日本昔話村

たらこ飴

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10. 村の長老

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 ある朝幸が買い物に行くというので、権田と僕のどちらかが用心棒としてついて行くことにした。じゃんけんで決めることにしたが運悪く負けてしまい、幸と権田が二人で楽しそうに話しながら家を出るのを見送る羽目になった。権田、覚えてろよ。いつかお前の家にあるグラノーラバーの在庫を一つ残らず食べ尽くしてやるからな。

 心の中で権田を呪いながら薪割りをしていたら、松が長老宅に用事があって行くから一緒にこないかと訊かれた。こうして恨み言を唱えていても仕方がないし、一人で仕事をしていても今頃権田と幸がどうしているだろうなどと考えどうにかなってしまいそうだったので、僕も一緒に行くことにした。

 その長老の家までは歩いて20分以上かかった。長老は宗兵衛という白髪頭の70歳くらいの老人で、僕の顔を見るなり「あの噂の」とにこりと笑った。どうやら僕たちの噂は村中に広まっているらしい。

 松と宗兵衛が家の中で喋っている間、僕は宗兵衛に許可をとり外の蔵の中にある書庫を見学させてもらうことにした。本好きの僕は少し緊張しつつも心を弾ませながら借りた鍵を使って重い扉を開け、暗い書庫の中に入った。あまりに暗いのでポケットから小型のサーチライトを取り出し、辺りを照らしながら歩く。中にあるのは本棚だけでなく、蛇の柄の怪しい壺や札の貼られた謎の小さな木箱、青い目の人形、ずっと同じメロディを繰り返して鳴り続けるオルゴールなども置いてあった。普通の人間なら不気味に感じるところだが、昔から摩訶不思議なものに惹かれる性の僕の気持ちは高揚していた。「国建村史」と背に書かれた古い本が書棚に収まっているのが目に入った。本を手に取りページを捲ると埃が落ち咽せた。

 墨字で書かれていて読みにくいが、正徳三年に大国主大神を祀ったという意味の記述があった。やはりと合点が行った。お参りをするとタイムリープをするという噂のある関西の神社に祀られている神様と同じだ。ついでにその神様についても知りたくなり、古事記を探していたところに惣兵衛が現れた。

「わしの父が蒐集家でな、本だけでなく珍しいものや曰く付きの物を集めるのが好きじゃった」

 そう言って宗兵衛は札の貼られた木箱を手にとった。

「この箱を開けると、開けた人間だけでなく家までも末代まで呪われるという。実際父の前の持ち主は面白半分で箱を開けたためにおかしくなってしまい、記憶が十秒しか持たない障害になったとか。家も火事で一家全員亡くなったそうじゃ」

「怖いですね……」

 ぞっと鳥肌が立つ。開けてみたい気もするが、これ以上不幸になったり死ぬのはごめんだ。

「何か探してる本はあるのかね?」

 宗兵衛に訊かれ、僕は迷った挙句ここに来た経緯を話し、あの祠のことについて調べているのだと説明した。宗兵衛は茶化す様子もなく真剣に話を聞いて、一言「かなり稀有な状況じゃな」と答えた。

「時々何かの拍子に時空を超えてしまう者がいるという話は聞いたことがある。あの祠は昔村が天災にあえいでいたときに、災難を避け建てられたと聞いた。戻り方についてはワシもよく分からんが……」

 宗兵衛は奥の書棚にある分厚い本を一冊抜き出して持ってきて、「古事記」と書いてある分厚い本の大黒天のページを開いて僕に見せた。
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