ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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平原の遊牧民族 2

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いきなり魔法陣が現れ、光の中から人が出て来たので、驚いたサリは口を開けたまま暫く呆けていた。

「何、なんで。人が出て来るのよ」

立ったまま腕を組み考える春馬は、白衣を着ていた。研究室で実験をしている最中だったのだ。

驚く少女に関心は無く、苦しそうに咳き込み寝ているリリカの傍でしゃがんだ。

「何があった? 苦しそうだが、大丈夫なのか」

「道で倒れていたところをサリに助けてもらったの」

「倒れていた? 顔が赤いけど、熱があるんじゃないのか」

「多分、昨日、雨の中を歩き続けてたから」、怒られると思い首をすくめた。

「しょうがないな。熱が下がるまで、無理するな」

「ゴホ、ゴホ・・・、頭がボーとして身体が熱いよ」

リリカの額に手を当てた春馬は、彼女の体温を確認する。

「うーん、かなり熱いな」と、剣とバッグを出しバッグだけ取ると剣は消えた。

今度は、光の中から剣とバッグが現れた。サリは、言葉を失い口をパクパクさせていた。

「あ、あなた、何者? いきなり光の中から出来てきて、今、剣とカバンを出したわよね」

「俺は、春馬だ。リリカのパートナーをしている」

「この娘は、リリカて言うのね。それで、あなたは、ハ・ル・マ?」

「そうだ、俺の名前は春馬だ」

「パートナーて何? あなた達、何者なの」

カバンから薬を取り出した春馬は、箱に書かれている注意書きを読む。

「旅をしている。俺は、旅をするリリカを助ける役割だ」と、箱から錠剤を取り出した。

「旅人なのは分かったけど。助ける、パートナーて何よ?」

「知らないのか。それより、水をもらえないか?」

春馬の話がいまいち理解できないまま立ち上がったサリは、部屋の隅にある水がめからコップに水を注いだ。

コップを受け取った春馬は、リリカをそっと起こして薬を飲ませる。

「ゆっくり休めば、時期に熱も下がるよ」

怒られると思っていたのに。春馬の献身的な態度に、リリカはほっとした。

「うん・・・」と、リリカは目を閉じた。

リリカを寝かしつけ振り向いた春馬は、改めてサリに話しかけた。

「リリカを助けてくれて、ありがとう」

「倒れている人を助けるのは、当たり前よ。まあ、彼女が良くなるまで、ここに居たら良いわ」と、何故かサリは怒った口調になった。

「それまで、何か手伝えることがあるなら、遠慮なく言ってくれ」

「そうね、火にくべる糞がいるから、外から取ってきて」

「糞?」

「そう、薪の代わりに乾燥させた家畜の糞を使うの。外で乾かしているから直ぐに分かるわ」

テントから外に出ると、体長3メートルを超える黒い狼が寝ていた。

「うわ、・・・狼か?」と、咄嗟に身構えて剣を出しそうになった。

驚く春馬の声が聞こえたので、サリが外に出て来た。

「私たちが飼ってるグレートウルフのボルサよ」

「マラガでこいつより大きな白いグレートウルフを見が、同じ種類か?」

「マラガなら軍用のグレートウルフね。軍用は、人を乗せる必要があるから、この子より大きい種類みたいよ」

「此処では、みんなグレートウルフを飼っているのか?」

「グレートウルフは希少種だから、飼っている人はほとんど居ないわよ。この子は、小さいときに親とはぐれてね。平原を彷徨っていたところを私が拾ったの。私たちと家畜を守ってくれる良い子よ」

サリは寝ているボルサの身体に抱き付いた。

テントから離れた場所で、家畜の糞を乾燥させていた。限られた資源を有効活用し、生活するための知恵だ。

サリとやり取りしている間に、夕方になってしまった。日が傾くと、彼女の父親と兄が放牧から戻ってきた。

「おや、サリ、お客さんかい」

「ええ、今朝助けた女の子のお連れさんよ」

「初めまして、春馬と言います。リリカを助けていただき、感謝しています」

「そうか、私はサリの父でカーシネンです。これは、サリの兄でハーネン。私達は、見ての通りベシニーロウカ平原で生活する遊牧民です」

カーシネンもハーネンもサリと同じ黒髪で、民族衣装を着ていた。

人間族の男にしては、二人とも小柄で160センチに満たない身長だった。この世界の遊牧民は、男女ともに背の低い者が多い。

カーシネンに促されてテントの中に入ると、何故かサリは春馬の隣に座っていた。満面の笑みで身体を摺り寄せてくる。

「私が見つけたから、助かったのよ」

「お転婆で少々困った娘ですが、人助けが出来て良かった」

「有り難うございます。リリカが良くなるまでの間、出来る事はお手伝いしますので、何でも言ってください」

「では、遠慮なく手伝ってもらうおうか」と、ハーネンが答えた。

リリカの容態が良くなるまで、お世話になろうとしているのに。彼等の親切に、甘えてばかりではいけない。

日が昇ると同時に起床する健康的な生活が始まった。

朝食後、女達は家畜の乳をしぼり、攪拌機でバターやチーズを作る。

家畜を餌場へ連れて行くのは、男達の主な仕事だった。放牧するヤーが群れからはぐれない様に、馬に乗り誘導する。

女達と一緒に仕事をするのが苦手なサリは、男達と馬に乗りヤーを追う仕事に毎日付いて来た。

「また、一緒に来るのか?」、並走してきたサリに春馬が話しかけた。

「乳しぼりするだけが、女の仕事じゃないのよ」

「まあ、そうだけど」

「ほら、あそこまでどっちが早く付くか競争しましょうよ!」

気になる異性に彼女は、隙を見つけては春馬にちょっかいを掛けていた。あまりにも彼女がはしゃぐので、相変わらず今日も父親に叱られていた。
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