2 / 2
高校生編〜光満ちたり〜
眼差しの彼方──②
しおりを挟む
執務を続けていると、ドアの向こうに人の気配がした。そして磨りガラスに映る影はノックもせずに入ってくる。
「あ、やっぱまだ残ってた」
「真面目なのもいいけど、疲れる前に帰んねーと」と呆れたような口調にも、嬉しさがにじみ出ていた。よかった、いた、とただそれだけのことを、かくれんぼの相手を見つけたみたいに喜んでいることが全身から伝わる。ふわり、彼が連れてくる風までも優しい。
「ノックぐらいして、ドアを開けっぱにしない、閉めて」
「手ぇふさがってんのに無茶言うなよ」
昴は手に持っていた棒アイスを口にくわえながら後ろ手でドアを閉めた。
「何の用?」
幼なじみのハル──昴は誰にでも明るく接する昴は男女の性差も感じさせず、昔は気の置けない間柄だった。けれどそれも昔の話。ここ数年、計算のなく他人の好意を全身で伝える昴に、真実は何故かぞんざいな口調になってしまう。
「北見に頼まれた。さっき食堂の帰りに北見と会ってさ。『仕事人間の真実はきっと集中したらなかなか帰らないだろうから持って帰ってあげて』って」
「百合が? ってか持って帰ってって何よ」
昴に背を向けポケットのスマホを調べると、百合からLINEが来ていた。
『さっき廊下で明澄くんと会ったよ!』
「真実がまだ残ってるって言っといたから、あとは彼氏と一緒に残りの作業やって一緒帰ったら?」
「だーかーらー、」
彼氏じゃねーっつーの! ……という声は心のうちでとどまった。危ない危ない。いくら昴の前ではぞんざいな口調になるとはいえ、叫んでしまえば校舎に響き渡る。スマホを握りつぶすくらいにとどめないと。
彼氏ではないが、似たような存在はいることにはいる。もうここまで行ったら既成事実できちゃってんじゃないのってぐらいの。
真面目な生徒会役員の私とクラスでいつもうるさいお調子者の昴。そんな少女マンガみたいな設定の幼なじみ二人を野次馬根性で周りはくっつけようとした。
──二人ってほんとお似合いだよねー。
──そうそう、いきぴったりで夫婦って感じ!
ハルと私はただの幼なじみだよー、とやんわり恋バナを遮っても、「またまた照れちゃってー、明澄くん人気者なんだからそんなんしてると旦那取られるよ? いいの?」などと囃し立ててくる。
てゆーか周りがあたしらをくっつけようとすんのも、八割くらいハルのせいだから! 事あるごとに赤面して、ハルの態度があまりにもあからさますぎるから。
真実は羞恥心のまま勢いよく昴の方を振り返り指を指す。やつあたり。
「その手に持ってるものどーにかしてくれる?『アイスやカップジュースやこぼれやすいその他諸々』の校舎持ち込み、生徒会がわざわざポスター描いてまで禁止を呼びかけてんだけど」
「あ、まじ? 知らんかった」
しょーこいんめつしょーこいんめつ、と唱えながら真実の態度を気に留めず手に持ったアイスを真実にくわえさせた。
「はい、これで共犯ー」
さっきと変わらない笑顔を向ける。惜しみのない好意。
こいつ、気付いてないのか。
今昴が行なった行為は世間一般では間接キスと呼ばれるものだ。
……幼なじみの気安さでこーゆーことするから周りに勘違いされるんだよ。
「いみわかんない……」
なんだか居心地が悪くなって、そわそわしていると横髪がはらりとアイスに垂れた。ふう、と息を吐きながら耳にかける。
身体の熱を逃がすように。
「あ、やっぱまだ残ってた」
「真面目なのもいいけど、疲れる前に帰んねーと」と呆れたような口調にも、嬉しさがにじみ出ていた。よかった、いた、とただそれだけのことを、かくれんぼの相手を見つけたみたいに喜んでいることが全身から伝わる。ふわり、彼が連れてくる風までも優しい。
「ノックぐらいして、ドアを開けっぱにしない、閉めて」
「手ぇふさがってんのに無茶言うなよ」
昴は手に持っていた棒アイスを口にくわえながら後ろ手でドアを閉めた。
「何の用?」
幼なじみのハル──昴は誰にでも明るく接する昴は男女の性差も感じさせず、昔は気の置けない間柄だった。けれどそれも昔の話。ここ数年、計算のなく他人の好意を全身で伝える昴に、真実は何故かぞんざいな口調になってしまう。
「北見に頼まれた。さっき食堂の帰りに北見と会ってさ。『仕事人間の真実はきっと集中したらなかなか帰らないだろうから持って帰ってあげて』って」
「百合が? ってか持って帰ってって何よ」
昴に背を向けポケットのスマホを調べると、百合からLINEが来ていた。
『さっき廊下で明澄くんと会ったよ!』
「真実がまだ残ってるって言っといたから、あとは彼氏と一緒に残りの作業やって一緒帰ったら?」
「だーかーらー、」
彼氏じゃねーっつーの! ……という声は心のうちでとどまった。危ない危ない。いくら昴の前ではぞんざいな口調になるとはいえ、叫んでしまえば校舎に響き渡る。スマホを握りつぶすくらいにとどめないと。
彼氏ではないが、似たような存在はいることにはいる。もうここまで行ったら既成事実できちゃってんじゃないのってぐらいの。
真面目な生徒会役員の私とクラスでいつもうるさいお調子者の昴。そんな少女マンガみたいな設定の幼なじみ二人を野次馬根性で周りはくっつけようとした。
──二人ってほんとお似合いだよねー。
──そうそう、いきぴったりで夫婦って感じ!
ハルと私はただの幼なじみだよー、とやんわり恋バナを遮っても、「またまた照れちゃってー、明澄くん人気者なんだからそんなんしてると旦那取られるよ? いいの?」などと囃し立ててくる。
てゆーか周りがあたしらをくっつけようとすんのも、八割くらいハルのせいだから! 事あるごとに赤面して、ハルの態度があまりにもあからさますぎるから。
真実は羞恥心のまま勢いよく昴の方を振り返り指を指す。やつあたり。
「その手に持ってるものどーにかしてくれる?『アイスやカップジュースやこぼれやすいその他諸々』の校舎持ち込み、生徒会がわざわざポスター描いてまで禁止を呼びかけてんだけど」
「あ、まじ? 知らんかった」
しょーこいんめつしょーこいんめつ、と唱えながら真実の態度を気に留めず手に持ったアイスを真実にくわえさせた。
「はい、これで共犯ー」
さっきと変わらない笑顔を向ける。惜しみのない好意。
こいつ、気付いてないのか。
今昴が行なった行為は世間一般では間接キスと呼ばれるものだ。
……幼なじみの気安さでこーゆーことするから周りに勘違いされるんだよ。
「いみわかんない……」
なんだか居心地が悪くなって、そわそわしていると横髪がはらりとアイスに垂れた。ふう、と息を吐きながら耳にかける。
身体の熱を逃がすように。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
森本イチカ
恋愛
妹じゃなくて、女として見て欲しい。
14歳年下の凛子は幼馴染の優にずっと片想いしていた。
やっと社会人になり、社長である優と少しでも近づけたと思っていた矢先、優がお見合いをしている事を知る凛子。
女としてみて欲しくて迫るが拒まれてーー
★短編ですが長編に変更可能です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる