世界は妖しく嗤う【リメイク前】

2章 学校編

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　僕は先生が打鍵した箇所をメモに残した。
　メモを頼りにパスワード解除に時間を割こうとしたその矢先。
　周りがガヤガヤし始めた。
　自習室にかけられた時計を見ると放課後16時をとっくに回っていたのに、二人の男子の声が聞こえてくる。
　
「でさー、やっぱり仮面ソルジャーのあのセリフはかっこいいよなぁ」
「確かになぁ。“戦いに私情を巻き込むな！ お前が逡巡(しゅんじゅん)したら守れるもんまで守れねーだろ！”ってな」

　まずい、まずい、近づいてくる。
　急げよー、急げよー。
　パスワード解除はまだできてないんだ。
　
　焦りで血の気が引くのを感じた。
　すぐにノートPCを閉じなきゃ、と思うと、焦ってWindowsを閉じることができない。
　
　やばい、やばい。
　焦りが最高潮に達し、ノートPCから目線をあげたその時、がらがらっという扉を開ける音が聞こえてきた。
　僕の視線を感じてか、こちらを見下ろすように視線を向けてくる。
　
「あ……！」
　
　二人の男子生徒と僕はほぼ同時に声をあげた。
　彼らも僕も、知り合いだったのだ。
　
「こんなとこで何やってるんだよ！」
「こっちが言いたいわ！」
「そうだぞ！ こんな放課後になってまで、こんなとこで油売る必要ないだろ？」

　三人ともが一斉に話し出すから何を言っているか収拾がつかない。
　
　とりあえず、みんな、ゆっくり話そうぜ？って言う人はいないのか……。
　仕切り役が欲しいとこなんだが。
　仕切るのめんどくさいからなぁ。
　でも、見られてたかもだから、うまく話をそらさないとなぁ。　
　
「なぁ、ここで3人わーわーわめくように話したって仕方ないからさ！ 先に話すんだが、2人は何しにここに来たん？ 身軽な格好を見るからに自習しに来たって感じはしないし。それに時間が時間だし」
　
　僕の問いかけに2人はどっちから言うべきか、よく考えもしないで、被らせて返事をした。
　
「あ、あぁ、それなんだけど」
　
「今俺が先に言おうとしただろ！」っとバチバチに言葉に火花をちらつかせて、笠井洋明(かさい_ひろあき)の話を遮った橋口辰徳(はしぐち_たつのり)。
　
　笠井洋明(かさい_ひろあき)とは同じ3年2組のクラスメートで、橋口辰徳(はしぐち_たつのり)とは２年の時に知り合った元クラスメートだ。
　笠井に関しては、昔からいじめられっ子で、今のクラスになる前からいじめられていた。
　僕と同じく日陰を好むような生徒だったからという理由から仲良くしている。
　その2人が自習室に何をしに来たのか？ それが肝心。
　知りたいことを遮られて「ああー、もう」っと心の中で地団駄を踏んだ。