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第四章 No.1459_CHANDELIER.
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激しい爆発は、少し離れた所のわたしたちにまで衝撃が走り、容易く吹き飛ばされてしまう。
何とか体勢を立て直し――地面へ突き落とされ、それでも再び飛び上がった虹色に光る魔法少女、黒咲稀癒を見ると――
『Hartz Darkness Illm Natel【CHANDELIER】……Convert……』
まるで修道女の歌声のような、綺麗で透き通るような異次元の詠唱が聞こえる。
そして、爆散したはずの、様々な装飾を施されたガラスのシャンデリアが再び――天から降りてくる。
『この私に地を踏ませた屈辱、死をもって償いなさいッ! あははははははハハハハハハッ!!』
同時、シャンデリアの先、先端の尖った虹色に輝くガラスの装飾が無数に――バババババババババッ!! 放たれたガラスの装飾が、弾幕を形成する。
「朝野さん、八坂先輩、隠れてください。ここから先は絶対に通しませんよ。……一方通行です。――Convert――」
わたしと八坂さんの前へと立った氷乃さんは、青色に、白い矢印が描かれたその標識――『一方通行』を生み出し、前へと掲げる。
向かってくる無数のガラスで張られた弾幕は――その標識を越えようとした瞬間、くるりと。反対方向へと向きを変え、弾幕の放たれた場所――彼女の元へと帰っていく。
「――発射ッ!!」
全ての弾幕を弾き返して――さらに。八坂さんの声と共に、次はこちらが。中身の詰まったガラス瓶による、彼女のシャンデリアから放たれたものに負けないほどに、無数の弾幕を放つ。
茶色のガラス瓶から透けて見える液体は、どこか黄緑色だった。
『ふふ、ははははッ、無駄よ。私はもう、中身に気を取られて背後を取られるなんてヘマはしない。全て避けるわ』
宣言通り――ガラス瓶は全て避けられ、次々とシャンデリア、コンクリートの地面へと叩きつけられていく。その中身は――ネバネバとした、スライムだった。
もし、さっきのように向かってくるガラス瓶全てを割っていれば――ドロドロとしたそれが降り注ぎ、隙が生まれたかもしれない。……彼女はそれを読んだのだ。
「流石に同じ手には引っかからない……みたいね」
「このままじゃ埒が明きません。全員で――接近戦を仕掛けましょう。私が盾になります」
「分かったわ。――行きましょう」
氷乃さんの提案で、接近戦をしよう。という話になったが――
「待ってください。氷乃さんはともかく、八坂さんは接近戦より、遠距離からの攻撃のほうが得意なんじゃないですか……?」
八坂さんは、いつも遠くからガラス瓶を生み出し、それを射出する戦法を得意としていた。そんな彼女が、無理に接近戦を行えば――かなり危険なのではないか。そう思った。――しかし、
「そうね……。私は接近戦は苦手よ。……でも、朝野さんは得意でしょう?」
「それは、まあ、わたしはそうですけど……八坂さんは……」
そう言うわたしに、二人は――
「朝野さんから頂いたパンは、魔力の強化も勿論ですが――もっと重要な役割があるんですよ」
「朝野さんが私に初めてあのパンを焼いてくれた時、何を考えて焼いたのかしら……?」
あの時。ネガエネミーのコアを一度に壊そうとして、八坂さんに力を分け与えようとしたわたしは――そうだ。八坂さんに足りない、わたしの長所――火力を補えるようにと焼いたのだった。
「本来ならば私も、近接戦は不得意です。それどころか、皆さんを守る盾となる事しか出来ません。しかし、朝野さんから頂いたパンによって、私にも近接戦の適正が補われた――という訳です」
「そうよ。私たちでも近接戦は出来るから――安心して、朝野さん」
あの時、八坂さんに足りなかった火力を補ったのと同様に、わたしの得意な近接戦の適正も補うことが出来る――という事らしい。自分ではただ必死に焼き上げただけだったので、そんな事には気付きもしなかった。
どうやらわたしの焼くパンは、わたしの得意分野を分け与える――そんなパンだったらしい。
「さて、行きましょうかっ!」
「私が盾になります。絶対に離れないで下さいね」
「……はいっ!」
わたしたち三人は――五百ものエネルギーを取り込んだ末に、神の領域にまで足を踏み入れた魔法少女、黒咲稀癒との決着を着けるため――圧倒的な力を持つ彼女の元に、立ち向かう。
何とか体勢を立て直し――地面へ突き落とされ、それでも再び飛び上がった虹色に光る魔法少女、黒咲稀癒を見ると――
『Hartz Darkness Illm Natel【CHANDELIER】……Convert……』
まるで修道女の歌声のような、綺麗で透き通るような異次元の詠唱が聞こえる。
そして、爆散したはずの、様々な装飾を施されたガラスのシャンデリアが再び――天から降りてくる。
『この私に地を踏ませた屈辱、死をもって償いなさいッ! あははははははハハハハハハッ!!』
同時、シャンデリアの先、先端の尖った虹色に輝くガラスの装飾が無数に――バババババババババッ!! 放たれたガラスの装飾が、弾幕を形成する。
「朝野さん、八坂先輩、隠れてください。ここから先は絶対に通しませんよ。……一方通行です。――Convert――」
わたしと八坂さんの前へと立った氷乃さんは、青色に、白い矢印が描かれたその標識――『一方通行』を生み出し、前へと掲げる。
向かってくる無数のガラスで張られた弾幕は――その標識を越えようとした瞬間、くるりと。反対方向へと向きを変え、弾幕の放たれた場所――彼女の元へと帰っていく。
「――発射ッ!!」
全ての弾幕を弾き返して――さらに。八坂さんの声と共に、次はこちらが。中身の詰まったガラス瓶による、彼女のシャンデリアから放たれたものに負けないほどに、無数の弾幕を放つ。
茶色のガラス瓶から透けて見える液体は、どこか黄緑色だった。
『ふふ、ははははッ、無駄よ。私はもう、中身に気を取られて背後を取られるなんてヘマはしない。全て避けるわ』
宣言通り――ガラス瓶は全て避けられ、次々とシャンデリア、コンクリートの地面へと叩きつけられていく。その中身は――ネバネバとした、スライムだった。
もし、さっきのように向かってくるガラス瓶全てを割っていれば――ドロドロとしたそれが降り注ぎ、隙が生まれたかもしれない。……彼女はそれを読んだのだ。
「流石に同じ手には引っかからない……みたいね」
「このままじゃ埒が明きません。全員で――接近戦を仕掛けましょう。私が盾になります」
「分かったわ。――行きましょう」
氷乃さんの提案で、接近戦をしよう。という話になったが――
「待ってください。氷乃さんはともかく、八坂さんは接近戦より、遠距離からの攻撃のほうが得意なんじゃないですか……?」
八坂さんは、いつも遠くからガラス瓶を生み出し、それを射出する戦法を得意としていた。そんな彼女が、無理に接近戦を行えば――かなり危険なのではないか。そう思った。――しかし、
「そうね……。私は接近戦は苦手よ。……でも、朝野さんは得意でしょう?」
「それは、まあ、わたしはそうですけど……八坂さんは……」
そう言うわたしに、二人は――
「朝野さんから頂いたパンは、魔力の強化も勿論ですが――もっと重要な役割があるんですよ」
「朝野さんが私に初めてあのパンを焼いてくれた時、何を考えて焼いたのかしら……?」
あの時。ネガエネミーのコアを一度に壊そうとして、八坂さんに力を分け与えようとしたわたしは――そうだ。八坂さんに足りない、わたしの長所――火力を補えるようにと焼いたのだった。
「本来ならば私も、近接戦は不得意です。それどころか、皆さんを守る盾となる事しか出来ません。しかし、朝野さんから頂いたパンによって、私にも近接戦の適正が補われた――という訳です」
「そうよ。私たちでも近接戦は出来るから――安心して、朝野さん」
あの時、八坂さんに足りなかった火力を補ったのと同様に、わたしの得意な近接戦の適正も補うことが出来る――という事らしい。自分ではただ必死に焼き上げただけだったので、そんな事には気付きもしなかった。
どうやらわたしの焼くパンは、わたしの得意分野を分け与える――そんなパンだったらしい。
「さて、行きましょうかっ!」
「私が盾になります。絶対に離れないで下さいね」
「……はいっ!」
わたしたち三人は――五百ものエネルギーを取り込んだ末に、神の領域にまで足を踏み入れた魔法少女、黒咲稀癒との決着を着けるため――圧倒的な力を持つ彼女の元に、立ち向かう。
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