ベータですが、運命の番だと迫られています

モト

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6.アルファのお色気

 
 ──運命。

 この男、また言った……。
 アルファがオメガに見せる執着を俺にベータ向けている。
 フェロモンに鈍感な俺だが、八乙女が醸す執着オーラには背筋がゾクゾクする。

 アルファ流の告白されてキュンするかって? いやいや、初対面がヤクザ事務所だったから、怖いの倍増。

 しかし、下手に断って仕事をクビになったりしない? 脅されない? 店とか客に迷惑かかりそう。日の下歩ける? 
 八乙女から予約が入った時からそれらのストレスで胃がムカムカしていた。挨拶すぐに本題からくるなんて。


「ち……違います。人違いじゃないですか? 俺に似た人はいくらでもいますよ。きっと他人の空似でしょう」

「貴方を20年ぶりに見ても、すぐに運命だと分かったというのに?」

「いうのにぃ………?」

 なんで、自分が正しいですって言い切るんだ! おかしいのはお前の方だって!? 

 例えば、幽霊を見たことがない人間に幽霊がいるよって言っても本当かどうかわからない。なのに「ほら! 幽霊いるだろ!? 見えるだろ!」って押し付けてくるのと同じくらいだと思う。

 この理不尽をどうにか説得しなければ。凝固しまくった相手を説得するなんて芸当を俺ができるだろうか!? しかも相手は口達者な弁護士だぞ!?


「もしかして、僕のことをどう断ろうか考えていますか?」
「……え、と。…………はい」
「正直な方ですね」

 八乙女は真っすぐに座っていた体勢からやや前屈になる。美形の無表情は圧力が凄い。
 口調は優しいけど、目がギラギラしている。


「断るのは運命という言葉が信じられないからですか? 難しいことを考える必要はありません。要は僕を好きになってくれればいいだけです」


 なにこれ、俺が八乙女に惚れて当然だろって雰囲気は。
 自信過剰はアルファあるあるなのか。
 今のところ何か感じているとしたら胃部不快感、眠りが浅い、焦燥感……つまりストレスだけ。


「は、はっきり言わせていただきます! 運命を感じません。執着されてもどうしていいのか分かりません! 今は仕事の時間ですので、仕事の話に戻してもよろしいでしょうか!?」


 大きく脱線した話を仕事に戻したい! 無視して新規客へのマニュアル説明をして……いいんだよな? いや、俺は仕事しに来たんだからこれで正しい。
 だけど、八乙女は白黒つけたい人だった。


「お仕事熱心なんですね。では、今のお仕事はお話にしましょう。まず恋人になって欲しいです」

「…………」

 断ったばかりなのに、随分攻めて来るじゃァねぇか。
 まず恋人からってことは最終的には何だよ!? まさか結婚?
 白服着たヤクザ達に祝われてバージンロードを歩く姿を想像する。ひえ、怖い。絶対やだ。 


 ドン引きが表情に出ていたのだろう、ベラベラ話していた八乙女がようやく静かになって眉間にシワを寄せる。


「ゴホン、では譲歩しましょう。……とりあえずお試しで付き合いませんか? 一か月更新はいかがでしょうか。僕的には長期でお願いしたいですけど」

「先伸ばしするのは心苦しいので……」

「どうしてもと言っているのです」

 ひぇえ……
 こわ。

「そ、そう言われましても……」

 この様子は断っても無駄だろう。(いや何度も断っているけどさ)
 この手のアルファは何度か会ったことがあるけど、ツガイのことになると、哀れなほど周りが見えなくなる。

 周りが見えていない……?

 そうか、見えていないんだ。暫くして冷静になり頭が冷えればきっと“勘違い”に気づくだろう。


「あの……一ヶ月経っても好きになれなかったら、お断りできますか?」

「……えぇ、勿論です」

「じゃぁ……とりあえず……お試しでならいいですよ」

 俺ってチョロと思いながら、八乙女は息を吐いた。その様子に彼なりに緊張していたことが伝わって来る。

「……ありがとうございます」

 おぉお……笑顔もお色気だ……。


 
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