32 / 74
愛欲編
3
しおりを挟む
「リン先生~、遅いよぉ! 何していたの!?」
元気よく僕を呼ぶ声。
芝生のキレイな公園で、僕の生徒達が手を振ってくれていた。
僕は子供たちの元に駆け寄った。子供たちの笑顔は毎日意見の合わない会議やらに出席して疲れている僕の唯一無二の癒しだ。
「ちょっと会議が長引いちゃったんだ。ごめんねぇ」
だけど、子供の中に不純物が混じっているのを見て、僕のテンションが急降下する。
「リン」
嬉しそうな顔をする茶色の男。カイル・ラウリー。
「……」
すぅっと僕の笑顔が消え無表情になる。
その様子を見て、子供達があははっと笑う。
「出た! リン先生の百面相!!」
「リン先生、その顔、オ・ブ・ス! あはは! 何その顔~!!」
「皆、酷いよ!? 僕は純粋に君たちに会いたくて来ているのにぃ! どうしてこの男を呼んだりするんだい?」
「俺も純粋にアンタに会いたくて来ている」
横で男がサラリと呟く。
聞いてない! 君にそんな事一切聞いていない!! 僕は子供たちと話しているのに。
このカイル・ラウリーという男は、以前街中で出会って以降、僕の所在地を探しだして、こうして何食わぬ顔で僕のテリトリーに入って来るのだ。
ガクリと肩を落とした僕を子供たちがなでなでしてくれる。そんな優しくしてくれるのに、どうして男を呼ぶのだい!!
「だって、昨日の『特別授業』本当に面白かったんだもん!」
一人の生徒が言うと、周りの子たちが一斉にうんうん頷く。
そうなのだ。昨日もこの男は図々しく子供達と同席していて、いい加減に堪忍袋の緒が切れた僕は『特別授業』と称してこの男と対戦したのだ。
その行為は、子供達だけではなくてこの男も喜ばせる事になった。子供たちの純粋な目で『凄い凄い』と喜んでもらえるのはいい。だが、『リン、本当にアンタは凄い!!』と子供以上に喜ぶ男にはゲッソリしてしまった。
「リン先生、カイル君、格好いいし凄いのよ? 一緒に遊んじゃ駄目なの?」
頭を撫でてくれていた生徒が僕に言う。
あぁ、この子も洗脳されてしまった。
「先生、いつも仲間外れはいけませんって言っているじゃん。カイル君、もう俺たちの仲間だし!」
仲間外れはいけません。確かに僕は言った事が何度もあるセリフだけども。
「でも、でもね? 僕は君たちと一緒に放課後楽しんで魔術したり遊んだりする時間が癒されて好きなんだ。僕の好きな時間なんだよ?」
「俺もアンタの笑顔見ると癒されて好きな時間だな」
横で男がサラリと言う。生徒達が「キャー」「ヒューヒュー」と叫んでいる。
何を言うか。この男、子供達の前だと言うのに!!
「君、今日もコテンパンにやられたいのか?」
僕は男を睨みつける。
「お? 今日もか!!」
途端に喜ぶ男の顔。キラキラと嬉しそうなオーラを全開にする。
——やってしまった。喜ばせてどうする。この男は戦いと強い者が好きなのだ。
はっ! そういう事は、僕がわざと負ければ興味をなくすのだろうか。それなら全然負けてもいい!!
「じゃ、俺が勝ったら二人だけで会おう」
わざと負けるわけにはいかない……。
もうこうなってはこの男に僕の強さを分からせるしかあるまい!! これでもかとコテンパンにしてやるのだ。
僕がギラギラと睨んだところ、ニヤリと笑う。
「でもさ、子供のいない時の方が本気で戦いやすいよな? 別の場所に移動するか?」
「ふふ。子供の前で何度もコテンパンにされる事が恥ずかしいのかい? 僕は優しいからね。子供のいない場所で君をコテンパンにしてあげるよ!!」
「そうか。じゃ、二人で別の場所移動しような」
いいとも。と頷いた所で、ツンツンと生徒に肩を突かれる。
「先生。それ、結局カイル君の“二人きりで会う”っていう思惑通りになっているよね?」
「……え」
「そんなわけで先生と俺は後で二人きりになるから邪魔するなよ」
「……」
なんてことだ。
結局、この男を喜ばせる判断をしてしまっていた。まるで掌で踊らされているようだ。
……しかし、見ておくがいい。笑っていられるのも今のうちだけだ。
生徒全員を家へ送った後、勝手に付いてきた男を見た。
さて、どこで戦闘しようか。王宮に戻って道場を開放しようか、それとも彼が動きやすいように丘へ……。
「暗くなってきたな。寒くないか?」
そう言って僕の近くへ来ようとする。デカい男に傍に寄られるのは嫌いなのだ。
「僕が寒くてもそうでなくても君には関係ない。ずっと言っているが慣れ慣れしくしないでくれたまえ。更にこの勝負で僕が勝ったならば関わらないでくれ」
「……本当に子供の前とじゃ態度違うな」
カイル君を無視して僕は人の少ない丘へ向かった。
彼は黙ってついてくればいいのに、勝手に何か話したりしている。彼からの視線を感じるのでフードを深く被って拒否感を表す。
「今回、僕が勝てば、もう付きまとうのはやめてくれ」
そう言うと、男は苦笑いするだけで返答はない。
この勝負で彼が付きまとおうとも思わないくらい徹底的にやらなくては。
丘について男と対面する。
男は、茶色い髪の毛を軽くかき上げた。どうして、この男のよりも僕の方が実力は上なのに、自信たっぷりに飄々としているのだろう。
それが癪に障るわけではない。この男には、そういう態度が似合っているなと純粋に感じる。
「なぁ、アンタって誰か頼れる奴いるか?」
「君に応える必要はない」
僕は、早めに終わらせたくて後ろを歩く彼に振り向いた。僕と目が合うとニヤリと不敵に笑う。
「逃げるなら今だよ」
「誰も頼る奴がいないなら、俺がなってやる」
「……」
この男には、僕がそんな軟弱な者に見えているのだろうか。
「随分、心配症のようだけど、自分の身の心配をしたまえ」
僕は彼に術をかけた。
硬化の魔術だ。一番固くイメージした。彼の身は一瞬で固まった。目と瞼や呼吸等、生命活動に必要な部位以外は硬化の魔術で固めている。
彼の目が細められる。身体に力を入れているのだろう。
僕は彼の身体をトンッと彼の身体を押した。彼は後ろに倒れた。倒れている彼の腰に携帯している剣を抜いた。
「……」
それを彼の喉元に向ける。
「どうだい? 君の心配は無用だ。偉そうなことはこの術を解いてから言いたまえ」
「……」
何か言いたそうな目をしている。意志の強さだけは認めてあげよう。
それだけ言って彼の剣を地面に着き刺した。
「さようなら。もう二度と付きまとわないで」
彼の指がピクリと動いた。だけど、彼には僕の硬化は解けまい。彼は強い。だけど、僕の方が強い。それだけのこと。
そうして、背を向けた時、自分の内部で嫌な予感がした。
——結界? 結界が揺れている。
僕は、地面に手を置いた。どこかで災害? または強いモンスターでも現れたか?
どこだ? 一体どこに?
僕は、魔術探知で異変のある場所を特定する。
「リンッ!」
その呼び声で、僕は上に高く飛んだ。
僕の立っていた場所に突如、大型モンスターが地面から現れた。見たこともない姿かたちをしたモンスターだ。
僕は、現れた地面を見た。その地面は吸い込まれるような闇が広がっていた。
なんだ……。あの闇は。僕の結界を破って? いや、初めから、あの闇はあったのか?
「ボケっとするな。リンッ!」
一瞬、ゾクリとした恐怖がその声で破られた。大型モンスターが僕めがけて突進してくる。術を発動させる一瞬、大型モンスターの動きが鈍くなる。その背には、先ほど僕が地面に着き刺した剣が刺さっている。
カイル君が!? なんてことだ……。彼は、僕の術を破ったのか?
大型モンスターより恐ろしい男だ。
僕は素早く魔術を発動させた。地面の穴を防ぎ、そして、モンスターには硬化の魔術をかける。
全ての動きを止めた後、彼を見た。
彼……、カイル・ラウリー……。
「カイル君、助かったよ」
彼は、上半身だけ起こした形だった。下半身は、動かないままか……。
僕は、彼の術を解いた。
彼は、笑った。
「頼りになるだろう」
その自信満々な表情が、何故か僕の心に刺さった。
元気よく僕を呼ぶ声。
芝生のキレイな公園で、僕の生徒達が手を振ってくれていた。
僕は子供たちの元に駆け寄った。子供たちの笑顔は毎日意見の合わない会議やらに出席して疲れている僕の唯一無二の癒しだ。
「ちょっと会議が長引いちゃったんだ。ごめんねぇ」
だけど、子供の中に不純物が混じっているのを見て、僕のテンションが急降下する。
「リン」
嬉しそうな顔をする茶色の男。カイル・ラウリー。
「……」
すぅっと僕の笑顔が消え無表情になる。
その様子を見て、子供達があははっと笑う。
「出た! リン先生の百面相!!」
「リン先生、その顔、オ・ブ・ス! あはは! 何その顔~!!」
「皆、酷いよ!? 僕は純粋に君たちに会いたくて来ているのにぃ! どうしてこの男を呼んだりするんだい?」
「俺も純粋にアンタに会いたくて来ている」
横で男がサラリと呟く。
聞いてない! 君にそんな事一切聞いていない!! 僕は子供たちと話しているのに。
このカイル・ラウリーという男は、以前街中で出会って以降、僕の所在地を探しだして、こうして何食わぬ顔で僕のテリトリーに入って来るのだ。
ガクリと肩を落とした僕を子供たちがなでなでしてくれる。そんな優しくしてくれるのに、どうして男を呼ぶのだい!!
「だって、昨日の『特別授業』本当に面白かったんだもん!」
一人の生徒が言うと、周りの子たちが一斉にうんうん頷く。
そうなのだ。昨日もこの男は図々しく子供達と同席していて、いい加減に堪忍袋の緒が切れた僕は『特別授業』と称してこの男と対戦したのだ。
その行為は、子供達だけではなくてこの男も喜ばせる事になった。子供たちの純粋な目で『凄い凄い』と喜んでもらえるのはいい。だが、『リン、本当にアンタは凄い!!』と子供以上に喜ぶ男にはゲッソリしてしまった。
「リン先生、カイル君、格好いいし凄いのよ? 一緒に遊んじゃ駄目なの?」
頭を撫でてくれていた生徒が僕に言う。
あぁ、この子も洗脳されてしまった。
「先生、いつも仲間外れはいけませんって言っているじゃん。カイル君、もう俺たちの仲間だし!」
仲間外れはいけません。確かに僕は言った事が何度もあるセリフだけども。
「でも、でもね? 僕は君たちと一緒に放課後楽しんで魔術したり遊んだりする時間が癒されて好きなんだ。僕の好きな時間なんだよ?」
「俺もアンタの笑顔見ると癒されて好きな時間だな」
横で男がサラリと言う。生徒達が「キャー」「ヒューヒュー」と叫んでいる。
何を言うか。この男、子供達の前だと言うのに!!
「君、今日もコテンパンにやられたいのか?」
僕は男を睨みつける。
「お? 今日もか!!」
途端に喜ぶ男の顔。キラキラと嬉しそうなオーラを全開にする。
——やってしまった。喜ばせてどうする。この男は戦いと強い者が好きなのだ。
はっ! そういう事は、僕がわざと負ければ興味をなくすのだろうか。それなら全然負けてもいい!!
「じゃ、俺が勝ったら二人だけで会おう」
わざと負けるわけにはいかない……。
もうこうなってはこの男に僕の強さを分からせるしかあるまい!! これでもかとコテンパンにしてやるのだ。
僕がギラギラと睨んだところ、ニヤリと笑う。
「でもさ、子供のいない時の方が本気で戦いやすいよな? 別の場所に移動するか?」
「ふふ。子供の前で何度もコテンパンにされる事が恥ずかしいのかい? 僕は優しいからね。子供のいない場所で君をコテンパンにしてあげるよ!!」
「そうか。じゃ、二人で別の場所移動しような」
いいとも。と頷いた所で、ツンツンと生徒に肩を突かれる。
「先生。それ、結局カイル君の“二人きりで会う”っていう思惑通りになっているよね?」
「……え」
「そんなわけで先生と俺は後で二人きりになるから邪魔するなよ」
「……」
なんてことだ。
結局、この男を喜ばせる判断をしてしまっていた。まるで掌で踊らされているようだ。
……しかし、見ておくがいい。笑っていられるのも今のうちだけだ。
生徒全員を家へ送った後、勝手に付いてきた男を見た。
さて、どこで戦闘しようか。王宮に戻って道場を開放しようか、それとも彼が動きやすいように丘へ……。
「暗くなってきたな。寒くないか?」
そう言って僕の近くへ来ようとする。デカい男に傍に寄られるのは嫌いなのだ。
「僕が寒くてもそうでなくても君には関係ない。ずっと言っているが慣れ慣れしくしないでくれたまえ。更にこの勝負で僕が勝ったならば関わらないでくれ」
「……本当に子供の前とじゃ態度違うな」
カイル君を無視して僕は人の少ない丘へ向かった。
彼は黙ってついてくればいいのに、勝手に何か話したりしている。彼からの視線を感じるのでフードを深く被って拒否感を表す。
「今回、僕が勝てば、もう付きまとうのはやめてくれ」
そう言うと、男は苦笑いするだけで返答はない。
この勝負で彼が付きまとおうとも思わないくらい徹底的にやらなくては。
丘について男と対面する。
男は、茶色い髪の毛を軽くかき上げた。どうして、この男のよりも僕の方が実力は上なのに、自信たっぷりに飄々としているのだろう。
それが癪に障るわけではない。この男には、そういう態度が似合っているなと純粋に感じる。
「なぁ、アンタって誰か頼れる奴いるか?」
「君に応える必要はない」
僕は、早めに終わらせたくて後ろを歩く彼に振り向いた。僕と目が合うとニヤリと不敵に笑う。
「逃げるなら今だよ」
「誰も頼る奴がいないなら、俺がなってやる」
「……」
この男には、僕がそんな軟弱な者に見えているのだろうか。
「随分、心配症のようだけど、自分の身の心配をしたまえ」
僕は彼に術をかけた。
硬化の魔術だ。一番固くイメージした。彼の身は一瞬で固まった。目と瞼や呼吸等、生命活動に必要な部位以外は硬化の魔術で固めている。
彼の目が細められる。身体に力を入れているのだろう。
僕は彼の身体をトンッと彼の身体を押した。彼は後ろに倒れた。倒れている彼の腰に携帯している剣を抜いた。
「……」
それを彼の喉元に向ける。
「どうだい? 君の心配は無用だ。偉そうなことはこの術を解いてから言いたまえ」
「……」
何か言いたそうな目をしている。意志の強さだけは認めてあげよう。
それだけ言って彼の剣を地面に着き刺した。
「さようなら。もう二度と付きまとわないで」
彼の指がピクリと動いた。だけど、彼には僕の硬化は解けまい。彼は強い。だけど、僕の方が強い。それだけのこと。
そうして、背を向けた時、自分の内部で嫌な予感がした。
——結界? 結界が揺れている。
僕は、地面に手を置いた。どこかで災害? または強いモンスターでも現れたか?
どこだ? 一体どこに?
僕は、魔術探知で異変のある場所を特定する。
「リンッ!」
その呼び声で、僕は上に高く飛んだ。
僕の立っていた場所に突如、大型モンスターが地面から現れた。見たこともない姿かたちをしたモンスターだ。
僕は、現れた地面を見た。その地面は吸い込まれるような闇が広がっていた。
なんだ……。あの闇は。僕の結界を破って? いや、初めから、あの闇はあったのか?
「ボケっとするな。リンッ!」
一瞬、ゾクリとした恐怖がその声で破られた。大型モンスターが僕めがけて突進してくる。術を発動させる一瞬、大型モンスターの動きが鈍くなる。その背には、先ほど僕が地面に着き刺した剣が刺さっている。
カイル君が!? なんてことだ……。彼は、僕の術を破ったのか?
大型モンスターより恐ろしい男だ。
僕は素早く魔術を発動させた。地面の穴を防ぎ、そして、モンスターには硬化の魔術をかける。
全ての動きを止めた後、彼を見た。
彼……、カイル・ラウリー……。
「カイル君、助かったよ」
彼は、上半身だけ起こした形だった。下半身は、動かないままか……。
僕は、彼の術を解いた。
彼は、笑った。
「頼りになるだろう」
その自信満々な表情が、何故か僕の心に刺さった。
40
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる