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1話 婚約破棄されました(私じゃない人が)
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「あっ、あなた! いったい何をしているのですか! ミリ――私という婚約者がありながら、あろうことか妹と浮気をするなんて!!」
彼女は、受け入れ難い現実に酷くショックを受け、動揺していた。
だがそれも仕方のない話だろう。
本来私の婚約者であるはずの青年――第三王子セルキー殿下が、妹であるマリィと抱き合いながら口づけを交わしていたのだから。
「あ、あらっ! お姉さまったら! 人の情事の邪魔をするなんて! は、はしたないですわよ!!」
「そ、そうだぞ! お前にはその、関係ないことだ!!」
セルキーの煌く金髪も。マリィの鮮やかな紫髪も。
どちらも溢れる冷や汗で台無しになるくらいに激しい動揺を見せた二人。
当然だろう。この王国では、一夫一妻が基本であり、浮気は重罪である。
無論王族もその例外ではなく、発覚すればただでは済まないだろう。
「なにが関係ない、ですか! 最も大切な存在であるはずの女性を前に、よくもまあそんなセリフが言えたことですね!!」
状況を何とか理解した彼女は憤慨した。
そのあまりの迫力に二人は一瞬気圧されそうになるも、すぐに鋭い目つきを彼女へとぶつけ、威嚇する。
「う、うるさいっ! 公爵令嬢とは言え所詮は貴族の娘! 王族であるこの俺のプライベートに口出しする権利などないぞ!!」
「そ、そうですわよ! セルキー殿下はこの国を治める偉大なる陛下のご子息。この程度の行いが許されないはずがありませんわ!!」
「何を言うかと思えば、この国の法では浮気は重罪ですよ! 王侯貴族が率先して法を守るからこそ、臣民もまた法に従うのです! 人の上に立つべき王族であるあなたがこのような行いをしては――」
二人は王族であるセルキーの威を示すことで、自らの行いを正当化しようとした。
彼女はそれがどうしても許せなかった。
「ああもう、うるさいうるうさい! お前との婚約は破棄だ! これでいいだろう!!」
「なにもよくありません! このことは陛下に報告いたしますからね!!」
「やってみるがいい! お前と俺、どちらが真実となる報告が出来るか思い知らせてやる! 覚悟しておけ!!」
「あっ、ま、待ってください殿下! お供いたします――」
その身を震わせながらも盛大な捨て台詞を吐いて去る王子。
そして子犬のように慌ててそれについていくマリィ。
彼女はその光景をただ唖然としながら見送ることしかできなかった。
「はぁ……なんてこと……まさかミリアと入れ替わっている間にこんなことになるなんて……」
そう言って長い紫色のウィッグを取り外すと、美しい白銀の髪を揺らして大きなため息をついた。
彼女の名前はヴェネット=アーケンブルグ。
このシグリア王国と友好関係にある大国の第一王女その人だった。
「ひとまず、ミリアとお兄様のところへ行かなくては」
この後の予定はすべて中止だ。
とても残念だけれど、大切な友人のためならばと彼女は大急ぎで飛び出した。
彼女は、受け入れ難い現実に酷くショックを受け、動揺していた。
だがそれも仕方のない話だろう。
本来私の婚約者であるはずの青年――第三王子セルキー殿下が、妹であるマリィと抱き合いながら口づけを交わしていたのだから。
「あ、あらっ! お姉さまったら! 人の情事の邪魔をするなんて! は、はしたないですわよ!!」
「そ、そうだぞ! お前にはその、関係ないことだ!!」
セルキーの煌く金髪も。マリィの鮮やかな紫髪も。
どちらも溢れる冷や汗で台無しになるくらいに激しい動揺を見せた二人。
当然だろう。この王国では、一夫一妻が基本であり、浮気は重罪である。
無論王族もその例外ではなく、発覚すればただでは済まないだろう。
「なにが関係ない、ですか! 最も大切な存在であるはずの女性を前に、よくもまあそんなセリフが言えたことですね!!」
状況を何とか理解した彼女は憤慨した。
そのあまりの迫力に二人は一瞬気圧されそうになるも、すぐに鋭い目つきを彼女へとぶつけ、威嚇する。
「う、うるさいっ! 公爵令嬢とは言え所詮は貴族の娘! 王族であるこの俺のプライベートに口出しする権利などないぞ!!」
「そ、そうですわよ! セルキー殿下はこの国を治める偉大なる陛下のご子息。この程度の行いが許されないはずがありませんわ!!」
「何を言うかと思えば、この国の法では浮気は重罪ですよ! 王侯貴族が率先して法を守るからこそ、臣民もまた法に従うのです! 人の上に立つべき王族であるあなたがこのような行いをしては――」
二人は王族であるセルキーの威を示すことで、自らの行いを正当化しようとした。
彼女はそれがどうしても許せなかった。
「ああもう、うるさいうるうさい! お前との婚約は破棄だ! これでいいだろう!!」
「なにもよくありません! このことは陛下に報告いたしますからね!!」
「やってみるがいい! お前と俺、どちらが真実となる報告が出来るか思い知らせてやる! 覚悟しておけ!!」
「あっ、ま、待ってください殿下! お供いたします――」
その身を震わせながらも盛大な捨て台詞を吐いて去る王子。
そして子犬のように慌ててそれについていくマリィ。
彼女はその光景をただ唖然としながら見送ることしかできなかった。
「はぁ……なんてこと……まさかミリアと入れ替わっている間にこんなことになるなんて……」
そう言って長い紫色のウィッグを取り外すと、美しい白銀の髪を揺らして大きなため息をついた。
彼女の名前はヴェネット=アーケンブルグ。
このシグリア王国と友好関係にある大国の第一王女その人だった。
「ひとまず、ミリアとお兄様のところへ行かなくては」
この後の予定はすべて中止だ。
とても残念だけれど、大切な友人のためならばと彼女は大急ぎで飛び出した。
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