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第3章 過去編
12話 青戸らの過去編3
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無事豊科工業は、岩越銀行から融資を受けられる事になり、新製品「ドローンの組み立てキット」の開発が工場内で順調に進む中、銀行員の紫垣順也と豊科工業と同業である伏見工業の社員が会話をしていた。
「豊科工業、まーだ潰れてないよ」
「みたいだねぇ、俺ら同業の伏見工業としては、此方に情報を横流ししてくれるとは有難いものですなぁ。ねぇ、紫・垣さん」
「そりゃ、この豊科工業の新製品の開発の融資の話が出てから、『金のなる木』だとしか見えなくてねぇ。企業融資担当として得られる情報を其方に横流しすれば、旨い旨い」
「優しい面構えにしては悪い顔してますなぁ」
「とりあえず……っと、入金しときました」
「ありがとう、祐川さん」
豊科工業の元社員で現在の伏見工業の社員の祐川勇司が銀行員の紫垣順也の裏口座に賄賂百二十万程を入金した。
※※※※※※
「すみませんが、本日を持ちまして急遽追加融資の方を打ち切らせて頂きます」
「ど、どういう事ですか? 打ち切りですって?」
「えぇ、打ち切らせて頂きます」
「そんな……この通りですから。お願いします! 融資継続お願いします!」
「そんな事言われても困ります」
豊科社長夫婦は、急遽融資継続の打ち切りを通告されて「何事か?」と思い銀行に駆けつけるも、銀行員の企業融資担当の紫垣の対応からは今までの「共に新製品開発に携わる」と言う熱意が微塵も感じられず、冷たくあしらわれたように感じただけだった。
「何で、何で何で、何でなのよ!」
「……確かに……なんでだ?」
「折角良いとこ迄新製品の開発が進んできたのに……あんだけ、経過は順調とお伝えしたのに。なのに……」
「あぁ」
豊科工業は、岩越銀行名古屋支店から融資として三千八百万円程受けていたが、新製品の開発に伴う技術開発を行う為の技術者でもある従業員の青戸や既に退職した従業員の未払いの給料等人件費の補填や、新プラスチック材の開発に伴う技術費に充てられて、殆ど底を尽きていた。銀行より出された三千八百万円もの融資は本来なら新製品開発に伴う新技術や新素材等の開発費及び開発に携わる技術者の給料に「限定」されるはずであった。
しかし豊科社長夫妻は、一度は従業員の青戸祐也の一言で励まされ新製品開発に着手したは良いものの、その時公言した例の発言を思い出し、新製品開発に着手するには人手不足である事を勘案して、豊科工業を去った従業員を呼び戻す為の口実になれば、と考え融資の幾らかを去った従業員の給料等の支払いに補填していた。
新製品の開発に伴う新技術等の開発に光が一時は射して追加融資さえあれば新製品の開発が現実化すると言う段階で、追加融資の打ち切りの通告を知った青戸が、「追加融資が無ければ開発は続けられない」と匙を投げて、豊科社長夫妻は豊科工業の新製品開発に係る融資三千八百万円をそのまま借金として背負い、地獄を見る生活に追いやられてしまった。
「豊科工業、まーだ潰れてないよ」
「みたいだねぇ、俺ら同業の伏見工業としては、此方に情報を横流ししてくれるとは有難いものですなぁ。ねぇ、紫・垣さん」
「そりゃ、この豊科工業の新製品の開発の融資の話が出てから、『金のなる木』だとしか見えなくてねぇ。企業融資担当として得られる情報を其方に横流しすれば、旨い旨い」
「優しい面構えにしては悪い顔してますなぁ」
「とりあえず……っと、入金しときました」
「ありがとう、祐川さん」
豊科工業の元社員で現在の伏見工業の社員の祐川勇司が銀行員の紫垣順也の裏口座に賄賂百二十万程を入金した。
※※※※※※
「すみませんが、本日を持ちまして急遽追加融資の方を打ち切らせて頂きます」
「ど、どういう事ですか? 打ち切りですって?」
「えぇ、打ち切らせて頂きます」
「そんな……この通りですから。お願いします! 融資継続お願いします!」
「そんな事言われても困ります」
豊科社長夫婦は、急遽融資継続の打ち切りを通告されて「何事か?」と思い銀行に駆けつけるも、銀行員の企業融資担当の紫垣の対応からは今までの「共に新製品開発に携わる」と言う熱意が微塵も感じられず、冷たくあしらわれたように感じただけだった。
「何で、何で何で、何でなのよ!」
「……確かに……なんでだ?」
「折角良いとこ迄新製品の開発が進んできたのに……あんだけ、経過は順調とお伝えしたのに。なのに……」
「あぁ」
豊科工業は、岩越銀行名古屋支店から融資として三千八百万円程受けていたが、新製品の開発に伴う技術開発を行う為の技術者でもある従業員の青戸や既に退職した従業員の未払いの給料等人件費の補填や、新プラスチック材の開発に伴う技術費に充てられて、殆ど底を尽きていた。銀行より出された三千八百万円もの融資は本来なら新製品開発に伴う新技術や新素材等の開発費及び開発に携わる技術者の給料に「限定」されるはずであった。
しかし豊科社長夫妻は、一度は従業員の青戸祐也の一言で励まされ新製品開発に着手したは良いものの、その時公言した例の発言を思い出し、新製品開発に着手するには人手不足である事を勘案して、豊科工業を去った従業員を呼び戻す為の口実になれば、と考え融資の幾らかを去った従業員の給料等の支払いに補填していた。
新製品の開発に伴う新技術等の開発に光が一時は射して追加融資さえあれば新製品の開発が現実化すると言う段階で、追加融資の打ち切りの通告を知った青戸が、「追加融資が無ければ開発は続けられない」と匙を投げて、豊科社長夫妻は豊科工業の新製品開発に係る融資三千八百万円をそのまま借金として背負い、地獄を見る生活に追いやられてしまった。
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