ハズレスキル【すり抜け】を極めたら世界最強のチート能力に覚醒しました〜今更帰って来いと言われても、あの時俺を役立たずとして捨てましたよね?〜

玖遠紅音

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序章

10話 勘のいいガキは、、、

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「あー、えっと、その、悪い。邪魔したな」

 前世から引き継いだ人見知りコミュ障を遺憾なく発揮しつつ、後ずさりするようにその場を去ろうとしたのだが……

「あっ、まっ、まってっ!」

「――え?」

 樹に寄り添う形で読書をしていた少女は、俺を見るや否や、やや乱暴気味に分厚い本を閉じて俺を呼び止めた。
 予想外の反応に困惑しつつ俺が足を止めると、少女は立ち上がって俺の近くへ寄って――来る前に、その場でふらついて膝をついてしまった。
 恐らく長時間同じ姿勢を取っていたせいだろうなと思いつつ、重い体に鞭を打って少女を支えてやる。

「――っと、大丈夫か?」

「う、うん。ありがとう……」

 見た目は俺と同じ五歳児付近で、少女というよりは幼女と言った方が正しいな。
 目がやや大きめの可愛らしい顔立ちで、小動物のような印象を抱かせる。
 そして軽く土ぼこりを払ってやって、彼女が自分で立てるようになるまで待った。

「えっと、読書していたんじゃないのか?」

「……うん」

「その、俺に何か用があるのか?」

「……うん。あの、このほん……」

 差し出してきたのは、先ほどまで少女が読んでいた本だった。
 算数・数学に関する基礎教養の本だな。なんかどこかで見たことあるような気がするけど……

「えっと、分からないから教えて欲しいってことか?」

 そう問うと、少女は首を横に振った。

「このほん、かえすの、いっしょについてきて欲しいの」

「へ?」

「ひとりじゃ、こわいから……」

 そう口にする少女の顔は、本当に不安そうだ。
 正直その意図を掴みかねているのだが、ここで大人に言えばいいだろというのは流石に無粋だということくらいはギリギリでたどり着いた。
 多分、この子が言いたいのはそういうことじゃない。

「……わかった。じゃあ、一緒に行こうか」

 本当は今すぐベッドにダイブしたいところなのだが、なんとなくこの子は放っておかないほうがいい気がしたので付き合ってあげることにした。
 俺はさっそく少女の手を引いて、入ったことがない方の図書室へ向かおうとしたのだが――

「……ん? どうした?」

 俺が歩きだそうとすると、少女はやや強く俺の手を握って引き止めた。
 どうしたんだろうか。何か都合が悪いものでも目に入ったか?
 今一度少女の方へ振り向くと、先ほどと同じように首を横に振った。

 あぁ、これだから子供は苦手なんだ。
 なにを考えているかわからないし、かといって雑に扱うと面倒なことになる。
 俺はそう思ってため息をつこうとしたところで、少女はある方向を指さした。

 それは、先ほど俺が歩いてきた道だ。

「……あっち。このほんは、たぶん、あっち」

「……え?」

「……これ、おにいちゃんがもってきたほん。だから、きっと、あっちのほん」

「んなっ!?」

 思わず声を上げて驚いてしまった。
 こいつ……俺が普段通っている図書館から拝借して隠しておいた本を見つけ出して読んでいたのか!
 しかもその持ち主である俺が通りかかったら、声をかけて一緒に返しに行こうっていうなんて一体何を考えて……

「え、えっと、これをいったいどこで?」

「……たまたま、おにいちゃんがほんをかくしているの、みちゃったの」

「あー……」

 マジか。夜にこっそりバレないように隠したつもりだったが、まさか見られていたとは。
 だがしかし、俺が気にしていたのは大人の方ばっかりで、子供たちの方までは意識が向いていなかった気がする。
 くっそ、油断したな……どうする?

「わるいことだとおもったけど、きになっちゃって……」

「えっと、そうか。じゃあ、こいつは俺が返しておくよ、うん。それじゃ――」

「まっ、まって! わたしもつれてって!」

 ぬぐぐ……めんどうくせえことになった。
 少女はさっきより強い力で俺の服を掴んでいる。
 強引に振り払うことも出来なくはないけど、下手なことをして大声で泣かれでもしたら非常に面倒くさい。
 まさか、ここまで計算済みで声をかけてきたのか……?
 いや、流石に考えすぎか?

「……はぁ、分かったよ。連れていくよ。その代わりこのことは誰にも言っちゃダメだぞ」

 仕方ない。降参だ。
 俺は唇に人差し指を当ててしーの合図をすると、少女の表情はぱっと明るくなった。

「うん! ありがとう!」

 夕食の時間までは……あと少しなら余裕がありそうか。
 それまでに何とか口封じの手段を考えておかないとな。
 ガキの口は紙のように軽い。いつ俺の噂をばらまかれるか分かったもんじゃないからな。

「お前、名前は?」

「マナリィ。マナリィ・ヴィン・アストール」

「マナリィ……オッケー、マナって呼ぶよ。俺はヴェルマーク。ヴェルでいいぞ。よし、さっさと行っちまおう」

「ヴェルおにいちゃん……うん! わかった!」

 なんか良く分からないうちに俺は妹(?)のマナと行動を共にすることになってしまった。
 この出会いが俺にどういう変化をもたらすのかは分からないが、よくよく考えてみたら俺が転生してきてからまともに会話したのってフーリさん以外にいなかったな。
 これはこれで悪くない展開なのかもしれない。

 そんなことを考えながらも面倒ごとが怒らないといいなと思いつつ、最悪フーリさんに何とかしてもらえばいいや、なんて思考が働いていたのは内緒の話だ。


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