8 / 52
第一章 SchoolGirl. MagicalGirl.
2.
しおりを挟む
「こむぎー、それじゃまた明日ね~」
「ばいばーい、つばめちゃん!」
その日の学校を終えて家路につくわたしたちは、丁度『朝野パン工房』――つまり。自宅の前で軽くあいさつを交わし、つばめと別れる。
わたしの家はここだが、彼女の家は、ここからさらに歩いたところにある。……といっても、そこまで互いの家が離れている訳ではない。徒歩で少し歩けば行き来できるほどの距離だ。
手を振り、彼女を見送ると……周囲に人目がないことを確認したわたしは、そのまま家へと入る――事はせずに。隣に浮かぶジャムパン……サポポンへと話しかける。
「それじゃあ、今日も魔法少女の仕事にいこっか、サポポン!」
誰も見ていないこの状況じゃなければ話せない、魔法少女のサポートをする精霊――サポポンに、わたしはそう告げると、続けて――わたしではないもう一人の自分を呼び起こすかのように。小さく、静かな声でつぶやいた。
――『BREAD』――
わたしに与えられた魔法少女としての名前――通称、『魔法名』を詠み上げる。
それが魔法少女としての自分を解放するためのキーであり、言葉にすることで、内に秘められた魔法少女としての自分を呼び起こすことができる。
魔法名を紡いだ直後――周りの風も、空に浮かぶ雲も、街に響く虫の鳴き声も――その全てが、まるで止まってしまったかのように……ゆっくりへと変わる。
もう何度も、魔法少女になって経験しているはずのこの感覚も……未だ、慣れることはない。そんな、不思議な空間へと変わった世界で――
「……いこう、サポポン。このあたりのネガエネミーを探索して!」
『ここのところ毎日、魔法少女の仕事をしてるけど……身体は大丈夫かい? 今日一日くらい休んだところで、誰も文句なんて言わないよ』
魔法少女になったあの日から今日まで毎日――と言っても、一週間すら経っていないのだが――倒すべき敵、ネガエネミーと戦っているわたしをサポポンは気遣ってくれているが――
「ううん、これは魔法少女にしかできないことだし、わたしが頑張らないと。それに、早く仕事にも慣れないといけないしね」
わたしが頑張れば、助けられる命がある。……決して、陰ながら動き、誰に見られている訳でもなく、誰に褒められたりする訳でもないこの仕事も――そう思うだけで、心の底から力がみなぎってくるのだった。
『やっぱり、ボクの目に狂いはなかったみたいだ。……魔法少女として充分な素質、そして――』
「わたしなんか、そんな褒められるほどじゃないよ。今でも、魔法を完全に使いこなせるって訳じゃないし……。
でも、魔法少女に選ばれた以上は、その役目を果たしたいし……こんな。特別取り柄もないわたしに、人助けなんて大層なことができるのなら……って思っただけ」
早く魔法少女として一人前になるためにも……初めて魔法少女となった日に見た『黒い魔法少女』のように強くなって、さらにたくさんの人々を守るため。
魔法少女になってから五日たった今日も、グレーと茶色をした魔法少女の衣装を身に着けて――ぴょんっ、と一飛び。そのまま青い大空へと飛び立った。
『……そういう所なんだけどなあ。確かに魔法の才能もあるけれど……ボクがこむぎを選んだ決め手はそれだけじゃない。主人公気質とでも言うのかな』
「サポポン、なにかいった?」
『ううん、何も……』
わたしの前でなにやら、一人でつぶやいているサポポンにわたしは声を掛けるが――まあいいかと、ネガエネミーの反応を辿って、案内する彼へとついていく。
「ばいばーい、つばめちゃん!」
その日の学校を終えて家路につくわたしたちは、丁度『朝野パン工房』――つまり。自宅の前で軽くあいさつを交わし、つばめと別れる。
わたしの家はここだが、彼女の家は、ここからさらに歩いたところにある。……といっても、そこまで互いの家が離れている訳ではない。徒歩で少し歩けば行き来できるほどの距離だ。
手を振り、彼女を見送ると……周囲に人目がないことを確認したわたしは、そのまま家へと入る――事はせずに。隣に浮かぶジャムパン……サポポンへと話しかける。
「それじゃあ、今日も魔法少女の仕事にいこっか、サポポン!」
誰も見ていないこの状況じゃなければ話せない、魔法少女のサポートをする精霊――サポポンに、わたしはそう告げると、続けて――わたしではないもう一人の自分を呼び起こすかのように。小さく、静かな声でつぶやいた。
――『BREAD』――
わたしに与えられた魔法少女としての名前――通称、『魔法名』を詠み上げる。
それが魔法少女としての自分を解放するためのキーであり、言葉にすることで、内に秘められた魔法少女としての自分を呼び起こすことができる。
魔法名を紡いだ直後――周りの風も、空に浮かぶ雲も、街に響く虫の鳴き声も――その全てが、まるで止まってしまったかのように……ゆっくりへと変わる。
もう何度も、魔法少女になって経験しているはずのこの感覚も……未だ、慣れることはない。そんな、不思議な空間へと変わった世界で――
「……いこう、サポポン。このあたりのネガエネミーを探索して!」
『ここのところ毎日、魔法少女の仕事をしてるけど……身体は大丈夫かい? 今日一日くらい休んだところで、誰も文句なんて言わないよ』
魔法少女になったあの日から今日まで毎日――と言っても、一週間すら経っていないのだが――倒すべき敵、ネガエネミーと戦っているわたしをサポポンは気遣ってくれているが――
「ううん、これは魔法少女にしかできないことだし、わたしが頑張らないと。それに、早く仕事にも慣れないといけないしね」
わたしが頑張れば、助けられる命がある。……決して、陰ながら動き、誰に見られている訳でもなく、誰に褒められたりする訳でもないこの仕事も――そう思うだけで、心の底から力がみなぎってくるのだった。
『やっぱり、ボクの目に狂いはなかったみたいだ。……魔法少女として充分な素質、そして――』
「わたしなんか、そんな褒められるほどじゃないよ。今でも、魔法を完全に使いこなせるって訳じゃないし……。
でも、魔法少女に選ばれた以上は、その役目を果たしたいし……こんな。特別取り柄もないわたしに、人助けなんて大層なことができるのなら……って思っただけ」
早く魔法少女として一人前になるためにも……初めて魔法少女となった日に見た『黒い魔法少女』のように強くなって、さらにたくさんの人々を守るため。
魔法少女になってから五日たった今日も、グレーと茶色をした魔法少女の衣装を身に着けて――ぴょんっ、と一飛び。そのまま青い大空へと飛び立った。
『……そういう所なんだけどなあ。確かに魔法の才能もあるけれど……ボクがこむぎを選んだ決め手はそれだけじゃない。主人公気質とでも言うのかな』
「サポポン、なにかいった?」
『ううん、何も……』
わたしの前でなにやら、一人でつぶやいているサポポンにわたしは声を掛けるが――まあいいかと、ネガエネミーの反応を辿って、案内する彼へとついていく。
0
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる