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第二章 Urban Myth “Miwakare Bridge”.
11.
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――ピコーンっ!
その日の夜――やるべき事を済まし、あとは寝るだけとなったわたしは、自分の部屋でごろごろとしていると――突然。新しいメッセージが入った事を知らせる通知音が、わたしのスマートフォンから鳴り響く。
なんの変哲もない、普通の通知音だったが……それを発したのは、魔法少女にしか見えないという不思議なアプリ――Magi.netによるものだった。
「……あっ、八坂さんからだっ」
……まあ、今日登録したばかりで、知り合いの魔法少女は彼女しかいないので、当然といえば当然なのだが……
魔法少女専用の特別なネットワークを通して、第三者からの盗聴などを防ぐそのアプリ。わざわざそれで送られてきたという事で、少し身構えつつも、そのアプリを開く。
そこには――
『都市伝説を追ってる、元魔法少女の私の先輩、蓮見さんって言うのだけれど……その先輩が言うには、ちょうど今が都市伝説の流行のピークみたい。つまり、ネガエネミーになるとすれば――今日か、明日か、明後日か……。正確な日時はその時まで分からないけれど、用心しておいて。
都市伝説が現れた時は、ここで落ち合いましょう。それでは、おやすみなさい』
その文章と共に、地図アプリの位置情報が添付されていた。――それは、わたしの住むこの街、鳴繰市の中心から少し離れた――今日の昼に命岐橋へと向かう際に通った道だった。
このあたりから人通りも少なくなっていった記憶があるので、それならば魔法少女同士の待ち合わせにはうってつけの場所なのだろう。……そういった細かい下調べも彼女は済ませていたらしい。とにかく、命岐橋がネガエネミーになったら、この場所で集合すれば良いらしい。
……そして、もう一つ重要な情報が記されていた。
命岐橋が都市伝説になるとすれば――今日から明後日の三日間の間である可能性が高いということ。
強敵である……都市伝説との戦いが、すぐ間近へと迫っているかもしれない、ということ。わたしは、多くの被害を生み出すかもしれないそれを前に、改めて。心を引き締めなおす。
そして最後に。……一枚の画像が添付されていた。
「……何の写真だろう?」
この内容からして、なにか都市伝説にまつわる写真なのか。そう思うと、開くのがちょっぴり躊躇われる。
しかし、送られてきたものを見ない訳にもいかないので……恐る恐る、その写真を開いてみる。――そこには。
大量に積み上がった漫画本をバックに、横からピースをしている写真だった。写真の下部には文字が入っていて、『全巻読破!』とキラキラなデコ文字で書かれている。
積み上がった漫画の後ろに見えるパソコン、個室っぽい場所……ここはネットカフェ……?
てっきり、命岐橋に関わる……どこかシリアスな画像が添付されているものかと思い、別のベクトルで驚いてしまった。
「『了解です。なんだか楽しそうですね! おやすみなさい』……送信っと」
きっと、ネガエネミーに備えて、この鳴繰市に泊まっているのだろう。うちで泊まっていっても良かったのに……とも思うが、なんだか楽しそうにしているので良い……のだろうか?
とにかく、明日は家の手伝いもあるし、昼からはつばめちゃんとの約束もある。駅前の新しくできたソフトクリーム屋さんへ行くという話だった。それに、命岐橋もネガエネミーへと成るかもしれない。
という事で、いつもより少し早いが……わたしは部屋の灯りを消して、ベッドへと入ることにした。
その日の夜――やるべき事を済まし、あとは寝るだけとなったわたしは、自分の部屋でごろごろとしていると――突然。新しいメッセージが入った事を知らせる通知音が、わたしのスマートフォンから鳴り響く。
なんの変哲もない、普通の通知音だったが……それを発したのは、魔法少女にしか見えないという不思議なアプリ――Magi.netによるものだった。
「……あっ、八坂さんからだっ」
……まあ、今日登録したばかりで、知り合いの魔法少女は彼女しかいないので、当然といえば当然なのだが……
魔法少女専用の特別なネットワークを通して、第三者からの盗聴などを防ぐそのアプリ。わざわざそれで送られてきたという事で、少し身構えつつも、そのアプリを開く。
そこには――
『都市伝説を追ってる、元魔法少女の私の先輩、蓮見さんって言うのだけれど……その先輩が言うには、ちょうど今が都市伝説の流行のピークみたい。つまり、ネガエネミーになるとすれば――今日か、明日か、明後日か……。正確な日時はその時まで分からないけれど、用心しておいて。
都市伝説が現れた時は、ここで落ち合いましょう。それでは、おやすみなさい』
その文章と共に、地図アプリの位置情報が添付されていた。――それは、わたしの住むこの街、鳴繰市の中心から少し離れた――今日の昼に命岐橋へと向かう際に通った道だった。
このあたりから人通りも少なくなっていった記憶があるので、それならば魔法少女同士の待ち合わせにはうってつけの場所なのだろう。……そういった細かい下調べも彼女は済ませていたらしい。とにかく、命岐橋がネガエネミーになったら、この場所で集合すれば良いらしい。
……そして、もう一つ重要な情報が記されていた。
命岐橋が都市伝説になるとすれば――今日から明後日の三日間の間である可能性が高いということ。
強敵である……都市伝説との戦いが、すぐ間近へと迫っているかもしれない、ということ。わたしは、多くの被害を生み出すかもしれないそれを前に、改めて。心を引き締めなおす。
そして最後に。……一枚の画像が添付されていた。
「……何の写真だろう?」
この内容からして、なにか都市伝説にまつわる写真なのか。そう思うと、開くのがちょっぴり躊躇われる。
しかし、送られてきたものを見ない訳にもいかないので……恐る恐る、その写真を開いてみる。――そこには。
大量に積み上がった漫画本をバックに、横からピースをしている写真だった。写真の下部には文字が入っていて、『全巻読破!』とキラキラなデコ文字で書かれている。
積み上がった漫画の後ろに見えるパソコン、個室っぽい場所……ここはネットカフェ……?
てっきり、命岐橋に関わる……どこかシリアスな画像が添付されているものかと思い、別のベクトルで驚いてしまった。
「『了解です。なんだか楽しそうですね! おやすみなさい』……送信っと」
きっと、ネガエネミーに備えて、この鳴繰市に泊まっているのだろう。うちで泊まっていっても良かったのに……とも思うが、なんだか楽しそうにしているので良い……のだろうか?
とにかく、明日は家の手伝いもあるし、昼からはつばめちゃんとの約束もある。駅前の新しくできたソフトクリーム屋さんへ行くという話だった。それに、命岐橋もネガエネミーへと成るかもしれない。
という事で、いつもより少し早いが……わたしは部屋の灯りを消して、ベッドへと入ることにした。
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