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チラシ作り
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善二さんが起きたとき、手書きしたというチラシを見せてもらった。猫たちの似顔絵も紹介文も全て習字の筆で描いてあり、ダイナミックな字だった。
『よく眠りよく食う、血の気が濃く活力に溢れる元気者也』『男兄弟に負けず、じゃじゃ馬で負けん気の強い雌猫故退屈せず』『譲渡希望の者、鬼瓦まで連絡賜りたく候』など文言も堅苦しく江戸のお触れ書きを想起させる。猫の似顔絵の隣に三毛、雉虎などと柄の説明は入っているが、漢字が多過ぎてモノクロなので非常に分かりにくい。筆で書かれたチラシはある意味斬新でインパクトはあるが、もっと明瞭で簡潔に、見た人に伝わりやすい内容に変えられないだろうか。写真も入っていたほうが1匹1匹の特徴が分かりやすいし、紙もピンクや水色など色を入れたほうが柔らかい印象になりそうだ。
逃げ回る猫たちに苦戦しながら全員分の写真を撮り、インターネットで『猫 里親募集 チラシ』と検索するとチラシ作成アプリが何個かヒットした。早速オレンジのテンプレートをダウンロードしてみた。
道子さんに教えてもらった酒井さんのメールアドレスに連絡をとり、アドバイスをもらいながらチラシ作成をした。さっき撮影したそれぞれの仔猫の一番可愛く撮れた写真を添付したあと、その横に紹介文を入力した。酒井さん曰くポイントは、写真を入れ端的かつ明瞭にその猫の特徴と性格を記載することだという。
できた文面は以下のとおり。
ずっとのお家を募集します
①つきみ(♀) シマミケ 小さいけれどおてんばさん
②そば(♂) 遊ぶの大好き懐っこ君
③まる(♂) クラシックタビー×白 やんちゃな甘え上手
④アメ(♂) 総柄クラシックタビー 金色の目のイケメン猫
※皆生後3ヶ月くらいの子たちです。
最後に私の携帯の番号を記載して、酒井さんにできたチラシの画像を送りOKをもらったあと、歩いて10分のところにあるコンビニで20枚コピーした。できたチラシを見た善二さんと道子さんは満足げで、可愛いからチラシをくれと言われ一枚ずつあげた。
あとから、避妊去勢手術を予定していることを書き足さないといけないことに気づき、仔猫部屋の炬燵を借りて作業をした。マジックで一枚一枚丁寧に書いていたが、仔猫たちが肩や膝によじ登ってきて作業にならない。ピーヨン族は私をトーテムポールか何かと勘違いしているらしい。肩と頭に容赦なく爪を食い込ませ、私が痛みに叫ぶと驚いて逃げ、すぐに果敢に木登りならぬ人間登りに再チャレンジする。こんな環境でお経をあげている猫浄寺のお坊さんを心からリスペクトした。
3時間かけて書類を書き、そろそろ完成、となったところで、それまでソファで昼寝をしていたサンコがチラシの上に乗り、私の顔を緑の丸い目でじっと見つめてきた。
「すみませーん、降りてもらえますか~」
一刻も早く完成させたい私はサンコをむんずと抱いて下に降ろすが、再びひょいっと紙の上に乗ってくる。何がなんでも私に作業をやめさせ、自分に構わせようという強い意志を感じる。これもネコハラの一種か。
もしかしたらサンコは育児で疲れ誰かに甘えたい気分なのかもしれない。人間でも疲れると寄りかかる存在が欲しくなったりするし、甘える存在がない寂しさを私はよく理解していた。だからサンコを思い切り撫でて甘やかしてやった。
満足したサンコが椅子で寝始めたので仕上げに取り掛かかった。が、サンコが載ったときの肉球マークがうっすらと用紙の端についているのを見つけ白目をむいた。消しゴムではとても消せないし、可愛いのでそのままにした。
『よく眠りよく食う、血の気が濃く活力に溢れる元気者也』『男兄弟に負けず、じゃじゃ馬で負けん気の強い雌猫故退屈せず』『譲渡希望の者、鬼瓦まで連絡賜りたく候』など文言も堅苦しく江戸のお触れ書きを想起させる。猫の似顔絵の隣に三毛、雉虎などと柄の説明は入っているが、漢字が多過ぎてモノクロなので非常に分かりにくい。筆で書かれたチラシはある意味斬新でインパクトはあるが、もっと明瞭で簡潔に、見た人に伝わりやすい内容に変えられないだろうか。写真も入っていたほうが1匹1匹の特徴が分かりやすいし、紙もピンクや水色など色を入れたほうが柔らかい印象になりそうだ。
逃げ回る猫たちに苦戦しながら全員分の写真を撮り、インターネットで『猫 里親募集 チラシ』と検索するとチラシ作成アプリが何個かヒットした。早速オレンジのテンプレートをダウンロードしてみた。
道子さんに教えてもらった酒井さんのメールアドレスに連絡をとり、アドバイスをもらいながらチラシ作成をした。さっき撮影したそれぞれの仔猫の一番可愛く撮れた写真を添付したあと、その横に紹介文を入力した。酒井さん曰くポイントは、写真を入れ端的かつ明瞭にその猫の特徴と性格を記載することだという。
できた文面は以下のとおり。
ずっとのお家を募集します
①つきみ(♀) シマミケ 小さいけれどおてんばさん
②そば(♂) 遊ぶの大好き懐っこ君
③まる(♂) クラシックタビー×白 やんちゃな甘え上手
④アメ(♂) 総柄クラシックタビー 金色の目のイケメン猫
※皆生後3ヶ月くらいの子たちです。
最後に私の携帯の番号を記載して、酒井さんにできたチラシの画像を送りOKをもらったあと、歩いて10分のところにあるコンビニで20枚コピーした。できたチラシを見た善二さんと道子さんは満足げで、可愛いからチラシをくれと言われ一枚ずつあげた。
あとから、避妊去勢手術を予定していることを書き足さないといけないことに気づき、仔猫部屋の炬燵を借りて作業をした。マジックで一枚一枚丁寧に書いていたが、仔猫たちが肩や膝によじ登ってきて作業にならない。ピーヨン族は私をトーテムポールか何かと勘違いしているらしい。肩と頭に容赦なく爪を食い込ませ、私が痛みに叫ぶと驚いて逃げ、すぐに果敢に木登りならぬ人間登りに再チャレンジする。こんな環境でお経をあげている猫浄寺のお坊さんを心からリスペクトした。
3時間かけて書類を書き、そろそろ完成、となったところで、それまでソファで昼寝をしていたサンコがチラシの上に乗り、私の顔を緑の丸い目でじっと見つめてきた。
「すみませーん、降りてもらえますか~」
一刻も早く完成させたい私はサンコをむんずと抱いて下に降ろすが、再びひょいっと紙の上に乗ってくる。何がなんでも私に作業をやめさせ、自分に構わせようという強い意志を感じる。これもネコハラの一種か。
もしかしたらサンコは育児で疲れ誰かに甘えたい気分なのかもしれない。人間でも疲れると寄りかかる存在が欲しくなったりするし、甘える存在がない寂しさを私はよく理解していた。だからサンコを思い切り撫でて甘やかしてやった。
満足したサンコが椅子で寝始めたので仕上げに取り掛かかった。が、サンコが載ったときの肉球マークがうっすらと用紙の端についているのを見つけ白目をむいた。消しゴムではとても消せないし、可愛いのでそのままにした。
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