イケメン社長に超口説かれるモブの受難

モト

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甘いものが食べたい……君と言う名のスイーツが。

【話が前後して投稿してしまいました。大変申し訳ありません】






俺は、実家を出た。急いで駅まで行って、電車に乗った。

実家から目的地には、一時間はかかる。電車の景色がいつもよりゆっくりに感じる。
何回か乗り継いで、目的地の駅に着いた。

以前、秘書の中島さんに教えてもらった住所。社長の住むマンション。
その高いマンション見上げた時、ハッとした。


「連絡入れるの忘れてた」

休日の昼間に突然押しかけてきて、社長はいるのだろうか。
スマホを持つと、偶然にも社長からの着信が鳴る。


「はは。ナイスタイミング……————はい。山川です。社長ですか?」
『やぁ、拓郎君、今から僕とデートに出かけないかい?』
「何かイベントありましたか?」
『……いや、今日は、君が惹かれるようなデートプランは考えてないんだ。急に会いたくなってしまって、ダメかな?』


俺は、社長のマンションのインターフォンを押した。インターフォンが応答した音がする。

「いいですよ」
『!? 拓郎君!? どうして?』

インターフォン前で動揺している社長が目に見える。思わず苦笑いすると、社長がロックを開けてくれ、とりあえず部屋にどうぞと言ってくれた。




「——驚いた。丁度この辺りに用事でもあったのかい」

部屋前で立っている社長が、嬉しそうに俺を部屋にあげてくれる。部屋に入りながら、持ってきた手土産を社長に渡し、勧められたソファに座った。

「あ、そうだ。君は珈琲が好きだったよね。今、珈琲を入れるから待ってて」
「——あ、はい」

座りながら、部屋をぐるりと見渡した。

この前は、あまりゆっくり見なかったけど、オシャレでセンスのいいインテリアばかりだ。出来る男の部屋って感じがする。
ソファのサイドに置かれているミニテーブルには、難しい雑誌が積み上げられている。
経済誌、海外経済誌、英字新聞、結婚情報誌ゼ●シィ。

「………」

なんで、ここにゼ●シィが……。

俺は、恐る恐る、上に置かれている経済誌をどけて、その下のゼ●シィの表紙を眺めた。
サブタイトル【結婚準備リアルな勧め方!】とピンクの文字がデカデカと書かれている。

誰が誰の結婚準備を始めようとしているんだろう……。

俺は、ペラッとめくる勇気も持てず、そっとまた経済誌を上に乗せた。

ふ。見なかったことにしよう……。俺は何も見ていない。


「はい。どうぞ。ブラックでいいのかな?」

社長がソファ前のテーブルに珈琲を置いてくれる。いい匂いがする珈琲だ。

「…………はい。ありがとうございます」
「ふふ」

そう言って、俺のすぐ隣に座る。この大きなソファでこんな密着することはないのに。
でも、やっぱり、ドキッとはするのだ。これが、恋かどうか、同性を好きになったことがないので分からない。
いや、やけにグイグイ引っ付いてくるな。なんだ、顔が近いっ!!

「社長!!」
「なんだい? あぁ、君がこうして自分の意思で来てくれたなんて舞い上がってしまうよ」

そう言って、益々近づいてくる。ひぃっ! このままでは話ができない!!

「あのっ! 俺の持ってきたお菓子を開けてください。……ん? 社長?」
「……そうか、そうだね。折角手土産くれたのだから、大事にしまわず、今食べようか」
「……」

どうやら、しまっておく予定だったようで、社長が苦笑いしながら立ち上がった。

社長は、立ち上がり、キッチンに置いた紙袋の中身を見てそれを手に持った。

「…………」

それを見た彼の返答がないので、俺は話し始めた。

「バトルカード入りのウエハースです。俺が小学校の時、よくこのお菓子を食べてバトルカードで遊んでいたんです」

昔と違って、パッケージもカードも新しくなっているけど、ウエハースは変わらない。サクサクした食感がとても美味しい。

社長が、せいちゃんならこのお菓子を食べているはずなんだ。

「社長は子供の時、それを食べたことがありますか?」

社長は、苦笑いして、「いや」と短く言った。

「…………そうですか。社長が、ウエハースの抽選で当たる剣のキーホルダーを持っていたので好きなのかと思いました」
「……」

社長の様子をじっと見るけど、目をそらされたままだ。

「社長は“せいちゃん”だろ?」



ウエハース、せいちゃんと一緒に食べて応募券を集めた。その思い出だから持ってくれてたんじゃないだろうか。

全然似てないけど、でも、小学生の頃だし。
第一、一目惚れにしたって、こんなに社長に求愛されるのは不自然だよ。何か過去接点があると考えるのが妥当だろう?

社長は、はぁ~と深く溜息をついた。

「——————うん」


やっぱり!? せいちゃんなの!? あの白くてマシュマロボディのせいちゃん!?

俺は、滅茶苦茶嬉しいのに、社長はガクリと頭を落とした。

……そう言えば、なんで教えてくれなかったんだろう。俺にバレたくなかったのかな。小学校の時、すげぇ仲良かったじゃん。

社長の下を向いたまま固まって動かなくなったので、ジッと彼の反応を待つ。暫くすると、フラフラと俺が座るソファの反対側に座った。まだ、項垂れている。


「——しんで……」

へ、しんで? 死んで? いや、社長……せいちゃんがそういうこと言う訳ない。真で? 信で? と頭の中で“しんで”を変換する。


「シンデレラの魔法が解けてしまった——……」


ずしーん、と沈みながら言うセリフがそれなのか。シンデレラって何故に?
悪いがこれは読み解けない。

「……社長、いえ、せいちゃんは、なんで俺に教えてくれなかったの?」

先程まで全力で嬉しそうにしていたのに、どんよりとして彼がこちらを見た。

「はは……、言えるかい? 根暗なデブが小学校の時から君が好きでしたって? それは言えないよ」
「え?」

えぇ、小学校だぞ? 小学校って言えば、母さんの買ってきた適当な服着て、ご飯とお菓子を楽しみに生きていた、そんな時だぞ!?
俺は子供の時からクラスで中心になるようなピカピカな男子ではない。見た目もモブだ。
——あの頃の俺を好き? 

「——ほら、困るだろう」
「いや、これは、困ると言うより驚いているんだよ。それに別にせいちゃんは根暗じゃないでしょ。マシュマロボディのホワホワ癒し系?」
「この際だから、白状するけど、君が柔らかいとか言って抱き着いてくる度にドキドキしていた」

何十年目の真実……。
思わず驚いて固まった俺を見て社長がまた打ちひしがれている。

「友達の思い出を汚してすまない……、君の前から姿を消すよ。シンデレラのように……」
「シンデレラの意味が分からないから」


思わず、ツッコミを入れる。
どうやら、社長は、自分がせいちゃんだと物凄く知られたくなかったようだ。

うーん。俺に格好いいと思われたかったから、太っていた過去を隠していたってことでいいのか? 太っていた過去がバレる=マイナスイメージ と言う事か。せいちゃん、太っていたことがコンプレックスだったんだな。

下を向いている彼を見る。

「小学校のせいちゃんが告白してくれても、付き合うかは分からないけど、気持ち悪いとは思わなかったよ」

友達をそんな急に気持ち悪く思ったりしない。本当に仲がいい友達だったから。

その言葉にピクッと社長の反応がある。

「俺、男に好きって気持ちが正直分からない。せいちゃんが、俺のことを好きだと気付いたり、好きだと思ってくれているのは、どういう感じなの?」
「拓郎君……君は……」


すると、社長が立ち上がって、俺の横に来た。行動が全く読めなくて、ドキッとするじゃん。

「僕は、小学生の頃、君に何も言えなくてお別れして後悔していた。伝えなくちゃダメだ、自分を変えなきゃって思っていたんだ」

するりと彼が俺の手を握ってきた。


「……む。せいちゃん……へこんでいたんじゃ?」
「魔法が解けても、あと、恋のアタック終了期間まで2週間あった」
「……」

気変わりが早いな。消えると言ったり、恋のアタックと言ったり。


「気づいたら好きだった。昔から君の傍にいると胸が痛くなるんだ。ドキドキして、君が他の人より特別に見える」

そうして、彼は俺の両手を握り真っ直ぐ見た。

「拓郎君、大人になった君にも再び恋をしている。僕とどうか長いお付き合いをして欲しい」
「…………」


返事しない俺をこれでもかと見つめてくる。
お試しとかちょっととか、そういう軽い言葉を言えない彼は、正直ズレていると思う。

でもなぁ……。

「俺も、最近、社長……、せいちゃんにドキってすることあるんだよ。これが恋かは分からないけど、こうして手を握られても嫌な感じはしない……これは恋かな?」
「っうん。恋だ。恋だね。恋だよ。間違いないよ。絶対間違いない」
「い、いや、そんな断言できな……」
「間違っていてもそのうち、恋になるし大丈夫。きっと、僕と恋が出来る。そうなれるように僕は毎日毎時間君に愛の言葉を吐き続けるよ」

毎時間、愛の言葉責め……。こえぇ。

「————……そこまできたら、洗脳だと思う」

だけど、怒涛の勢いで、俺の言葉を逃さないようにするのが、少しおかしい。

「ははっ」

思わず声をあげて笑ってしまう。
社長はそんな俺を見つめている。きっと、どう攻撃しようか作戦立てているんだ。


「…………今、無性に甘いものが食べたいんだ。君の唇を味見したい」
「…………」

いや、その台詞もどうかと思うけど、一先ず俺は、自分のこの感覚が分からないので、目を瞑ることにした。
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