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獣人族の国 1
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眠り足りないリリカは、大きな欠伸をした。
馬車の前では、タムルの娘ココとメナが一緒に行きたいと、駄々をこね両親を困らせている。
「わたしたちも一緒に行きたいの!」
困った顔をするタムルは、娘たちに留守番するようにお願いするが、娘は自分達の主張を変えようとはしない。
「リリカを送り届けたら、町で商談をしたいから駄目だ。大人しく留守番しようよ」
「いやいや、ココもメナも大人しく、いい子にするからつれてって」と、娘たちは食い下がった。
見かねたタムルの奥さんは、娘達を自分のそばに呼び寄せた。
「タムル、昨日のように危ない目には合わないと思うから、一緒に連れて行ってあげて。この子たちがいない間に、出来なかった家事もしたいし」
奥さんに頼まれると断れないのかタムルは、「仕方がない。商談中、大人しくすると約束できるか?」
「やったー、約束する」、ココとメナは喜びの声を上げ母親に抱き着いた。
照れくさそうにするタムルは、リリカの方を見た。
森の中を進む馬車の中で、リリカと双子の娘が村で流行っている言葉遊びやおしゃべりを楽しんでいた。
荷台からはキャッキャと、女の子達の笑い声が聞こえる。
御者を務めるタムルは、このまま何事も無く城下町まで平穏であって欲しいと願っていた。昨日クマに襲われた件も気になるが、悪い事は良く立て続けに起こるものだから。
森の中の小さな湖のほとりで、昼休憩をとるために馬車を止めた。
荷台の中から敷きものや昼食の入ったバスケットをせっせとタムルの娘達が運び出してくれた。タムルの奥さんが用意してくれたサンドイッチは、新鮮な野菜とチーズとハムが挟まれとても美味しく絶品だ。
ピクニックをするように穏やかな時間を過ごた後は、順調に獣人の国へと馬車を走らせた。
森を抜けると視界が広がり、目の前に広大な麦畑が現れた。
太陽に照らされる穂は、黄金色に輝きながら風に揺られる。
所々に小麦を引くための風車小屋があり、大きな風車がグルグルと回っている。その奥には、高い塀に守られるお城が見えてきた。
「うわー! あのお城がマラガですよね?」
「そうだ、あれが獣人の国マラガ王国だよ」
「もう直ぐ着きますね」、リリカは初めて見る城と街にワクワクしていた。
城がはっきりと見える距離まで近づくと、大勢の人が城門前に並んでいた。更に城門から北の方へ眼をやると、馬車を引く人や荷物を抱える人など大勢の人が、行列を作って城を目指していた。
「いつもこんなに大勢の人が、訪れるの?」
「いやー。こんなに人が並んでいるのを見るのは、初めてだよ」
昨日の噂話を思い出した二人は、嫌な予感が頭を過った。
「何かあったのかも知れない。急ごう」
タムルは馬に鞭を入れ手綱をしっかりと握りしめた。スピードを上げた馬車は、揺れが激しくなる。荷台の中に居た子供達は、飛ばされないようにリリカの腕にしがみついた。
城門から北へ伸びる道と東からの道が交差する場所で、馬車は止まった。
タムルは列に並んでいた獣人達に、何が起こっているのか状況を聞く。
「北の方で何かあったのか?」
列に並ぶ獣人の一人が答えた、「帝国軍が、北の国境を超えて来た」
「帝国軍だと! 噂は本当だったのか」
「それはそれは、今まで見たこともない大群だったよ。国境で戦闘が始まったと思ったら、あっけなく突破されてしまった」
並んでいた他の獣人が、抑えきれず焦る気持ちを口に出した、「早く城内に入れてもらわないと、奴らがすぐに来てしまう」
獣人達の騒ぎ声は、荷台に居たリリカの耳にも入り不安になる。
「恐れていたことが始まっているのね。噂話は、本当の事だった!」
心配していた通り帝国の侵略は、無情にも現実に起こっていたのだ。しかも軍隊は、直ぐそこまで迫ってきている。最悪な状況になりつつあった。
「リリカ、俺たちも早く城内に入ろう」
頷いたリリカは、双子の娘をしっかりと抱き寄せた。
「ココちゃん、メナちゃん、馬車から出ちゃ駄目だよ」
荷台から外に出たリリカは、北の方角に目を凝らした。
小高い丘の上に軍勢らしき影が現れ始めたのに気が付く。
人間より視力の良い獣人達は、丘の上で隊列を組む帝国軍が大砲を準備しているのが見えたので、恐怖で混乱し始めた。
「もう駄目だ、帝国軍が来た! 大砲を撃ち込んで来るぞ」
「ああ、助けて、早く城内に入れて・・・」
「こんな時にマラガの兵士は、何をしているんだ? 誰も助けてくれないのか」
「どこに逃げれば良い? 早く、早く城内に!」
城門へと続く列は、次第に乱れていく。長い列の至る所で、騒ぎが起きていた。このままだと我先に城内に入ろうとする群衆で、身動きが取れなくなってしまう。
どうしようかとタムルが迷っている内に、帝国軍の砲撃隊の準備は整った。後は、上官の砲撃命令を待つだけだ。
「ああ、早くしないと砲撃が始まってしまう」
「本気でこの国を侵略するつもりだな」
タムルがそう呟くと、手旗信号を送る兵士が旗を振った。
順番に大砲から炎が上がり、ドン、ドン、ドンと、大きな音が響いて来る。
「砲弾が来るぞ! リリカ、危ないから地面に伏せろ」
丘の上から放たれた砲弾は、リリカの近くで落ちて大地を抉り弾けた。
「キャー・・・」と、後ろから叫び声が聞こえた。
リリカが振り向くと大勢の獣人達が、地面に倒れて動かない。
飛び散った金属の破片や石などを受けた人が、血を流し倒れている光景を目の当たりにした。
帝国軍からの砲撃は絶え間なく続き、逃げ惑う獣人達に浴びせられる。
砲弾の雨が降り注ぐ中、着弾する爆発音でリリカの耳は、次第に聞こえ難くなった。彼女は、段々と音が遠く離れて行くのを感じていた。
「逃げろ、リリカ!」、タムルの叫び声はリリカの耳には届かなかった。
間に合わない、直撃してしまう。
とっさにタムルは、彼女をかばうために後ろから覆いかぶさった。爆発と共に砂煙が上がり、バラバラとタムルの体に砂がかる。
地面に倒れ込んだタムルに、リリカは何が起こったのか、分からなかった。
戦場で冷静に判断できる人間など、そうは居ない。ましてや大人でもパニックになる状況で、冷静を保つなど酷な事だ。
「タムルさん、大丈夫ですか?」と、リリカは彼の体を揺すった。
ゴロリと仰向けになった彼は、心配するなと唇を動かしたが、リリカに彼の声は聞こえなかった。
額から血を流すタムルの姿に、リリカの体から血の気が引いて行く。
馬車の前では、タムルの娘ココとメナが一緒に行きたいと、駄々をこね両親を困らせている。
「わたしたちも一緒に行きたいの!」
困った顔をするタムルは、娘たちに留守番するようにお願いするが、娘は自分達の主張を変えようとはしない。
「リリカを送り届けたら、町で商談をしたいから駄目だ。大人しく留守番しようよ」
「いやいや、ココもメナも大人しく、いい子にするからつれてって」と、娘たちは食い下がった。
見かねたタムルの奥さんは、娘達を自分のそばに呼び寄せた。
「タムル、昨日のように危ない目には合わないと思うから、一緒に連れて行ってあげて。この子たちがいない間に、出来なかった家事もしたいし」
奥さんに頼まれると断れないのかタムルは、「仕方がない。商談中、大人しくすると約束できるか?」
「やったー、約束する」、ココとメナは喜びの声を上げ母親に抱き着いた。
照れくさそうにするタムルは、リリカの方を見た。
森の中を進む馬車の中で、リリカと双子の娘が村で流行っている言葉遊びやおしゃべりを楽しんでいた。
荷台からはキャッキャと、女の子達の笑い声が聞こえる。
御者を務めるタムルは、このまま何事も無く城下町まで平穏であって欲しいと願っていた。昨日クマに襲われた件も気になるが、悪い事は良く立て続けに起こるものだから。
森の中の小さな湖のほとりで、昼休憩をとるために馬車を止めた。
荷台の中から敷きものや昼食の入ったバスケットをせっせとタムルの娘達が運び出してくれた。タムルの奥さんが用意してくれたサンドイッチは、新鮮な野菜とチーズとハムが挟まれとても美味しく絶品だ。
ピクニックをするように穏やかな時間を過ごた後は、順調に獣人の国へと馬車を走らせた。
森を抜けると視界が広がり、目の前に広大な麦畑が現れた。
太陽に照らされる穂は、黄金色に輝きながら風に揺られる。
所々に小麦を引くための風車小屋があり、大きな風車がグルグルと回っている。その奥には、高い塀に守られるお城が見えてきた。
「うわー! あのお城がマラガですよね?」
「そうだ、あれが獣人の国マラガ王国だよ」
「もう直ぐ着きますね」、リリカは初めて見る城と街にワクワクしていた。
城がはっきりと見える距離まで近づくと、大勢の人が城門前に並んでいた。更に城門から北の方へ眼をやると、馬車を引く人や荷物を抱える人など大勢の人が、行列を作って城を目指していた。
「いつもこんなに大勢の人が、訪れるの?」
「いやー。こんなに人が並んでいるのを見るのは、初めてだよ」
昨日の噂話を思い出した二人は、嫌な予感が頭を過った。
「何かあったのかも知れない。急ごう」
タムルは馬に鞭を入れ手綱をしっかりと握りしめた。スピードを上げた馬車は、揺れが激しくなる。荷台の中に居た子供達は、飛ばされないようにリリカの腕にしがみついた。
城門から北へ伸びる道と東からの道が交差する場所で、馬車は止まった。
タムルは列に並んでいた獣人達に、何が起こっているのか状況を聞く。
「北の方で何かあったのか?」
列に並ぶ獣人の一人が答えた、「帝国軍が、北の国境を超えて来た」
「帝国軍だと! 噂は本当だったのか」
「それはそれは、今まで見たこともない大群だったよ。国境で戦闘が始まったと思ったら、あっけなく突破されてしまった」
並んでいた他の獣人が、抑えきれず焦る気持ちを口に出した、「早く城内に入れてもらわないと、奴らがすぐに来てしまう」
獣人達の騒ぎ声は、荷台に居たリリカの耳にも入り不安になる。
「恐れていたことが始まっているのね。噂話は、本当の事だった!」
心配していた通り帝国の侵略は、無情にも現実に起こっていたのだ。しかも軍隊は、直ぐそこまで迫ってきている。最悪な状況になりつつあった。
「リリカ、俺たちも早く城内に入ろう」
頷いたリリカは、双子の娘をしっかりと抱き寄せた。
「ココちゃん、メナちゃん、馬車から出ちゃ駄目だよ」
荷台から外に出たリリカは、北の方角に目を凝らした。
小高い丘の上に軍勢らしき影が現れ始めたのに気が付く。
人間より視力の良い獣人達は、丘の上で隊列を組む帝国軍が大砲を準備しているのが見えたので、恐怖で混乱し始めた。
「もう駄目だ、帝国軍が来た! 大砲を撃ち込んで来るぞ」
「ああ、助けて、早く城内に入れて・・・」
「こんな時にマラガの兵士は、何をしているんだ? 誰も助けてくれないのか」
「どこに逃げれば良い? 早く、早く城内に!」
城門へと続く列は、次第に乱れていく。長い列の至る所で、騒ぎが起きていた。このままだと我先に城内に入ろうとする群衆で、身動きが取れなくなってしまう。
どうしようかとタムルが迷っている内に、帝国軍の砲撃隊の準備は整った。後は、上官の砲撃命令を待つだけだ。
「ああ、早くしないと砲撃が始まってしまう」
「本気でこの国を侵略するつもりだな」
タムルがそう呟くと、手旗信号を送る兵士が旗を振った。
順番に大砲から炎が上がり、ドン、ドン、ドンと、大きな音が響いて来る。
「砲弾が来るぞ! リリカ、危ないから地面に伏せろ」
丘の上から放たれた砲弾は、リリカの近くで落ちて大地を抉り弾けた。
「キャー・・・」と、後ろから叫び声が聞こえた。
リリカが振り向くと大勢の獣人達が、地面に倒れて動かない。
飛び散った金属の破片や石などを受けた人が、血を流し倒れている光景を目の当たりにした。
帝国軍からの砲撃は絶え間なく続き、逃げ惑う獣人達に浴びせられる。
砲弾の雨が降り注ぐ中、着弾する爆発音でリリカの耳は、次第に聞こえ難くなった。彼女は、段々と音が遠く離れて行くのを感じていた。
「逃げろ、リリカ!」、タムルの叫び声はリリカの耳には届かなかった。
間に合わない、直撃してしまう。
とっさにタムルは、彼女をかばうために後ろから覆いかぶさった。爆発と共に砂煙が上がり、バラバラとタムルの体に砂がかる。
地面に倒れ込んだタムルに、リリカは何が起こったのか、分からなかった。
戦場で冷静に判断できる人間など、そうは居ない。ましてや大人でもパニックになる状況で、冷静を保つなど酷な事だ。
「タムルさん、大丈夫ですか?」と、リリカは彼の体を揺すった。
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