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第3章 過去編
13話 青戸らの過去編4 《3/22重大なミスの修正》
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銀行からの追加融資を打ち切られ、再び資金繰りと言う悩みで頭を抱えた豊科社長夫妻。
「ねぇ、もうどうしようも無いよ! 会社、畳んで廃業しよう……よ。ねぇ?」
「馬鹿言うんじゃない! 会社はまだ畳まん。廃業になんか……廃業になんか……してたまるか! 俺の造った会社だぞ!」
「そ、そうね……。でも……見てられないのよ。日に日に窶れていくあんたを見るのは……」
「あぁ、ありがどな。誠子……」
もう新事業継続を諦めて会社を畳むように説得する誠子に反意を表した社長の忠嗣。その言葉と目には豊科工業が順風で軌道に乗っていた嘗ての力強さと輝きを失っていた。
しかし、社長の忠嗣の目にはまだ輝きが僅かに残されていた。
「まだ、まだ、まだ諦めてなるものか! 豊科工業の理念の一つにあるように『雑草魂』を忘れたらあかん。それも社長ともあろう俺がな」
社長の忠嗣は妻の誠子の制止を振り切って会社を飛び出した。
「待って! 貴方。何処に行くつもりなのよ」
妻の誠子は、身一つで会社を飛び出し何処かへとエンジンをふかして走らせる社長の忠嗣の白いワゴン車を後ろから言葉を投げ掛けて見送る事になった。
※※※※※
忠嗣社長は車を走らせて岩越銀行名古屋支店へと向かった。
「すみません! すみません! 岩越銀行の融資担当の紫垣さんはお見えになりますか」
「はい、暫くお待ちください」
「解りました」
「御待たせして申し訳ありません。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「融資の事についてです」
「融資に関しては、以前お話させて頂きました通り、申し上げにくいのですが、打ち切らさせて頂きましたので……」
「いえ、そうではありません。密告があったのです。其方に俺らの会社の豊科工業の開発情報を横流ししている輩がいる、と。違いますかな?」
「な、何の事ですか?」
「動揺を隠せないようですな」
「そ、そんな事はしてません!」
「ならば、これはどう言う事か!」
忠嗣社長は少し前にとある匿名の手紙を受け取っていた。
「──豊科工業の新製品開発情報を横流ししている輩がいる」と、忠嗣社長は銀行員の紫垣に手紙を読み上げて、どうにか事実確認を行い、融資継続を迫ろうとした。
「解りました。そうですね……。話しは聞かせて貰いました。良いでしょう。ならば、明後日午後二時。久屋大通駅前にある喫茶『グーリア』でお話しましょう。此処ではあれなんで」
「ぐぬぬ……。本当は今すぐにでも真相を聞きたいのですがね」
「えぇ、申し訳ありません。きちんとゆっくりお話したいので」
「分かってますよ。こればっかりはしっかり話さねば……気が済まない」
忠嗣社長の問い詰めに、紫垣がしでかしたであろう事の重大さを押し隠すように努めてのんびり構える返事から悔しさを奥歯で噛み締めながら「気が済まない」と口にする忠嗣社長であった。
「ねぇ、もうどうしようも無いよ! 会社、畳んで廃業しよう……よ。ねぇ?」
「馬鹿言うんじゃない! 会社はまだ畳まん。廃業になんか……廃業になんか……してたまるか! 俺の造った会社だぞ!」
「そ、そうね……。でも……見てられないのよ。日に日に窶れていくあんたを見るのは……」
「あぁ、ありがどな。誠子……」
もう新事業継続を諦めて会社を畳むように説得する誠子に反意を表した社長の忠嗣。その言葉と目には豊科工業が順風で軌道に乗っていた嘗ての力強さと輝きを失っていた。
しかし、社長の忠嗣の目にはまだ輝きが僅かに残されていた。
「まだ、まだ、まだ諦めてなるものか! 豊科工業の理念の一つにあるように『雑草魂』を忘れたらあかん。それも社長ともあろう俺がな」
社長の忠嗣は妻の誠子の制止を振り切って会社を飛び出した。
「待って! 貴方。何処に行くつもりなのよ」
妻の誠子は、身一つで会社を飛び出し何処かへとエンジンをふかして走らせる社長の忠嗣の白いワゴン車を後ろから言葉を投げ掛けて見送る事になった。
※※※※※
忠嗣社長は車を走らせて岩越銀行名古屋支店へと向かった。
「すみません! すみません! 岩越銀行の融資担当の紫垣さんはお見えになりますか」
「はい、暫くお待ちください」
「解りました」
「御待たせして申し訳ありません。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「融資の事についてです」
「融資に関しては、以前お話させて頂きました通り、申し上げにくいのですが、打ち切らさせて頂きましたので……」
「いえ、そうではありません。密告があったのです。其方に俺らの会社の豊科工業の開発情報を横流ししている輩がいる、と。違いますかな?」
「な、何の事ですか?」
「動揺を隠せないようですな」
「そ、そんな事はしてません!」
「ならば、これはどう言う事か!」
忠嗣社長は少し前にとある匿名の手紙を受け取っていた。
「──豊科工業の新製品開発情報を横流ししている輩がいる」と、忠嗣社長は銀行員の紫垣に手紙を読み上げて、どうにか事実確認を行い、融資継続を迫ろうとした。
「解りました。そうですね……。話しは聞かせて貰いました。良いでしょう。ならば、明後日午後二時。久屋大通駅前にある喫茶『グーリア』でお話しましょう。此処ではあれなんで」
「ぐぬぬ……。本当は今すぐにでも真相を聞きたいのですがね」
「えぇ、申し訳ありません。きちんとゆっくりお話したいので」
「分かってますよ。こればっかりはしっかり話さねば……気が済まない」
忠嗣社長の問い詰めに、紫垣がしでかしたであろう事の重大さを押し隠すように努めてのんびり構える返事から悔しさを奥歯で噛み締めながら「気が済まない」と口にする忠嗣社長であった。
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