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過去1
◇ ◇ ◇
そうだ。
嫌な思い出だから、忘れていた──
小学生の頃、海の綺麗な県に旅行に来ていた。
あれはどこの県だったか、よく覚えていない。
従兄弟同士仲良かったから、小学生の頃はよく三家族で出かけることが多かった。
俺は一人っ子なので従兄弟たちと遊ぶのが単純に好きだった。
海辺のログハウス。
裏には大きな公園もあって遊ぶところには困らない。
ロープウェイにブランコ、珍しい遊具に飽きたらいつもの遊び。
かくれんぼしよう。
従兄弟の誰かがそう言った。
いーち、にい、さーん
その声が響いている間に俺は、公園遊具は多い場所から、静かな広場へと移動した。
木陰のベンチに隠れようと回り込んだら、そこには女の子がたった一人で座っていた。
ショートカットでボーイッシュな格好をしている。人形みたいに綺麗で可愛い。
本を読んでいる。けど、つまらなさそう。
「こんにちは。一人なの?」
「……」
「かくれんぼしているんだけど、遊ばない?」
女の子はピクリともしない。
完全に無視。……可愛いけど、性格悪そう。
「ふーん」
まぁ、いいけど。とその子を通り過ぎて、木の陰に隠れようとした時だ。
その子に裾を掴まれた。
「──へ?」
へ? と言ったのは、その女の子の方。
つまらなさそうな顔が驚き顔に、それからみるみるうちに頬を紅くした。
驚き顔のまま、俺を見て、口をパクパク開け閉めしている。
「何?」
「ふぁあ、ぁ、あ、え? あっ? ごめんなさいっ! 無視して態度悪くてごめんなさい! なんて失礼なことをしてしまったんだろう! 最悪だ」
すると、女の子はベンチから立ち上がって、勢いよく頭をさげた。
さっきまでのツンとした態度とあまりに違う様子に、呆気に取られる。
「僕、八乙女 梓と言います! 近くの私立小学校に通っている6歳です。けして怪しい者ではありません! 貴方のお名前を教えてください!」
女の子なのに、僕?
それにさっきと態度が全然違う。
「三栗七生だけど……え、お前、さっきと様子が違うけど?」
「三栗七生さん! すすす……凄く可愛いですね! あ。名前だけじゃなくて目も! 眉も! 頬も! 手も! ……口も……わ、わ……ひゃぁ……可愛い。全部いいです! 素敵だと思います!」
俺を見ながら褒め出して、どんどん茹蛸になって照れだす。
その様子が小学生の俺にはとても面白く見えた。
「あはは。梓、面白い奴じゃん」
一緒に遊ぼうと手を出すと、梓は両手で掴んだ。
その瞬間、静電気がビリビリと身体に走る。
お互い、驚いてボケッと見つめる。
「え、なんだろ?」
「ふあぁ……」
「おい。大丈夫か? ほら、あっちで皆と遊ぼうぜ!」
梓の手を引っ張って、従兄弟たちの元に向かった。
従兄弟はすぐに梓を仲間に入れてくれた。
けど、かくれんぼだと言うのに、俺にべったりくっついて、鬼ごっこをすれば俺ばかり狙ってくる。しかも足が早い。
「こっちです、こっち。良い所があります」
「ちょ……梓」
「七生さん、こっちです!」
折角、輪になって遊んでいたのに、梓が俺だけ引っ張っていくんだ。
でも、お気に入りの場所は俺にしか見せたくないなんて言うから悪い気はしない。
草木が茂った道をどんどん奥へ進んでいくと、急に視界が開けた。
そうだ。
嫌な思い出だから、忘れていた──
小学生の頃、海の綺麗な県に旅行に来ていた。
あれはどこの県だったか、よく覚えていない。
従兄弟同士仲良かったから、小学生の頃はよく三家族で出かけることが多かった。
俺は一人っ子なので従兄弟たちと遊ぶのが単純に好きだった。
海辺のログハウス。
裏には大きな公園もあって遊ぶところには困らない。
ロープウェイにブランコ、珍しい遊具に飽きたらいつもの遊び。
かくれんぼしよう。
従兄弟の誰かがそう言った。
いーち、にい、さーん
その声が響いている間に俺は、公園遊具は多い場所から、静かな広場へと移動した。
木陰のベンチに隠れようと回り込んだら、そこには女の子がたった一人で座っていた。
ショートカットでボーイッシュな格好をしている。人形みたいに綺麗で可愛い。
本を読んでいる。けど、つまらなさそう。
「こんにちは。一人なの?」
「……」
「かくれんぼしているんだけど、遊ばない?」
女の子はピクリともしない。
完全に無視。……可愛いけど、性格悪そう。
「ふーん」
まぁ、いいけど。とその子を通り過ぎて、木の陰に隠れようとした時だ。
その子に裾を掴まれた。
「──へ?」
へ? と言ったのは、その女の子の方。
つまらなさそうな顔が驚き顔に、それからみるみるうちに頬を紅くした。
驚き顔のまま、俺を見て、口をパクパク開け閉めしている。
「何?」
「ふぁあ、ぁ、あ、え? あっ? ごめんなさいっ! 無視して態度悪くてごめんなさい! なんて失礼なことをしてしまったんだろう! 最悪だ」
すると、女の子はベンチから立ち上がって、勢いよく頭をさげた。
さっきまでのツンとした態度とあまりに違う様子に、呆気に取られる。
「僕、八乙女 梓と言います! 近くの私立小学校に通っている6歳です。けして怪しい者ではありません! 貴方のお名前を教えてください!」
女の子なのに、僕?
それにさっきと態度が全然違う。
「三栗七生だけど……え、お前、さっきと様子が違うけど?」
「三栗七生さん! すすす……凄く可愛いですね! あ。名前だけじゃなくて目も! 眉も! 頬も! 手も! ……口も……わ、わ……ひゃぁ……可愛い。全部いいです! 素敵だと思います!」
俺を見ながら褒め出して、どんどん茹蛸になって照れだす。
その様子が小学生の俺にはとても面白く見えた。
「あはは。梓、面白い奴じゃん」
一緒に遊ぼうと手を出すと、梓は両手で掴んだ。
その瞬間、静電気がビリビリと身体に走る。
お互い、驚いてボケッと見つめる。
「え、なんだろ?」
「ふあぁ……」
「おい。大丈夫か? ほら、あっちで皆と遊ぼうぜ!」
梓の手を引っ張って、従兄弟たちの元に向かった。
従兄弟はすぐに梓を仲間に入れてくれた。
けど、かくれんぼだと言うのに、俺にべったりくっついて、鬼ごっこをすれば俺ばかり狙ってくる。しかも足が早い。
「こっちです、こっち。良い所があります」
「ちょ……梓」
「七生さん、こっちです!」
折角、輪になって遊んでいたのに、梓が俺だけ引っ張っていくんだ。
でも、お気に入りの場所は俺にしか見せたくないなんて言うから悪い気はしない。
草木が茂った道をどんどん奥へ進んでいくと、急に視界が開けた。
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