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番外編
番外編 万能すぎるよサモン君(専攻学部入学したころ)
しおりを挟む十八歳、いよいよ漫画本篇がスタートする。
「噂通りの、お美しさだ!」
専攻学部に進学してから三日。
いっこうに周囲のざわつく声が収まらない。
前世の僕なら前髪や眼鏡で覆ったことだろう。今もその気持ちも分からなくはないけど、貴族らしく表情を崩さず、堂々といられる。だって来る日のための準備は万端だからね──うん、主にサモンが。
「右側、ひとり。左側、三人。要注意だ」
ぽそっとサモンが僕にだけ聞こえるように呟く。
何を? と左右に目だけを動かして確認すると、右に……ぎゃっ、漫画キャラが入学している! 左の三人も僕を狙うキャラたちだ!
特に一番左にいる細目の男は、最悪だ。
フランを誰もいない空き教室に呼び出して、無理矢理行為を及ぼうとするんだよね。卑怯なことに手首と机を縛りつけるんだよ。けれどシャツをはだけさせられたところで、ブラウドが助けに来てくれる……のだけど、何故かブラウドが悪ノリを始め、乳首を弄り始めるんだ。「乳首イキできたら、拘束を解いてあげる」とか言って──あれは悲惨なスケベ回だった。
ちなみにフランは、乳首がとても敏感なので執拗に弄られたら、果てることが可能なのだ……なんて怖い設定!
ぶるっと胴震いすると、サモンは僕を彼らから隠すように木陰の方へと移動した。
だけど、注目を集めてしまったようで、まだ視線がある。
「次に、斜め前方にひとり。いや、ふたり」
斜め前方? ──あ! あのふたりも漫画のキャラだ。ド助平すけべぇ野郎だ! フランにSMしようとするんだ。言っておくが、漫画本篇のフランもSMは嫌いだったぞ。
「右角に隠れている男がひとり」
……そいつも主要キャラだ。まじめでまともなキャラなんだけど、ブラウドに武術でコテンパンにやられるシーンがあったな。
それにしてもさっきから、サモンは何を?
「気を付けておく奴らだ。そこそこの家柄、フランを見る目がねちっこく嫌な予感がする。俺の魔力も嫌な予感がすると反応している」
「……へ」
魔力が反応?
年々、僕とサモンは友情を深めている。同時に過保護にも拍車がかかって──ついに、総受けキャラ感知能力にでも目覚めさせてしまった?
ぽき、ぽき……と総モテのフラグが折れていく幻聴まで聞こえてきた。
さらに──
「煩わしい視線は、すべて駆逐してやろう」
ポキン!
その言葉に完全にフラグが折れた音がし、僕は感激し、嗚咽を漏らす。我慢できずに目に涙が滲む。
「ゔ。ザモ゛ン゛く、ん……っ、あ゛り゛がどう゛……」
その返事はぽんと頭に手を置くだけ。クールだ。
何かお返ししたいけど、サモンは慎ましい性格だから見返りは求めないし。
「大好きすぎる……」
「──ふ」
ぽろっと出た言葉に、サモンが息を吐いたように笑う。
そうか、彼は求めているのは──愛情!
「好き! サモン君大好き! 超好っき!」
「……」
感謝の気持ちを込めて腕に抱きついたのに、次の瞬間には彼は冷めたようなすんとした表情になっていた。
「慎みを持て」
……サモンは難しい。
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ちー様
お読みくださりありがとうございます。短い番外編にも関わらず、ご感想頂けて本当に光栄です。
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朝倉様
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