ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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奇襲作戦 1

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やはり狼での移動は、心地よかった。まるでゆりかごの中に居る様にさえ思える。あまりの気持ち良さに、リリカは何度も春馬にもたれかかり、うたた寝していた。

マラガ王国を出発して3日目、やっと川に辿り着いた。

川沿いを北へ進み、翌日静寂の森の入り口に辿り着く。

森の中は日中だと言うのに、木々がひしめき合い薄暗い。彼らが中へ足を踏み入れると、空気が一変しヒンヤリと冷たくなった。

静寂の森に入ると、直ぐにエルフの使者が現れて目的を尋ねて来ると聞いていたのに。誰も現れないので、ヴェルガを先頭に狼の背から下りた彼等は歩き出した。

1時間ほど森の中を進むと、前方から馬に乗ったエルフがやって来る。

白いローブを纏うエルフは、長い金髪を後ろで束ね、男性とも女性とも取れる中性的な顔立ちをしている。同じ種族でなければ、男女の区別が難しい。

「ここは、エルフ族の国です。あなた達は、何をしに来られたのか?」

足を止め跪いたヴェルガは、「私の名は、ヴェルガと申します。マラガ王国の使者として参りました。我が国の書簡をエルフの長にお渡ししたい」

「分かりましたが、まずは、確認が必要です。会えるか会えないかは、保証しかねますが、ご同行願います」

現れたエルフは一人、ヴェルガ達は間隔をあまり開けず、エルフの後をついて行く。しきりに獣人の耳が、動いていた。彼等は、頭上から聞こえる葉音に警戒していたのだった。

「春馬殿、使者を守るために木の上で弓を持ったエルフたちが、一緒に移動しています。何もしなければ、攻撃してきませんのでご安心を」

「ああ、分かっている」

春馬も囲まれているのに気が付いていた。

殺気ともいえる気配が、頭上から漂っているのをしっかり感じ取っていた。敵か味方か分からないのに、使者が一人でのこのこと、やって来る訳が無い。

エルフの使者は、道なき道を進み渓谷へ入って行く。

切り立った岩山から、滝が流れ落ちるのが見える。緑豊かな木々に遮られ滝壺は見えなかったが、下から水煙が上がっていた。

先導するエルフは滝の左側を指さし、あれがエルフの城だと伝える。

岩山を背に神殿に似た城が建つ。地の利を生かした要塞は、簡単に攻め落とせそうにない。

黙々と歩く春馬とリリカは、いつ町に入ったのか気づかなかった。いつの間にか、自然に溶け込むエルフの住居や建物が並んでいた。

「なんだ、ここは、トリックアートみたいだな」

何処から森で何処から町なのか、岩や木々と一体化したような住居、更にはその一体感が不思議な光景を演出していた。

途中から道は整備された石畳となり、色の付いた石で幾何学模様を作っていた。これだけ立派な町が森の中に在ること自体不自然なのだが、住んでいるはずのエルフ達の姿は無い。ここまで、全く誰とも出会わなかった。

「あのー、この町には誰も住んでいないんですか?」

素直なリリカが、誰も聞かなった質問をエルフの使者にぶつけた。

「ははは、エルフの民が住んでいますよ。今は、みんな警戒しているのですよ」

万が一に備え、エルフの女子供は家の中で身を潜めていたのだ。

切り立った岩々をつなぐ石橋を渡ると、蔦に覆われた建物が並ぶ。

異世界から来た春馬だけが珍しがっていると思いきや、リリカもヴェルガ達も辺りをキョロキョロと見ていた。全員が、初めて見る光景に驚いていた。

「荘厳な景観だな」と、思わず春馬の口から出た言葉。

「私も初めて来ましたが、圧巻ですね」と、ヴェルガは答えた。

「すごいですね。エルフ達は、本当に自然と共存してたのね」

興奮気味のリリカは、夢中になって話し始めた。

「ああ、折角だからエルフ族の使う光と闇の魔法も見たいな」

「光と闇の魔法? リリカの魔法とは異なるのか」

「人間の魔法とエルフの魔法は違うの」

光と闇だけでは、エルフ族がどんな魔法を使うのか見当がつかなかったが、面白そうに感じた春馬も興味が沸く。

遠くからだと分からなかったが、レリーフのあしらわれた壁が見事な城だった。

重厚な扉の前にエルフの使者が立つと、自動的に扉が開いた。

「さあ、こちらへ」と、城の中へ訪問者達は招き入れられた。

大理石で作られた真っ白な大広間に案内され、ここで待つようにと言い残してエルフの使者は奥へと姿を消した。

広間の天井には、光り輝く白いローブを着たエルフと杖をかざす黒いローブを着たエルフが描かれている。それは、エルフ族の歴史の一部を表現した絵画だった。

全員、愕然と天井の絵を眺めていた。

暫くすると、大広間に戻って来た使者に、全員奥へ来るように促された。

奥の間に案内されると、エルフ族の長のみが着用を許される鮮やかなエメラルドグリーンのローブを着たビュグベルが、訪問者達を迎え入れた。

長と聞けば初老の男性をイメージするが、彼は老人には見えない。

額や目じりのしわが少し目立つぐらいで、四十代後半の男性の様に思える。白髪の彼は、同じ色の髭を触っていた。

「ようこそ、アルフヘイムへ。私はビュグベル、長をしています」

ヴェルガはビュグベルの方へ歩み寄り、「ヴェルガと申します。マラガからの使者として、書簡をお持ちしました」と、携えていた書簡を手渡した。

受け取った書簡は、巻物になっていた。

閉じ紐の解かれた書簡を広げるビュグベルは、目を細めながら読む。

「ふむふむ、なるほど。帝国が、マラガに侵攻したのは、本当でしたか」

「はい、現在は、帝国軍と国境付近で睨み合が続いています」

「状況は、理解しました。残念ですが、長きに渡り交流を止めていたマラガ王国に対して、今すぐ協力する事は出来ません」

ビュグベルの否定的な言葉に、やはり無理かとヴェルガは頭をうなだれた。しかし、リリカは納得していなかった。

「どうして、どうしてですか?」

「すまないが、エルフ族とは関わりのない争いだと判断した。帝国の非道は承知しているが、これはマラガの問題であって、我々の問題ではない」

どうやって説得すれば良いのか分からないリリカは、おずおずと退いた。

エルフ族の長として、何の利益もない争いに首を突っ込み、自国を危険に晒すことなどするはずが無い。リリカは、国を守る重みを理解していなかった。
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