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勇者にアピールされた。
「は……う……うぅぅうん」
俺の悲鳴は、この男の口の中で消化された。
勇者の柔らかい唇。強引に“お邪魔します”された舌は、口の中では穏やかに丁寧に動く。
角度を変えて、上顎を舐められたら、ゾクッと背筋から甘い痺れが起きる。
「ひゃぁうっ……んっ、んっ」
うぅ。確かに、これは凄く気持ちがいい。
時折、苦しくないよう、微かに唇が離れるタイミングも完璧だ。
かなり器用に動く舌が、俺の舌を擦り絡みついてくる。舌を吸われてハムハムと甘噛みされては『お口が溶けちゃう~』状態になる。
気を抜くと、つい、うっとりしてしまいそうな心地よさを感じてしまう。
勇者がセールスポイントだと言うだけある。これが、おっぱいエルフちゃんならば、即座にお買い上げしているところだ。
だが、目の前にいるのは男。デカい剣を振り回す勇者だ。何が悲しくて男のキスで気持ちよくならねばいけないんだ。
さらに、腰に回された手が尻を撫でてきた。
「……っひゃん、……な、……ふぅん……せっ!」
「はい」
唇がちゅぽんっと離れたと思ったら、ちゅっちゅ。と軽めに何度もキスされる。ゾクゾクなんかしねぇやい。
「いかがですか?」
気持ちいいです。とは死んでも言いたくない。
「……気持ちよくなんかなかった。離せ」
「残念」
するりと、腰に回された腕を離されると、力が入らなくてカクリと地面に着いた。
はれ……?
「あれ? もしかして腰砕けになりましたか?」
「……え? 嘘……」
お試しキスで?
たった5分にも満たないキスで?
…………くぅ。俺の童貞力がなんと悲しい事か。エルフちゃんの為に大事にとっておいた童貞がこんな所で仇になったか。
勇者は俺の両手を掴んで紳士的に立たせてくれた。
「そんな可愛い反応されますと、他のセールスポイントも是非味わって貰いたくなりますね。ロングコースで堪能してみませんか?」
「全然いらないです。お帰り下さい」
「そう言わずに。魔王様だけの特売品ですので」
一度敷居を跨いだらテコでも動かないセールスマンか。今後、魔王城には押し売り販売お断りのステッカーを張っておかなくちゃ。
すると、勇者は俺の背に合わせるように中腰になり、耳元で顔を寄せてそっと囁く。
「本当に? さっきより気持ちいいですよ?」
「ひゃあっ!?」
ゾクゾクゾク―――……
コイツ、なんつー、無駄にいい声してんだ!? 声が破廉恥だ。
その声から逃げるように身体を捩るのに、また、腰を掴まれて動けない。
「魔王様って、耳も尖って可愛いですよね」
そう言って、尖った耳に生温かい滑った感触がする。
へ……、今、コイツ、俺の耳の先っぽ舐めているのか!?
「ふわぁ! やめ、やめっ!……ふ、ふ、ふええぇっ!!」
耳の先っぽから耳たぶまでねっとり舐められる。なんて厭らしい奴だっ!! 耳が犯されちゃう!!
そこは、音を聞く穴で、何かをい……入れちゃ……やだだろう……ひよぉお!! きぃもーちーーいいーー、やだぁ! 腰抜けるぅ~……
「我が魔王様♡に手を出すなっ!!」
その時、地面に倒れていた前魔王がヨロリと立ち上がった。つい、うっとりしかけた俺の意識がハッと覚醒する。
今、俺はとてもチョロかった。こんな事では、貞操が守れない……!! 危ない。前魔王に感謝だ。
俺の耳を舐めていた勇者から舌打ちが聞こえる。
「どいつもこいつも自分の魔王様みたいに言いやがって! …………やっぱり、魔王様持っていくしかねぇか」
俺に向けていた表情とは別人みたいな口調と無表情に変わった勇者。
はれ……、コイツの無表情の顔、どこかで……? どこだったか?
「———おやすみなさい。睡眠薬使ってごめんなさい」
だけど、それに気づく前に俺の口に布を押し付けられて、気を失った。
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