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勇者が違和感半端ない!
しおりを挟む触手に捕まった俺を見て、固まっている勇者。
触手が俺を離さまいとぎゅうっといろんなところに絡みついてくる。
「んあっ、そこ、入っちゃ、ダメな……っんあぁ、やだぁ!」
「……魔王様」
「んんっ、み、んなぁ!!」
ジッと視線を感じるぅ!!
きっと、このエロ勇者もこの状況を楽しんでくるに違いないっ!! 俺の脳内でこれから起きる恐ろしいことにサーっと血の気が引いていく。
とにかく、俺の腕だけでも外して触手にパンチを与えて、木のお化けをメロメロにさせるんだ。
その瞬間だ、勇者の方向から突風が吹いたと思ったら、シュパンッと切れる音が鳴った。身体に巻き付かれていた触手が離れたと思ったら、勇者の腕の中にスッポリ入っていた。
「————……え?」
「大丈夫ですか? 魔王様」
問いかけに頷くと、勇者は木のお化けにはドスの利いた声を出した。俺の身体を抱き寄せるように片手で持ち上げて、もう片方の手で鞘から剣を抜き木のお化けに向けた。
「おいっ! テメェ、俺の魔王様が嫌がってんのが分からねぇのかよっ!! あぁ!? 絶対ぶっ殺す!!」
「い、いや……俺は、お前に対しても結構嫌がっているんだがな……」
木の化け物の方も怒っているのか、木の幹から触手を大量に出してきた。その触手が一気に俺と勇者に向かってくる。
勇者はスゥっと息を吸ったかと思うと、触手の攻撃してくるより早いタイミングで剣で切りつける。
その素早い太刀攻撃は、勇者に抱き上げられている俺でも目で追えなかった。
なんだ、この速さ……。おっそろしいな。
シュパン、シュパン、と切れる音。大量の触手が一斉に攻撃するも勇者には効かない。
木のお化けの触手には再生能力があるのか、切ったところから生えてくる。が、勇者には太刀打ちできないことが分かったのか、地面から根っこが抜けてジリジリと後退する。
勇者がそんな木のお化けに許すことなく、剣を向けながら距離を詰める。
「——おい! もういいだろう。木のお化けも戦意喪失してるじゃねぇか」
「は? 貴方、何言ってんですか。貴方この木に蹂躙されるとこだったんですよ」
そう言われると、嫌な気がする。
ジロッと木のお化けを睨むと、木のお化けが触手をモジモジさせる。
「ね。やっぱり許せません。俺の魔王様に二度とそんな気を起こさないようにぶっ殺しておかないと」
——だから、お前の魔王様じゃねぇっての。
人が怒っているのをみると、逆に冷静になってくるので、俺の怒気はしぼんでいく。
「木のお化け、二度と俺に関わるな。な? 分かったよな」
「……魔王様」
そう言うと、木のお化けが、まるで頷くみたいに幹を曲げた。曲げるとポロポロと木のお化けの実が落ちてくる。
その実を触手が俺に渡そうとするのを、「調子のんな」と勇者が実を取り上げた。
「魔王様が決めたことだから、俺もそれに従う。だが、今度、俺の魔王様に手を出したら許さねぇからな」
勇者のドスの効いた声に木の化け物はデカい図体の割に俊敏な動きで去って行った。
静かになった場所で、未だに勇者の肩に捕まって抱き上げられていることに気づき、手をパッと離した。
「いや、お前の俺じゃねぇから」
「あぁ、失礼しました。魔王様の俺でいいです」
まだ怒っているのか、無表情だ。だが、触手の粘液でヌルヌルの俺をマントで包んでくれ、近くの川まで向かってくれた。
この後、もしかして川で厭らしいこと……もされない。
普通に一人で川で身体を洗わせてもらえた。
——……コイツにとっては、今すげぇエロ展開だろうに。なんで、何もしないんだ?
先日逃げた時も、今も。
最初に尻の点検された以外はキスだけだし。勇者は何を企んでいるのだろう
「魔王様」
「ひぃっ!!」
川から上がって服を着ていると、真後ろで勇者の声がして身を飛び跳ね驚いた。
やっぱり、覗いでいたのか!? 半裸の俺を抱くつもりか!?
勇者はちょっと、いやかなり俺のむき出しの足を見てくる、というか、目が固定されている。
あまりに強い視線なので急いでズボンを履いた。
「おい、なんだよ」
「————……いいえ。魔王様、こちらをどうぞ」
勇者は頬を染めて花束を俺に渡してきた。山間に咲く青色の花。
「え」
俺に花束を受け取らせた後、その中から一本花を取り出して、俺の尖った耳の上に飾った。
その様子を呆然と見た。
「魔王様、きれいです」
ははっと笑う仕草。
「…………」
あれ? なんだっけ。これ?
昔にもこんな風に花をもらった気がする。違う花だったけど、キレイな花をみると俺に持たせてくるんだ。
『ラキさんキレイ、すき。大好き』
「…………あれ?」
あれ? 俺は、何か大事なことを見逃していないだろうか。
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