秘密の洋館

前編 ここから全ては始まった

1話

 「こんにちは！」「こんにちは、守永先生。」と、いつも通り、家庭教師塾fight‐mensファイトメンズでは塾生達が続々と塾内へと入ってきて賑わいを見せる……はずだったが。

「な、何だこれは！」

 塾に来た守永の目の前には異様な光景が広がっていた。守永の職場の家庭教師塾fight‐mens前に貼り紙が幾つも貼られていたのだ。

「これは……！」

 貼り紙には、犯罪に巻き込まれた被害者面づらをした悪人というような文字と「守永成一」という自身の名前がでかでかと書かれていた。
 それも、画質が荒いが、写真とその下に何かしらのURLが添えられていた。


 守永は貼り紙を見て、不快感を露あらわにして、幾つかある貼り紙の中から一つ剥がして手に取って思案に暮れていた。
 手にした貼り紙をじっくり見た守永が不快感のあまり、吐き気をもよおして、おえっと涙を浮かべて顔を下に向けていると、塾の中から守永成一の姿を認めた塾長と同僚が駆け寄って守永の前に姿を現した。
 

「な、何ですか？！ これは一体──」
「これは酷い有り様だなぁ。」
「ど、どうしたら？ どうしますか？」
「落ち着いてください。守永さん。」
「とりあえず、これは警察に通報しますかね？」
「そうですね。それが良い。」
「ところで、この写真に添えられていたURLは何ですかね？」
「今、見ていたところです！ 一緒に見てみるかね？」
「気が乗らないですが……ハイ。」

 塾長と同僚の言葉に促されて、塾内に入り視線を塾に設置されたPCの画面まで動かした。
 守永が来る少し前に塾長達は謎の貼り紙を手に取り、URLを踏んでいたらしい。PCの検索履歴に貼り紙に添付されたそれが残されていた。

「既に、私たちはこのURLを開いて見ましたが……あまり気持ちの良いものではありませんでした。だから、覚悟してください。守永先生。」
「……ハイ……」