有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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怒りの炎 ③

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 慣れた足並みで三匹の鼬は、路地裏を走り抜けて行く。山ならけもの道を通るが、町では絶対に人に見つからない住宅と住宅の間に張り巡らされる路地裏は、彼らだけでなく町で生活をする野良犬や野良猫などの為の道と言っても過言ではない。
 先頭を走る一郎は、振り返り次郎と三郎が遅れずついて来ているか確認した。
「次郎、三郎。もう直ぐ目的の家に着く」
「黒い車のある家だろ、兄さん」と、次郎がスピードを上げて一郎に並んだ。
「やる気満々だね。次郎兄さん」と、三郎は遅れまいと地面を蹴る短い手足に力を入れた。
 彼らが懲らしめたい人間は、四郎を傷つけた黒色の車の運転手。しかし、彼らは運転手の顔も見ていないし、車の車種も分からない。だから事故に遭った道を中心に、黒色の車が駐車されている家を手当たり次第に標的としていた。
 単純に彼らは無差別に放火している様に見えるが、人間世界の知識に乏しい妖怪達にとっては、精一杯の方法だった。
「さあ、準備は良いか」、一郎は前足を地面に付け後ろ足を浮かし、逆立ちをした。
「じゃあ、俺が先だ」と、次郎は一郎の後ろ足に自分の後ろ足を乗せ二本足で立ち上がると、両前足を天に掲げる。
「しっかりと掴んでいてね」と、三郎は自分の両前足を次郎の両前足に乗せ、逆立ちをした。
 まるで、中国雑技団が見せる芸のごとく、鼬達は格子状になった。
 三匹の鼬が妖力を込めると、体から炎が発せられる。
 メラメラと火力は強くなり、やがて火柱となった。
 一番下の一郎は、前足を軽快に動かし黒色の乗用車の横に移動する。
 車に炎が引火したことを確認すると、鼬達は分裂し火を纏ったまま宙で回転する。
 回転しながら三方から住居へ体の炎を擦り付けた。

 後部座席で寝転がる長老の耳と鼻が、ピクッと動く。何かが燃える音と匂い、それらと一緒に漂ってくる妖気を見つけた。
「正人、鼬を見つけたぞ」
 長老は後部座席から、運転席と助手席の間に飛び移ってきた。
「長老、場所は分かりますか?」
「うむ。とりあえず、この先を右に曲がるのじゃ。漂う妖気を追うぞ」

 燃え上がる住宅の2階の窓に子供の人影が見える。外では家から逃げ出した両親が、泣き叫びながら助けを求めていた。
「とにかく火を消さないと! どうしますか、正人さん」
「火を消すのは、無理そうだから中の子供の救出を優先しよう」
「早くするのじゃ、火事は此処だけじゃないぞ」
 長老の話す通り数件先でも火の手が上がっている。
「人が多すぎます、僕が行くので、正人さんはフォローをお願いします」
 隼人は龍神化し逃げ遅れた子供の救出の為、燃え盛る火の海へ飛び込んだ。龍神化していても、火と煙の充満する家の中で行動するのは難しい。火傷をしないだけで、煙を吸い込むと息苦しくなった。
「おーい、助けに来たぞ。どこに居るんだ?」
 隼人の呼びかけに誰も答えなかった。2階の部屋のドアを蹴破ると、10代前半の男の子が床に倒れ意識を意識を失っていた。
 彼を抱きかかえ家の窓から外へ飛び出そうとした時、頭の中で龍が話しかけて来た。
 “そのまま、飛び出したら外の人間が驚くぞ”
「そんな事にかまってられない。この子を助けるのが先だよ」
 “良い事を教えてやるから、実践しろ” 
「教えてくれ、何をすれば良いんだ」
 “曲がり無しにもお前は、龍の力が使えるんだ。雨を司れ”
「雨を司る?」
 “そうだ、火事は此処だけでは無い。大雨を降らして、火を全て消し去れ。大雨の降り注ぐ中なら目くらましにもなる”
「分かった、やって見る」
 隼人は子供を一旦床に下ろし、両手を天に掲げた。
「我が御名において命じる、甚雨じんうをもたらせよ」

 雲一つなかったはずの空を分厚い雲が覆うと、激しい雨が降り注ぎ始める。まるでバケツをひっくり返した様な、大きな雨粒が火を次々に打ち消していった。
 雨に紛れて子供を抱えた隼人は、窓から外へ飛び出してきた。
「お子さんは無事ですよ」
「有り難うございます。良かった、本当に良かった」
 子供を抱きしめる母親の元を離れ、隼人は正人と長老の元へ駆け寄った。
「正人さん、子供を救出しました」
「おいおい、何が起こったんだ? 突然、雨が降り始めて火を消してしまうし」
「小僧、龍の力を使ったか?」
「ええ、龍がアドバイスしてくれて。大雨で火を消せと」
「凄いな、雨を操れるのか」
「どうやら、雨だけでなく雷も操れるようです」
「使い方を間違えると、とんでも無い事になりそうだな」
「力の使い方は、慎重にしますよ」
「なら、鼬を探そうとしようか。まだ、近くに居るはずだから」
 全ての火が消えると雨は止んだ。住宅から白い煙だけが上がる。
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