イケメン社長に超口説かれるモブの受難

モト

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社長から甘い言葉をなくしたら

社長が後ろから抱きしめてくる。長くて筋肉質な腕。ガタイもしっかりしていてよく鍛えているのが、服越しに分かる。

チュウっと俺の首ぃ!! 吸ってんじゃん。めっちゃ吸われてる!!

「ぎゃぁ! 放してくださいっ!!」

この、酔っ払いめ~!! 
抱き着いてくる腕を剥がそうとしていると、タクシーが来た。ナイスタイミングだ。社長をタクシーの後部座席に押し込んだ。

「社長! ご住所伝えてください!!」
「……」

ゆさゆさと身体を揺さぶると、コテンと頭が重たそうに下を向いた。
で、泥酔しておる……。しかし、なぜだ、俺の服の裾を掴んでいる。

「社長……おいっ! 社長ってば!! それは策略ですか!? 俺は騙されませんよ!」
「…………」

嘘だろう。
タクシーの運転手が、まだ? という顔でこちらを見ている。


ここで残された選択肢。

持ち帰る。
見捨てる。

……も、持ち帰るしかねぇじゃねぇか~……。







「ほらっ、社長! 抱き着いてないで、しっかり歩いてくださいっ!!」

俺は社長を見捨てられず、タクシーで一人暮らしのマンションまで連れてきた。
先ほど同様に社長に肩を貸して部屋まで行こうとしているのだけど、またまた後ろから抱き着いてくるので動きづらい。

「社長、このっ、抱き着き魔っ!! 鍵出すからちょっと、もう、離せってば!!」
「……」

抱き着いてくる腕を剥がし、鞄の中から鍵を出して、部屋のドアを開ける。
散らかってはいないけれど、狭い俺の部屋。

学生時代の友達や同僚は、酔っ払ったら俺の部屋に泊めることがある。

社長をこの部屋にいれていいものか……。
一瞬、ホテルの方が良いのではと思ったが、酔っ払い客ってホテル側は嫌がるだろうし。
皆、こういう時の介抱ってどうしているのだろうか。



社長を床に降ろすと、自分から、靴を脱ぎ始めた。
こういう動作は出来るらしい。吐き気もないようだし。泥酔まではいかないようだ。靴を脱いで、ふらりと立ち上がると、俺にまた抱き着いてくる。

「もう、またっ!?」

気分は、懐いてくる大型犬が主人にじゃれついて離れないみたいな感じだ。
いくら酔っ払っているからって、こんな風に甘えるかな!?
こんな姿、会社の女子が見たら泣くぞ……いや、喜ぶか!?

「……アンタ、今すげぇ、残念なイケメンだよ? はぁ、布団貸しますからそこで寝てください」

ワンルームマンションなので、キッチンを通り過ぎれば、ベッドが置いてある部屋だ。いつも寝ている俺のベッドにヨタヨタと社長を寝かせようとする。

「どうぞ。寝てください。……はい! 腕、手、俺から離しましょうね~~!! ぐ、ぐぐっ!! 離れろって!!」
「……」

先程から、俺の身体から腕を離すのが一苦労だ。
力を込めて外そうとさらに力を込めるので、バランスを崩して、ベッドに前のめり倒れた。

「うぐっ!」
社長の下敷きになった俺は喉から潰れた声がでた。

すぐに社長が腕を立てて上体を起こした。俺は、ベッドに突っ伏したまま。彼が退くのを待っているが、俺の身体を跨いた状態から動かない。

「……んん?」

い……、今、どういう状況なんだ!? 上体を起したら、退いてくれ!!

「拓郎君だ……」
「はいぃ!!! 俺ですよ!?」
「拓郎君がベッドにいる」
「え」

視線を凄い感じる。
俺にもし、カラータイマーがあるなら『ピコンッ、ピコンッ、ピコンッ!!』って鳴り響いているだろう。え、俺、ヤバい?
チラリと目だけを上に向けると、目が合う。

「……」

おい。黙ってないで、何か言ってくれぇ!?

その顔がゆっくりと近づいて来て、首筋に吐息がかかる。酔っ払っているせいか吐息が熱い。

「ひぅっ!?!?」

ま、また、首筋に唇が……。
チュウっと吸い付いてくる。今度は強めだ。それから、首筋に何度も唇が押し付けられて吸われる。楽しいのか、さらに唇で柔らかくハムハムされてる!!

「う、あっ、やめ……」


俺の首に何があるって言うんだ! 旨くないぞ!!

「社長っ!!」


俺は、声を荒げて、乗っかかっている社長から上体を起して身を捻じる。少し彼が身を引いた時、彼の腕を引いて、ベッドに無理矢理寝かせた。酔っ払っているからそれほど力はいらなかった。

「これ以上は駄目です」
「……」

不満げに眉をひそめて、薄目で俺を見てくる……おぉい。激しい色気だな!? 普段の俺に向けるにこやかな社長じゃない。
顔が派手にいいだけあって、黙っていると、迫力に負けてしまう。

立ち上がった俺の服の裾を掴んでジッと見てるし。俺の顔、穴開く。


……ボキャブラリー満載な社長の方が、お笑い要素があっていいと思う。



「寝てください。それで、明日の朝、帰ってくださいね」


俺は立ち上がって、部屋のドアを閉めた。
ひーっと思いながら、サッと風呂に入る。風呂に入った後は、社長はスース―と寝息を立てて寝ていた。

ホッとして、彼のジャケットだけは脱がしてやる。

「たくろ……」
「!?」

また、襲ってくる!? と身構えたが、寝言だった。

「すぅすぅ」
「寝言まで、俺なの!?」
「好き……だ」
「寝言でも、告白なの!?」
「……すぅ」


ーーーー……いやはや、驚いた。
こう言っちゃなんだが、この人マヂで俺のこと好きなんだ。モブ専のナンパだと思ってた。

「どうしろっていうんだよー?」


ドッと疲れた。そうして、部屋の端っこでビーズクッションに身を沈めてタオルケットを被った。


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