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第3章 過去編
14話 青戸らの過去編5
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忠嗣社長は、二〇一七年二月下旬に届いた匿名の手紙による密告の内容の真偽を確かめるべく、銀行員の紫垣が指定した日付の二〇一七年三月の初旬に喫茶「グーリア」に向かう。忠嗣社長は、愛車のオデッセイ(車種)で弥富市稲元町の自宅まで一度走らせて、妻に「何やら面白い事になりそうだ」とだけ伝えて再び妻の元から愛車と共に走り去った。
忠嗣社長は待ち合わせ場所に指定された喫茶「グーリア」に早めに着くも、駐車場が狭い上に埋まっていた。その為、車を敢えなく出して駐車場を探しに出かける羽目になった。
喫茶「グーリア」は久屋大通駅前にあるのだが、久屋大通駅周辺の駐車場の多くは月極の駐車場であり、自由に使える駐車場の殆どが埋まっており、駐車場を探し当てる頃には、約束の午後二時を優に二時間以上経過していた。
紫垣に「遅れています。遅れて申し訳ない」と言う内容の電話をいつ掛けようか悩んでいる最中、「メールで良いだろう」と言う考えに染まったらしく軽い老眼が入っている目を細めながら、慣れない手付きでメールを送信していると、ちょうど携帯電話が振動して着信音が忠嗣社長の手元から鳴り響いた。
「急遽仕事が追加で入って遅れます。連絡するのが遅れて申し訳ありません」
「い、いえ。此方こそ、連絡が遅れていました」
「……と言う事なんで、時間と場所をずらして宜しいでしょうか?」
「はい」
「では~、本日午後五時半以降で。場所は後程お知らせします! とりあえず久屋大通駅で待ち合わせしたいのですが宜しいでしょうか?」
「解りました」
※※※※※
定刻の午後五時半を回る時間が来た。忠嗣社長が久屋大通駅に到着すると、先に紫垣が久屋大通駅のトイレ前を陣取って待機していた。
「ようやく来ましたか! 話があると文句を垂れていたのは其方さんなのにね。ハハッ」
「面白い! 面白い事言いますなぁ、情報屋の紫・垣さん」
「何が面白いのですか?」
「とぼけないでください。とぼけても無駄ですよ? ネタは上がっているんですから! ねぇ? 白状した方が身の為ですよ?」
「はぁ? あ、いや、えっ?」
「だ~か~ら~、紫垣さん、貴方は『情報屋』みたいな事したでしょ? つい最近からやたら元従業員に給料の未払いの支払いを催促してくる輩が居ましてね? どうして急に催促しだしたんだ! って問い詰めたんだ。例の手紙の件もありますしね。そしたら案外白状してくれましたよ。紫垣さん、貴方に百二十万円の賄賂を裏口座に入金されたとか、されてないとか」
「うっ……違、違う……」
「焦りの色が顔に出てきましたねぇ」
紫垣は矢継ぎ早に出てくる攻めの言葉に、みるみる動揺のあまり汗をかいて狼狽えてしまって、情報の横流しの事実を直接喋らずとも自白したかのように忠嗣社長に悟られてしまった。
忠嗣社長は待ち合わせ場所に指定された喫茶「グーリア」に早めに着くも、駐車場が狭い上に埋まっていた。その為、車を敢えなく出して駐車場を探しに出かける羽目になった。
喫茶「グーリア」は久屋大通駅前にあるのだが、久屋大通駅周辺の駐車場の多くは月極の駐車場であり、自由に使える駐車場の殆どが埋まっており、駐車場を探し当てる頃には、約束の午後二時を優に二時間以上経過していた。
紫垣に「遅れています。遅れて申し訳ない」と言う内容の電話をいつ掛けようか悩んでいる最中、「メールで良いだろう」と言う考えに染まったらしく軽い老眼が入っている目を細めながら、慣れない手付きでメールを送信していると、ちょうど携帯電話が振動して着信音が忠嗣社長の手元から鳴り響いた。
「急遽仕事が追加で入って遅れます。連絡するのが遅れて申し訳ありません」
「い、いえ。此方こそ、連絡が遅れていました」
「……と言う事なんで、時間と場所をずらして宜しいでしょうか?」
「はい」
「では~、本日午後五時半以降で。場所は後程お知らせします! とりあえず久屋大通駅で待ち合わせしたいのですが宜しいでしょうか?」
「解りました」
※※※※※
定刻の午後五時半を回る時間が来た。忠嗣社長が久屋大通駅に到着すると、先に紫垣が久屋大通駅のトイレ前を陣取って待機していた。
「ようやく来ましたか! 話があると文句を垂れていたのは其方さんなのにね。ハハッ」
「面白い! 面白い事言いますなぁ、情報屋の紫・垣さん」
「何が面白いのですか?」
「とぼけないでください。とぼけても無駄ですよ? ネタは上がっているんですから! ねぇ? 白状した方が身の為ですよ?」
「はぁ? あ、いや、えっ?」
「だ~か~ら~、紫垣さん、貴方は『情報屋』みたいな事したでしょ? つい最近からやたら元従業員に給料の未払いの支払いを催促してくる輩が居ましてね? どうして急に催促しだしたんだ! って問い詰めたんだ。例の手紙の件もありますしね。そしたら案外白状してくれましたよ。紫垣さん、貴方に百二十万円の賄賂を裏口座に入金されたとか、されてないとか」
「うっ……違、違う……」
「焦りの色が顔に出てきましたねぇ」
紫垣は矢継ぎ早に出てくる攻めの言葉に、みるみる動揺のあまり汗をかいて狼狽えてしまって、情報の横流しの事実を直接喋らずとも自白したかのように忠嗣社長に悟られてしまった。
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