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平原の遊牧民族 1
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ラルナカを出発して直ぐリリカは、年老いた行商人と出会った。
ベシニーロウカ平原にある村に向かうと聞いたので、交渉の末に少額のお金で荷馬車に乗せてもらったのだ。
御者をする老人の隣に座り、春馬に貰った飴玉を一つ袋から取り出し、口に入れて彼女は鼻歌を歌っていた。
「何だね、それは。何を食べてるんだい?」
「ムフフ、飴玉ですよ」
「そうか、アメダマかね。初めて聞くな」
「穀物などのデンプンと砂糖を混ぜて作ったお菓子だそうです。これは、友人から貰ったの。よかったらおひとつどうぞ、甘くておいしいですよ」
袋から青色の飴玉を一つ取り出し、老人に渡した。
「これは・・・、甘くて美味しい。それに、なんだこの不思議な感覚。口の中が冷たく感じる」
どうやらメンソール味を渡したみたいだった。
「作り方を知ってるのなら、教えて欲しいな」
「ごめんなさい、どうやって作るか知らないの」
「そうか、残念。村で作れば、良い商売になると思ったのに」
そんな簡単に上手い話は転がっていないかと、行商人なら承知の上での質問だったので、彼は声を出して笑っていた。
次に目指すのは、ベシニーロウカ平原とテラダモルテ砂漠だ。
初めて訪れる場所の情報が乏しいと、不安な気持ちになるのは誰でも同じ事。
当然リリカも出来るだけ平原や砂漠の生の情報が欲しいと思う。
「あのですね、平原はどんな所ですか。危険な所ですか?」
「ベシニーロウカ平原か、あそこは、良い所だな。何も無いけどね」
「何も無いんですか、それなら安全な場所ですよね」
「盗賊も居ないし、安全だよ。平原で生活しているのは、綺麗な民族衣装を纏う遊牧民だけだ。もしかしたら、彼等と出会えるかも知れないね」
ベシニーロウカ平原は、背の引くい草だけが広がる何もない世界だ。旅をする上で、危険の少ない場所と聞けたリリカは安心する。
「じゃあ、テラダモルテ砂漠は。砂漠の中に村とかあるんですか?」
「砂漠の手前にしか村は無いね。砂漠の中に在った村は、たしか今は廃村になったと聞いてる。それに、ホックと言う鋭い角を持つ肉食獣や巨大サソリなどの動物がいるから危険な所だよ。もし、遭遇したら直ぐに逃げるんだよ」
テラダモルテ砂漠は、標高が高く南側の山脈から吹く風の影響を受ける乾燥地帯で、危険の多い場所なのだ。
夏は暑く冬は雪が降るほど寒くなる。それと、季節に関係無く砂漠地帯特有の日中と夜との寒暖差が激しくなる場所でもあった。
野宿するならそれなりの準備をしておかないと、危険な目に会うのは間違いない。厳しい自然環境と人を襲う動物が生息しているのだから。
「やっぱり、砂漠は危険なのね。うーん、大丈夫かな」
「砂漠に入る前に、村でしっかりと準備するんだな」
「はい、有り難うございます」
必要な情報を得ることが出来たので、村までのんびり老人と楽しくおしゃべりをしながら馬車に揺られた。
平原の村で行商と別れたリリカは、一人で黙々と先を急いだ。
風が強くなり前方から黒い雲が流れてくる。怪しげな雲の流れは、悪天候に変化する前兆だった。
雲で太陽が覆われたので、リュックからポンチョを出し、いつ雨が降っても良いように備える。
このポンチョは、耐水性と耐久力を高めるために珍しい植物の樹脂を練り込んだ糸で作られている。通気性も良く旅人愛用の品だ。必ず役に立つからと、エメリンから勧められて購入した物だった。
「雨が降ってきた」、鼻先に雨粒が落ちてきた。
周りには、雨をしのげる場所が無い平原だ。歩いているうちに雨は止むと考えたリリカは、濡れるのを気にせず先を急いだ。
しかし、この考えが甘かった。
雨と風は強くなる一方で天候は良くならない、一向に止む気配がしなかった。気が付けば、まる一日悪天候の中を歩いていた。
これ以上進むと危険だと察したリリカは、魔法でドーム型の造形物を土で作り、そこで休むことにした。
入り口にしたたり落ちる雨粒を見ながら、体を縮こませる。雨風に身体をさらし続けた結果、すっかり体温も下がってしまい寒い。
魔法で火を出すものの薪の代わりに燃やせるような物が無かったので、じっと夜が明けるのを我慢するしかなかった。
「寒いな、服も乾かないしどうしよ」、かじかむ手に息を吹きかけ寒さを耐えた。
昨晩の天候が嘘だったかの様に、濡れた平原が朝日に照らされた。
馬で羊に似た動物ヤーの群れを追いかける黒髪ポニーテールの少女は、道端で倒れるリリカを見つけた。近づいて来た少女は、青色のフエルト地を縫い合わせた襟や袖口が赤い民族衣装を着る遊牧民だった。
「誰かしら? 旅人、違う。女の子が倒れてる」
明け方雨が止んだのを機に、無理して出発しようとしたリリカが倒れていたのだ。冷え切った体の彼女は、息遣いが荒くなっていた。
「しょうがないな。連れて帰るか」、リリカを馬に乗せ引き返していった。
円形の天井の中央に穴が開いたテントの中で、ぬれた服を着替えさせられたリリカは眠っていた。
中は温かく絨毯が敷かれるテントの中央には、石で囲んだ暖炉があり鍋で食料を煮ている。薪の代わりに使われているのは、家畜の糞だった。
目を覚ましたリリカは、目の前で自分を覗き込む同世代ぐらいの少女に気が付き驚いた。
「あなた、誰? ここは・・・」、体が熱く動くのが辛い。
「私は、サリ。遊牧民のサーミ族よ。道で倒れていたから、ここに連れて来たの」
「えーと、朝からカイセラに向かって歩いていたのは覚えているけど、倒れていたの。じゃあ、あなたは、私を助けてくれたのね、サリ」
「そうよ! 熱があるから、ここで休んでなさい」
いつもと違う肌触りと匂い、サリと同じ民族衣装を着ていた。
「あれ、私の服は?」
「濡れてたから乾かしてるの。今着ているのは、私の服だからね」
ボーとする頭で見ても、可愛いくて温かい服だと分かる。
「服まで貸してくれて、ありがとう」
この状況が後で春馬にばれると、絶対に怒られる。
そう思ったので、直ぐに彼を呼び出すことにした。ネックレスを握りしめると、光の中から春馬が現れた。
ベシニーロウカ平原にある村に向かうと聞いたので、交渉の末に少額のお金で荷馬車に乗せてもらったのだ。
御者をする老人の隣に座り、春馬に貰った飴玉を一つ袋から取り出し、口に入れて彼女は鼻歌を歌っていた。
「何だね、それは。何を食べてるんだい?」
「ムフフ、飴玉ですよ」
「そうか、アメダマかね。初めて聞くな」
「穀物などのデンプンと砂糖を混ぜて作ったお菓子だそうです。これは、友人から貰ったの。よかったらおひとつどうぞ、甘くておいしいですよ」
袋から青色の飴玉を一つ取り出し、老人に渡した。
「これは・・・、甘くて美味しい。それに、なんだこの不思議な感覚。口の中が冷たく感じる」
どうやらメンソール味を渡したみたいだった。
「作り方を知ってるのなら、教えて欲しいな」
「ごめんなさい、どうやって作るか知らないの」
「そうか、残念。村で作れば、良い商売になると思ったのに」
そんな簡単に上手い話は転がっていないかと、行商人なら承知の上での質問だったので、彼は声を出して笑っていた。
次に目指すのは、ベシニーロウカ平原とテラダモルテ砂漠だ。
初めて訪れる場所の情報が乏しいと、不安な気持ちになるのは誰でも同じ事。
当然リリカも出来るだけ平原や砂漠の生の情報が欲しいと思う。
「あのですね、平原はどんな所ですか。危険な所ですか?」
「ベシニーロウカ平原か、あそこは、良い所だな。何も無いけどね」
「何も無いんですか、それなら安全な場所ですよね」
「盗賊も居ないし、安全だよ。平原で生活しているのは、綺麗な民族衣装を纏う遊牧民だけだ。もしかしたら、彼等と出会えるかも知れないね」
ベシニーロウカ平原は、背の引くい草だけが広がる何もない世界だ。旅をする上で、危険の少ない場所と聞けたリリカは安心する。
「じゃあ、テラダモルテ砂漠は。砂漠の中に村とかあるんですか?」
「砂漠の手前にしか村は無いね。砂漠の中に在った村は、たしか今は廃村になったと聞いてる。それに、ホックと言う鋭い角を持つ肉食獣や巨大サソリなどの動物がいるから危険な所だよ。もし、遭遇したら直ぐに逃げるんだよ」
テラダモルテ砂漠は、標高が高く南側の山脈から吹く風の影響を受ける乾燥地帯で、危険の多い場所なのだ。
夏は暑く冬は雪が降るほど寒くなる。それと、季節に関係無く砂漠地帯特有の日中と夜との寒暖差が激しくなる場所でもあった。
野宿するならそれなりの準備をしておかないと、危険な目に会うのは間違いない。厳しい自然環境と人を襲う動物が生息しているのだから。
「やっぱり、砂漠は危険なのね。うーん、大丈夫かな」
「砂漠に入る前に、村でしっかりと準備するんだな」
「はい、有り難うございます」
必要な情報を得ることが出来たので、村までのんびり老人と楽しくおしゃべりをしながら馬車に揺られた。
平原の村で行商と別れたリリカは、一人で黙々と先を急いだ。
風が強くなり前方から黒い雲が流れてくる。怪しげな雲の流れは、悪天候に変化する前兆だった。
雲で太陽が覆われたので、リュックからポンチョを出し、いつ雨が降っても良いように備える。
このポンチョは、耐水性と耐久力を高めるために珍しい植物の樹脂を練り込んだ糸で作られている。通気性も良く旅人愛用の品だ。必ず役に立つからと、エメリンから勧められて購入した物だった。
「雨が降ってきた」、鼻先に雨粒が落ちてきた。
周りには、雨をしのげる場所が無い平原だ。歩いているうちに雨は止むと考えたリリカは、濡れるのを気にせず先を急いだ。
しかし、この考えが甘かった。
雨と風は強くなる一方で天候は良くならない、一向に止む気配がしなかった。気が付けば、まる一日悪天候の中を歩いていた。
これ以上進むと危険だと察したリリカは、魔法でドーム型の造形物を土で作り、そこで休むことにした。
入り口にしたたり落ちる雨粒を見ながら、体を縮こませる。雨風に身体をさらし続けた結果、すっかり体温も下がってしまい寒い。
魔法で火を出すものの薪の代わりに燃やせるような物が無かったので、じっと夜が明けるのを我慢するしかなかった。
「寒いな、服も乾かないしどうしよ」、かじかむ手に息を吹きかけ寒さを耐えた。
昨晩の天候が嘘だったかの様に、濡れた平原が朝日に照らされた。
馬で羊に似た動物ヤーの群れを追いかける黒髪ポニーテールの少女は、道端で倒れるリリカを見つけた。近づいて来た少女は、青色のフエルト地を縫い合わせた襟や袖口が赤い民族衣装を着る遊牧民だった。
「誰かしら? 旅人、違う。女の子が倒れてる」
明け方雨が止んだのを機に、無理して出発しようとしたリリカが倒れていたのだ。冷え切った体の彼女は、息遣いが荒くなっていた。
「しょうがないな。連れて帰るか」、リリカを馬に乗せ引き返していった。
円形の天井の中央に穴が開いたテントの中で、ぬれた服を着替えさせられたリリカは眠っていた。
中は温かく絨毯が敷かれるテントの中央には、石で囲んだ暖炉があり鍋で食料を煮ている。薪の代わりに使われているのは、家畜の糞だった。
目を覚ましたリリカは、目の前で自分を覗き込む同世代ぐらいの少女に気が付き驚いた。
「あなた、誰? ここは・・・」、体が熱く動くのが辛い。
「私は、サリ。遊牧民のサーミ族よ。道で倒れていたから、ここに連れて来たの」
「えーと、朝からカイセラに向かって歩いていたのは覚えているけど、倒れていたの。じゃあ、あなたは、私を助けてくれたのね、サリ」
「そうよ! 熱があるから、ここで休んでなさい」
いつもと違う肌触りと匂い、サリと同じ民族衣装を着ていた。
「あれ、私の服は?」
「濡れてたから乾かしてるの。今着ているのは、私の服だからね」
ボーとする頭で見ても、可愛いくて温かい服だと分かる。
「服まで貸してくれて、ありがとう」
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