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第2章 第2の事件
7話 【守永】と青戸の証言の交錯1
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青戸祐哉の通報により、通報を受けて現場にやって来た永瀬警部補。第一殺人事件の聞き込み捜査で、この運動公園の近くに偶然来ていた所を、青戸祐哉の通報があった事を無線で聞き付けてやって来たのだ。
「通報ありがとうございます! 通報した人はどなたでしょうか?」
「あ、はい……そのー……」
『あ、俺です!』
永瀬警部補の質問に反応した青戸と永瀬警部補の顔や声に反応した守永。二人は、ほぼ同時に永瀬警部補に向かって返答した。永瀬警部補は目を爛々と輝かせて守永の姿を視界に入れた。
「おや、見慣れた方がいらっしゃいますねぇ。ちなみに、どちらが……通報を?」
「はい、俺です」
「えぇ、名前は何と?」
「青戸。青戸祐哉です」
第一殺人事件である久屋大通駅でのトイレ殺人事件に加えて、第二殺人事件の通報に居合わせた守永成一に、永瀬警部補は特別な感情を抱いて、第二殺人事件の通報者であり第一発見者でもある青戸をそっちのけでにんまりと笑みを浮かべて話し始めた。
「貴方と再びこんな所で再会する事になるとは! どういう事ですかねぇ。ねぇ? 守永成一さん」
「そっ、そんな風に、変に思わないでくださいよ! 警部補さん」
「こりゃ失敬失敬」
「そ、そうですよ……、本当に。こっちは一度ならずや二度までも事件に巻き込まれたんですよ?」
「冗談、冗談。冗談ですよ! 軽いブラックジョークですから。安心してください」
「それが冗談に聞こえないから、言ってるんですよ! 警部補さん」
初めは恭しい程やけに、にこやかに話していた永瀬警部補であったが、通報時の詳細な証言を聞き出そうとがらりと態度を改めて真剣な面持ちをして、場の緊張の糸が張りつめた。
「では、グダグダ話していても埒が開かないので、そろそろ本題に入りましょう」
「そうですね……気が乗らないですが……」
「そのお気持ち、重々承知です。ですが、一刻も早く事件を解決する為と思ってご協力お願いします」
「了解です。警部補さん……」
沈黙が流れる事、凡そ二、三分。守永はゆっくりと口を開いて語り出した。
「確かに俺は──。第一の殺人事件で第一発見者となり、事情聴取を受けて……任意ではありながらも疲労が溜まって。気分転換になれば、と友人数名誘って此処に来た訳なんですよ……」
「ほうほう、続けてください」
「分かりました。そしたら、まぁ軽い運動の休憩にと、サッカーして戯れている友人達を尻目に、トイレに向かった訳ですよ。お茶飲んだついでに『トイレ行っとこー』ってな具合で。そしたら、聞こえた訳ですよ! 女性の悲鳴が」
「ほうほう、悲鳴ですか。被害者の悲鳴ですな?」
「えぇ、恐らく」
「それで、守永さん、貴方が最初に現場の遺体を目撃したんで?」
「いいえ。多目的トイレの扉の取っ手に、偶然血のようなモノが付着しているのが目に入った為に、自分で開ける事を躊躇っていたんです」
「何故、躊躇っていたんですか? 開けたら良かったんでは? 『結果としてどうだったか?』は、別として」
「随分呑気な事仰有いますね。警部補さん。良く考えてみてください──」
「ほうほう、それまたどのような事を?」
「簡単な話しですよ。汚れた扉の取っ手に触りたがりますか? おまけに血のようなモノですよ? 明らかに嫌じゃないですか」
「まぁ、言われてみれば確かに。でも、本当にそれだけでしたか?」
「それだけ、とは?」
「えぇ、他に誰か、貴方が悲鳴を聞いた時に居合わせて居ませんでしたか?」
「悲鳴を聞いて駆け付けたのは此処に居る俺と青戸ら友人数名だけですよ」
「ほうほう、更にお聞きします! トイレに向かい到着するまでの間、誰ともすれ違いませんでしたか?」
「すれ違う……?」
「そうです。誰かに道中すれ違っていた事はありませんでしたか?」
「あ、白と黒を基調にした服装の女性だったかな? すれ違いましたよ、そういえば。悲鳴を聞いて声のする方に駆け付けようと向かっていた道中にすれ違ったもんですから、少々気にはしていました」
「ほうほう、気にはなっていた、と」
「えぇ。何せ、悲鳴のあった後にトイレの方から姿を現していたんで。その方。それも悲鳴のあった方から」
「なるほど……」
「話しは以上で宜しいでしょうか?」
「とりあえず、守永さん。貴方からは以上ですかねぇ。ありがとうございました」
「いえいえ、巧く状況を話せたかどうか危ういですけど。慣れないものですね! 二度目の事情聴取なのに」
「逆に慣れる方がおかしいですよ。大丈夫ですよ! ちゃんと話を聞けたので」
「通報ありがとうございます! 通報した人はどなたでしょうか?」
「あ、はい……そのー……」
『あ、俺です!』
永瀬警部補の質問に反応した青戸と永瀬警部補の顔や声に反応した守永。二人は、ほぼ同時に永瀬警部補に向かって返答した。永瀬警部補は目を爛々と輝かせて守永の姿を視界に入れた。
「おや、見慣れた方がいらっしゃいますねぇ。ちなみに、どちらが……通報を?」
「はい、俺です」
「えぇ、名前は何と?」
「青戸。青戸祐哉です」
第一殺人事件である久屋大通駅でのトイレ殺人事件に加えて、第二殺人事件の通報に居合わせた守永成一に、永瀬警部補は特別な感情を抱いて、第二殺人事件の通報者であり第一発見者でもある青戸をそっちのけでにんまりと笑みを浮かべて話し始めた。
「貴方と再びこんな所で再会する事になるとは! どういう事ですかねぇ。ねぇ? 守永成一さん」
「そっ、そんな風に、変に思わないでくださいよ! 警部補さん」
「こりゃ失敬失敬」
「そ、そうですよ……、本当に。こっちは一度ならずや二度までも事件に巻き込まれたんですよ?」
「冗談、冗談。冗談ですよ! 軽いブラックジョークですから。安心してください」
「それが冗談に聞こえないから、言ってるんですよ! 警部補さん」
初めは恭しい程やけに、にこやかに話していた永瀬警部補であったが、通報時の詳細な証言を聞き出そうとがらりと態度を改めて真剣な面持ちをして、場の緊張の糸が張りつめた。
「では、グダグダ話していても埒が開かないので、そろそろ本題に入りましょう」
「そうですね……気が乗らないですが……」
「そのお気持ち、重々承知です。ですが、一刻も早く事件を解決する為と思ってご協力お願いします」
「了解です。警部補さん……」
沈黙が流れる事、凡そ二、三分。守永はゆっくりと口を開いて語り出した。
「確かに俺は──。第一の殺人事件で第一発見者となり、事情聴取を受けて……任意ではありながらも疲労が溜まって。気分転換になれば、と友人数名誘って此処に来た訳なんですよ……」
「ほうほう、続けてください」
「分かりました。そしたら、まぁ軽い運動の休憩にと、サッカーして戯れている友人達を尻目に、トイレに向かった訳ですよ。お茶飲んだついでに『トイレ行っとこー』ってな具合で。そしたら、聞こえた訳ですよ! 女性の悲鳴が」
「ほうほう、悲鳴ですか。被害者の悲鳴ですな?」
「えぇ、恐らく」
「それで、守永さん、貴方が最初に現場の遺体を目撃したんで?」
「いいえ。多目的トイレの扉の取っ手に、偶然血のようなモノが付着しているのが目に入った為に、自分で開ける事を躊躇っていたんです」
「何故、躊躇っていたんですか? 開けたら良かったんでは? 『結果としてどうだったか?』は、別として」
「随分呑気な事仰有いますね。警部補さん。良く考えてみてください──」
「ほうほう、それまたどのような事を?」
「簡単な話しですよ。汚れた扉の取っ手に触りたがりますか? おまけに血のようなモノですよ? 明らかに嫌じゃないですか」
「まぁ、言われてみれば確かに。でも、本当にそれだけでしたか?」
「それだけ、とは?」
「えぇ、他に誰か、貴方が悲鳴を聞いた時に居合わせて居ませんでしたか?」
「悲鳴を聞いて駆け付けたのは此処に居る俺と青戸ら友人数名だけですよ」
「ほうほう、更にお聞きします! トイレに向かい到着するまでの間、誰ともすれ違いませんでしたか?」
「すれ違う……?」
「そうです。誰かに道中すれ違っていた事はありませんでしたか?」
「あ、白と黒を基調にした服装の女性だったかな? すれ違いましたよ、そういえば。悲鳴を聞いて声のする方に駆け付けようと向かっていた道中にすれ違ったもんですから、少々気にはしていました」
「ほうほう、気にはなっていた、と」
「えぇ。何せ、悲鳴のあった後にトイレの方から姿を現していたんで。その方。それも悲鳴のあった方から」
「なるほど……」
「話しは以上で宜しいでしょうか?」
「とりあえず、守永さん。貴方からは以上ですかねぇ。ありがとうございました」
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