39 / 52
第三章 Fifty-Fifty. Despair of Whale.
10.
しおりを挟む
『――Deliele Ga Full Flowa【BREAD】――Convert――っ!』
黒く、途方もないほどに大きなクジラの見た目をしたネガエネミーを正面へと見据えながら、わたしは迷わず詠唱する。
そして、再び――あの大きな口を開かせるためのカギである、巨大なコッペパンが落とされる。
――ゴオオオオオォォォォォッ! と激しい風音を唸らせつつも、そのまま落下していくそれを、その大きさ故に動きが鈍く、避けることができない相手は……ぱかあっ! と、こちらの狙い通りにその口を開く。
こうなれば、飲み込んで噛み砕くか、あの白い光線で撃ち返すかの二択しかないはず。
前者ならば最初の作戦通り、その隙に潜り込めばいいだけで。もし、後者でも――わたしと八坂さんを背に、藍色の髪をなびかせながら浮かぶ魔法少女――氷乃京香は。
「――Follor Mee Arl Rure『SIGN』――Convert……」
詠唱を紡いだ後、彼女の前に――赤く、三角形をした『プレート』が現れる。そこには、白い文字で『止まれ』――と、そう書かれている。
「これが氷乃さんが言っていた『標識』……?」
街を歩いていれば、幾度となく目にする、交通標識。彼女の目の前に浮かぶ、交差点なんかに立っているこの『止まれ』の標識であれば、そこを通る車は止まらなくてはならないというルールを示す……それこそが、彼女の固有魔法『SIGN』だったのだ。
「私の魔法は『力』で止める訳ではありません。『法則』で止めるのです。ルールという概念は絶対――それこそ、法則を覆すような攻撃でない限りは例外なく止める事が可能です」
そう言い切った直後、大きなクジラは――があっ! と口を開けて――その奥が一瞬、白く光る。
「朝野さん、八坂先輩――攻撃が来ます。私の後ろへ下がってください」
「分かったわ。無茶を任せてしまってごめんなさい。それじゃあ朝野さん、一度離れましょうか」
そう言われ、わたしはまだ不安が残るが……八坂さんと共に一度、彼女の後ろへと引いた。
そして――ギュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥウウッ!!
破壊を象徴するかのような激しい音と共に、わたしたちを撃ち抜いたあの白い光線が放たれる。それは真っ直ぐに、氷乃さんが生み出した赤い標識へと向かって進み――バチバチバチバチバチィィッ!!
金属を溶接しているような、そんな耳障りな音を鳴り響かせながら、その白い光線は文字通り――標識の前で停止する。
その赤い標識へぶつかると共に、その攻撃が見えない結界に阻まれているかのように。氷乃さんの出した標識がなければ、今すぐにでもあちこちへと光線が暴れ出してしまいそうな――そんな勢いを残したまま、止まっていた。
「行きましょう、朝野さん!」
「……はいっ!」
一秒一秒、刻一刻と威力が増していく光線の合間を縫って、わたしと八坂さんは大きく開いたクジラの口の中へと飛んで、潜り込んでいった。
黒く、途方もないほどに大きなクジラの見た目をしたネガエネミーを正面へと見据えながら、わたしは迷わず詠唱する。
そして、再び――あの大きな口を開かせるためのカギである、巨大なコッペパンが落とされる。
――ゴオオオオオォォォォォッ! と激しい風音を唸らせつつも、そのまま落下していくそれを、その大きさ故に動きが鈍く、避けることができない相手は……ぱかあっ! と、こちらの狙い通りにその口を開く。
こうなれば、飲み込んで噛み砕くか、あの白い光線で撃ち返すかの二択しかないはず。
前者ならば最初の作戦通り、その隙に潜り込めばいいだけで。もし、後者でも――わたしと八坂さんを背に、藍色の髪をなびかせながら浮かぶ魔法少女――氷乃京香は。
「――Follor Mee Arl Rure『SIGN』――Convert……」
詠唱を紡いだ後、彼女の前に――赤く、三角形をした『プレート』が現れる。そこには、白い文字で『止まれ』――と、そう書かれている。
「これが氷乃さんが言っていた『標識』……?」
街を歩いていれば、幾度となく目にする、交通標識。彼女の目の前に浮かぶ、交差点なんかに立っているこの『止まれ』の標識であれば、そこを通る車は止まらなくてはならないというルールを示す……それこそが、彼女の固有魔法『SIGN』だったのだ。
「私の魔法は『力』で止める訳ではありません。『法則』で止めるのです。ルールという概念は絶対――それこそ、法則を覆すような攻撃でない限りは例外なく止める事が可能です」
そう言い切った直後、大きなクジラは――があっ! と口を開けて――その奥が一瞬、白く光る。
「朝野さん、八坂先輩――攻撃が来ます。私の後ろへ下がってください」
「分かったわ。無茶を任せてしまってごめんなさい。それじゃあ朝野さん、一度離れましょうか」
そう言われ、わたしはまだ不安が残るが……八坂さんと共に一度、彼女の後ろへと引いた。
そして――ギュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥウウッ!!
破壊を象徴するかのような激しい音と共に、わたしたちを撃ち抜いたあの白い光線が放たれる。それは真っ直ぐに、氷乃さんが生み出した赤い標識へと向かって進み――バチバチバチバチバチィィッ!!
金属を溶接しているような、そんな耳障りな音を鳴り響かせながら、その白い光線は文字通り――標識の前で停止する。
その赤い標識へぶつかると共に、その攻撃が見えない結界に阻まれているかのように。氷乃さんの出した標識がなければ、今すぐにでもあちこちへと光線が暴れ出してしまいそうな――そんな勢いを残したまま、止まっていた。
「行きましょう、朝野さん!」
「……はいっ!」
一秒一秒、刻一刻と威力が増していく光線の合間を縫って、わたしと八坂さんは大きく開いたクジラの口の中へと飛んで、潜り込んでいった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる