花嫁探しはまさかの自分だった!?

モト

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色気をまき散らす彼に

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思い立ったが吉日。と言う言葉があるように僕はすぐに彼の婚活に動いた。
だけど、婚活事情を僕は知らな過ぎた。


まず、貴族には貴族のコニュニティーが存在する。さらに婚活するならば申請が必要であった。
その申請用紙を見て、僕は汗だくになった。


婚活する本人の年齢、外見……それはアピールポイントであるため難なく記入できた。
だが、その後だ。収入、資産、純資産(資産から負債を差し引いたもの)……ご本人の特徴よりも家柄などの方が記入欄は大きい。つまり、こちらの方が貴族にとっては重要ということだ。


「資産はノワールの土地だから価値はある。農作物も豊富だし……、ただ、収入と純資産を正直に書いてしまうと来てくださるご令嬢がいるのか」

現状……収入0に近いとは書けない……。もっと、他に上手い表現方法に逃れたい。

うーんうーんと悩む僕を見かけたアル様は、お声がけくださった。

「もう、やめよう。来てもらっても断るのが手間だよ」

そう言われると、益々ムキになってしまう!

「いーえっ! 僕は諦めませんっ!!」
「……はぁ、何をそんなにムキになる必要があるんだい?」


呆れられるが、もうこれは一種の僕の使命なのだ! 

頭を捻り2日かかって婚活申請用紙に記入した。



その婚活用紙を伝書鳥に咥えさせた。この伝書鳥はとても優秀で1~2日ほどでベクレゼル王国全土、どこでも郵送してくれるのだ。

婚活申請はベクレゼル王国の公共機関で判断され、受理されれば、貴族間で婚活募集が始まる。

ベクレゼル王国は貴族のコニュニティーがしっかりしていて、パーティーの開催や探し物などもここに届け出すれば貴族間に伝書鳥が手紙を運んで教えてくれる仕組みになっている。

そうして、婚活申請を咥えた伝書鳥を見送って、僕は屋敷の掃除にかかった。

大きい屋敷は、掃除が行きわたっておらず、埃が溜まっているところも多い、僕は朝から晩まで掃除を始めた。
貧乏でも清潔が大事だ。逆に金持ちが不潔なら好感度タダ下がり。来てくださる女性が質素な屋敷でも素敵だと思ってもらえるような空間にしたい。

天井のシャンデリアを取り外してキレイに洗おうと、脚立に立って背伸びをした。背伸びをしてもなかなか取り外せなくてもたついていると、体幹がグラついてしまった。

「しまっ————」
「——おっと」


ポスッと腰を大きな手でしっかりと支えられた。この大きな手はアル様だ。
下を向いて謝ると彼は溜息をついて、僕の腰を掴んだまま、ふわっと抱き締められた。


「こういう高い場所には私を呼びなさい。無理なことされてケガをすれば悲しむのは私の方だよ!」
「あ……、でも、アル様は他にご用事が……」

甘えて今までそうしてきたからってこれからは駄目なんだ。


「私に必要なのは婚活ではなく、使用人の求人かな」

「そんなお金は……っあっわっ!?」

反論しようとするとそのまま抱き上げられ宙に浮く。

「アル様っ!? 僕はまだ掃除がっ!?」
「もう充分だ。私を構いなさい」






「それで、これは一体何なのでしょうか?」

アル様がまた膝に乗せて僕の髪の毛を弄っている。

「手が暇になってしまったんだ。付き合いなさい」
「手が暇……」

アル様もみっちり働かれてはいる。(貴族なのにおいたわしい)なのに休憩時間でも動きたいのか。

「休憩になりませんって、僕を降ろしてください」
「リースにこうして触れて癒されることが休憩だよ」

そう間近で言われると、ゾクゾクゾク——ッと腰がむず痒いような変な感覚に囚われた。

「ね? もっとくっついていたいんだ」
「……っ!?!?」


全身が熱くなる。

最近、よくあるのだ。でも、それは僕が悪いワケじゃないっ! この方が色気を振り回しているのが悪いのだっ!! やたらセクシーなんだ。



もしかしなくとも、彼は欲求不満なのだ。
そう、発散するにも田舎町の貴族という立場が悪い。田舎は噂が出回りやすい為、変に交際を持ってしまうと貴族の名に傷がついてしまう。

その分、色気が倍増しているのだ。
おいたわしい。日々色気に満ち溢れているのに……。

僕はブンブン首を左右に振り、決意して立ち上がった。



「僕、婚活のこと、もっと調べて頑張りますからねっ!!」
「だからね、リース!?、」

部屋を出た僕は彼が大きな溜息をついて項垂れたことに気が付かなかった。




そして、後日。


貴族のコミュニティーに婚活が申請された。しかし、1週間経っても誰からも応募が来ない。
毎日伝書鳥を来るのを今か今かと待っている僕の肩をポンッとアル様が叩いた。


「まぁ、そんなものだよ。皆金持ちがいいからね」
「そんなぁ……」

耳も尻尾も項垂れた僕に、アル様は苦笑いするが、自身はやはり全く婚活に興味がなさそうだ。僕が下から見ているのに気が付くと、「おいで。リース」と抱きかかえられた。


「私は君がいればいいよ。ね? リースもそう思わないかい?」
「……っ、貴方様という方はぁ! もうっ!」
「何を怒るの? 私が嫌かい?」

彼の美声で耳元がぞくぞくぞくする。まつ毛が長い、それにその色っぽい表情だ。


やたらと色気フェロモンをまき散らす彼に「いい加減にして下さ——い!」と叫んだ。

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