一度見つめる。そのセピア色の目は悲しげに瞬いている。
「ごめん、エイヴェリー。あなたは私の大切な妹だよ、あなたと同じように愛することはできないけれど……」
「ロマン、本当のことを言って!!」
叫んだ私を、ロマンの悲しげな目が見つめる。何かを言うことを必死に堪えている。言葉を噛みつぶしている。そんな顔で、彼女は私を見ている。
「それがあなたの気持ちなの?! あなたは一度も私に本当のことを言ってくれない! 私はあなたに愛を伝えてきたつもりよ! 全て分かってるくせに、どうして知らないふりをしようとするの?! 自分だけ何も言わないのは狡いわ!!」
「エイヴェリー……。お願いだから、もうこれ以上私を苦しめないで。私はあなたを妹として愛してる。それで充分じゃないの?」
「充分じゃない!!」
叫ぶ私。溢れる涙。もう止めることなど不可能だった。
「充分なわけないじゃない。何もかも足りないわ。だから私はこうして家を出ていくの。あなたに私を見てもらいたくて、ずっと……」
ロマンの目から涙が溢れる。彼女は何かを言おうとしている。言葉にならないのか、それとも言うことを躊躇っているのか。
「ごめん……エイヴェリー」
掠れた声が、彼女の唇から漏れる。
「あなたの気持ちには、応えられない」
玄関を開ける音で気付いたのか、ロマンが二階の自室からバタバタとやってくる足音が聞こえた。リビングに立つ私を見たロマンは、私に目を止めるなり泣き出しそうな表情を浮かべた。
「エイヴェリー……」
ロマンは消え入りそうな声で私の名前を呼び、駆け寄るなりそっとその二本の腕で私の身体を包むように抱きしめた。
「心配したよ、急にいなくなるんだから」
「……あの時、見てたの」
ロマンの目が私を見つめる。その深みのあるセピア色の目には、涙が浮かんでいる。
「劇の後、あなたが誰かとキスをするのを廊下で見た。私はあなたのためにキャサリンを演じた。だけど、あなたが見てたのは私じゃなかった」
「エイヴェリー、あなたの出ている場面は全部観た。本当に素晴らしかったよ。あなたは私の自慢の妹だ。キスをしていた相手には、復縁を迫られて……」
彼女が嘘をついているのは、その落ち着きのない目の動きから分かった。そもそもあの時ロマンはされるがままではなく、相手の女生徒を強く抱きしめていたではないか。
「もう嘘をつかなくていいわ」
ため息の後で、熱を帯びた言葉が口をついて出る。
「ロマン……私はあなたを愛してる。あなたに会った時からずっと。この先あなたほど愛せる人がいるなんて思えないわ」
姉の目をもう一度見つめる。そのセピア色の目は悲しげに瞬いている。
「ごめん、エイヴェリー。あなたは私の大切な妹だよ、あなたと同じように愛することはできないけれど……」
「ロマン、本当のことを言って!!」
叫んだ私を、ロマンの悲しげな目が見つめる。何かを言うことを必死に堪えている。言葉を噛みつぶしている。そんな顔で、彼女は私を見ている。
「それがあなたの気持ちなの?! あなたは一度も私に本当のことを言ってくれない! 私はあなたに愛を伝えてきたつもりよ! 全て分かってるくせに、どうして知らないふりをしようとするの?! 自分だけ何も言わないのは狡いわ!!」
「エイヴェリー……。お願いだから、もうこれ以上私を苦しめないで。私はあなたを妹として愛してる。それで充分じゃないの?」
「充分じゃない!!」
叫ぶ私。溢れる涙。もう止めることなど不可能だった。
「充分なわけないじゃない。何もかも足りないわ。だから私はこうして家を出ていくの。あなたに私を見てもらいたくて、ずっと……」
ロマンの目から涙が溢れる。彼女は何かを言おうとしている。言葉にならないのか、それとも言うことを躊躇っているのか。
「ごめん……エイヴェリー」
掠れた声が、彼女の唇から漏れる。
「あなたの気持ちには、応えられない」
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