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第3章 過去編
10話 青戸らの過去編1 《4/16修正》
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これは第一・第二殺人事件が起きる頃より前のお話。
「……な、なんで、なんで、急に融資が打ち切りになるんですか! 答えてください! 紫垣さん」
「う、うるさいぞ! 決まった事だ。一々文句をつけないでくれ」
「そ、そんな……」
小規模経営の豊科工業では、今流行りのドローンの部品を組み立てキット用に改良して製品化させるべく、岩越銀行の名古屋支店に融資継続による相談が持ち上がる。
岩越銀行まで相談に来た人物の名は豊科誠子──豊科工業では普段経理担当であり、小規模事業者としての事細かな出納等の数字をまとめて、銀行の融資を受けに豊科工業の代表者として岩越銀行名古屋支店に来て企業融資担当の紫垣順也に相談を持ちかける事になった。
豊科工業代表者として豊科誠子が岩越銀行名古屋支店に融資の相談として初めて持ちかけた新商品の開発及び大量生産化させる事業計画は二〇一六年七月中旬であった。
当時豊科工業は玩具の部品の製造メーカーとして主力製品のラジコンの歯車の部品等を製造していたが、ラジコン需要が減り大口の取引相手の大手TOMIYAがラジコン部門から撤退すると言う報せがニュースで報道され、程なくして書簡で取引取り止めの決定が通知された。豊科工業の取引の八割を占める取引先を失い、突如数十万個もの在庫を抱え収支の大部分を失うことになった豊科工業。
頭を抱えた豊科工業の社長の豊科忠嗣とその妻の豊科誠子は従業員十五人に経営難に差し掛かり、給料を支払えない状態である事を正直に伝えた。夫婦の目には、涙が溢れていた。又、その目には悩んで眠れない夜が続いた為にクマができており、夫婦の口から出る声からは生気が感じられず、余程苦心していたであろう事は従業員誰しもが感じ取っていた。夫婦を問い詰めて、「家財を全て売却してでも給料を早く支払え」「もっと早く対処できていれば……こうはならずに済んだんじゃないのか?」と場が紛糾する事も。その従業員の中に青戸祐也の姿もあり、青戸祐也が罵声を浴びせる従業員達を制止した。
「売れない玩具の部品ばかり作っていたって、取引先を失い在庫を抱える羽目になるのは当然じゃないか! だったら、自分達で売れる新商品作ろうじゃないか!」
「そうか、そうか、そうか。おおお! その手があったか」
青戸祐也が叫んだ一言で夫婦の目には輝きが宿った。しかし、「そんな芸当なんてできないだろ!」と言う悲観的な意見を口にする者が続出した。
「分かった。じゃあ、こうしよう。俺達、会社についていく覚悟のあるやつだけ残れ。去る者は決して咎めないし、必ず退職金と未払い分の給料は支払う。さあ!」
豊科社長の一声により十五人いた従業員は四散して各々家路に着いた。残すは、夫婦の二人と従業員の青戸祐也一人を合わせて三人になった。
「あぁー、薄情な奴らだなぁ。どいつもこいつも芯がない。会社の危機に力を合わせて踏ん張るのが俺達、豊科工業じゃないんか」
「まぁまぁ、青戸君がそう思ってくれるだけ有難いさ。さて、この先どうするかね?」
「銀行に融資を受けられないか相談しますかね?」
「融資?」
「そうです、融資」
「融資って貸してもらえるものなのか? 此方は、資金繰りで頭抱えているのに。まぁ、そこは近日中までにはなんとか調べておくよ」
「そうですね! それが良い。俺の方からも調べておきます!」
「……な、なんで、なんで、急に融資が打ち切りになるんですか! 答えてください! 紫垣さん」
「う、うるさいぞ! 決まった事だ。一々文句をつけないでくれ」
「そ、そんな……」
小規模経営の豊科工業では、今流行りのドローンの部品を組み立てキット用に改良して製品化させるべく、岩越銀行の名古屋支店に融資継続による相談が持ち上がる。
岩越銀行まで相談に来た人物の名は豊科誠子──豊科工業では普段経理担当であり、小規模事業者としての事細かな出納等の数字をまとめて、銀行の融資を受けに豊科工業の代表者として岩越銀行名古屋支店に来て企業融資担当の紫垣順也に相談を持ちかける事になった。
豊科工業代表者として豊科誠子が岩越銀行名古屋支店に融資の相談として初めて持ちかけた新商品の開発及び大量生産化させる事業計画は二〇一六年七月中旬であった。
当時豊科工業は玩具の部品の製造メーカーとして主力製品のラジコンの歯車の部品等を製造していたが、ラジコン需要が減り大口の取引相手の大手TOMIYAがラジコン部門から撤退すると言う報せがニュースで報道され、程なくして書簡で取引取り止めの決定が通知された。豊科工業の取引の八割を占める取引先を失い、突如数十万個もの在庫を抱え収支の大部分を失うことになった豊科工業。
頭を抱えた豊科工業の社長の豊科忠嗣とその妻の豊科誠子は従業員十五人に経営難に差し掛かり、給料を支払えない状態である事を正直に伝えた。夫婦の目には、涙が溢れていた。又、その目には悩んで眠れない夜が続いた為にクマができており、夫婦の口から出る声からは生気が感じられず、余程苦心していたであろう事は従業員誰しもが感じ取っていた。夫婦を問い詰めて、「家財を全て売却してでも給料を早く支払え」「もっと早く対処できていれば……こうはならずに済んだんじゃないのか?」と場が紛糾する事も。その従業員の中に青戸祐也の姿もあり、青戸祐也が罵声を浴びせる従業員達を制止した。
「売れない玩具の部品ばかり作っていたって、取引先を失い在庫を抱える羽目になるのは当然じゃないか! だったら、自分達で売れる新商品作ろうじゃないか!」
「そうか、そうか、そうか。おおお! その手があったか」
青戸祐也が叫んだ一言で夫婦の目には輝きが宿った。しかし、「そんな芸当なんてできないだろ!」と言う悲観的な意見を口にする者が続出した。
「分かった。じゃあ、こうしよう。俺達、会社についていく覚悟のあるやつだけ残れ。去る者は決して咎めないし、必ず退職金と未払い分の給料は支払う。さあ!」
豊科社長の一声により十五人いた従業員は四散して各々家路に着いた。残すは、夫婦の二人と従業員の青戸祐也一人を合わせて三人になった。
「あぁー、薄情な奴らだなぁ。どいつもこいつも芯がない。会社の危機に力を合わせて踏ん張るのが俺達、豊科工業じゃないんか」
「まぁまぁ、青戸君がそう思ってくれるだけ有難いさ。さて、この先どうするかね?」
「銀行に融資を受けられないか相談しますかね?」
「融資?」
「そうです、融資」
「融資って貸してもらえるものなのか? 此方は、資金繰りで頭抱えているのに。まぁ、そこは近日中までにはなんとか調べておくよ」
「そうですね! それが良い。俺の方からも調べておきます!」
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