滅んでしまった王国の元騎士は自由気ままな暮らしを満喫したい

川村直樹

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アルフェリア 14

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 プルートの店で催された宴会は、夜遅くまで盛り上がる。久しぶりに忙しく立ち回るプルートは、店の売上になる宴会をしてくれたクリスの方見た。彼なりに気を利かせてくれた事に感謝していた。そんなクリスは、気持ち良く酒を飲みながら仲間達と騒いでいた。

「うぉー、酒も料理も最高だよ」

「ウィムジー、久しぶりに楽しい酒が飲めるよ、ありがとうな」と、熟練専従者のトルカが酔っぱらいながらカウンター席に座るクリスと肩を組んだ。

「爺さん、楽しいからってあまり飲み過ぎるなよ」

「大丈夫だ、まだまだ現役で頑張るからな」

「いいね! 爺さんなら死ぬまでギルドで働きそうだな」

 テーブル席でランドは、冒険者の女性を前に酔った勢いで口説いていた。たまには応援してやろうと、クリスはランドの隣に席に移動した。

「おっさんは、こう見えても剣士としての腕は良いよ。それに以外に優しいから」

「クリスが俺を褒めるとは、天変地異でも起こるんじゃないか」

「馬鹿だな。女性の前では、しっかりとアピールするんだよ」

「あら、クリス。私を女性扱いしてくれるんだ」と、女性の声を聞いたクリスはポカンと口を開けたまま彼女の顔をまじまじと見た。彼女は、とんがり帽子を取り、大人の女性の雰囲気を漂わせる艶めかしい容姿を見せた。そのぱっちりとした目、形の良い小鼻、肉厚な唇を持つ彼女を知っている、確か胸もでかいはずとクリスは彼女の胸元を見た。

「ああああ、お前、ミディアじゃないか。いつ、町に戻って来たんだよ。ちゃっかりと宴会にも参加しているし、相変わらずしっかり者だな」

「ふふふ、昨日、戻ったの。あなたは相変わらず、自由気ままに生活している様ね」

「良いだろ、縛られたくないんだよ。それより、今回の旅はどうだったんだ」

 ミディアは、アルフェリアを拠点とする冒険者。彼女は、孤児院を世話するセリナの姉だ。魔法使いの彼女は、新たな魔法を求めて旅をしていた。

「収穫は、少なかったわ。新しい風の魔法を得たけど、どうやって使ったら良いのか」

「どんな魔法だよ。教えてくれよ」

「教えるより、体験した方が分かりやすいかもね。えい」と、ミディアは指をクリスに差して魔法をかけた。

 クリスの体が、少し宙に浮いた。体がフワフワと軽くなる。足元を見ると、小さなつむじ風が足に纏わりついていた。

「これは、支援魔法だな。スピードアップとジャンプ力の強化。上手く操れば、短い時間だけど空も飛べる。戦闘時だけでなく、移動の時にも便利かも知れないぞ」

「へぇー、そんな使い方をするんだ。攻撃魔法じゃないから、使えない魔法だと思っていた」

「良い魔法を手に入れたじゃないか」

「ありがとう・・・、クリス、セリナとはどうなの?」、ミディアはクリスから目を逸らした。

「たまに会っているよ。孤児院で寝泊まりする事もあるし」

「そうか、お互いに進展なしね。気持ちは通じ合っていても、一緒になれないか」と、ミディアは小さな声で呟いた。

「何? どうかしたか」

「何でもない、あなたもセリナも大人だから、口出しは無用ね」

「それより、私はランドとは寝ないわよ。彼の人柄は知っているけど、タイプじゃない!」

「えっえええ、切ないなミディア。でも、楽しく飲む相手をしてくれるだけで嬉しいぜ」

 親指を立てるランドに、クリスとミディアは呆れてため息が出た。

 そろそろ宴会も終わろうかとしている時に、珍しくスライブが店に入ってきた。

「おや、スライブ、あんたが来るなんて珍しいな」と、プルートがカンターから声を掛けた。

「ちょっと、クリスに用があってな」

「スライブ、あんたも飲むか?」

「酒は要らない、それより急で悪いがお前に仕事を頼みたい」

 口には出さないが、スライブの表情から信頼できる人間にしか頼めない案件だと、クリスは察する。危うい世界情勢になりつつあるから、ギルド間での情報共有を急いでいるのだろうと思った。

「明日の朝から出発した方が良いのか? 今日話した事も急ぐ理由の一つなんだろ」

「その通りだ。私の手紙と資料をダンディルグのギルド会館へ届けて欲しい」

「半年は、戻って来れそうに無いな。俺が不在の間、大丈夫なのか?」

「万が一何かあれば、私も動くよ。これでも腕は、鈍っていない」

 スライブの見た目は眼鏡をかけたインテリなので、魔法使いの様に見えるが、彼は槍術士だ。ゴールドホルダーの彼の腕と知識があれば、問題は無いだろう。

「了解しましたよ、叔父上殿」と、スライブから手紙と資料を受け取った。

「素直に引き受けてくれて、助かるよ」

「まあ、そろそろ気ままな旅でもしたいと思っていたから。いい機会だよ」

「道中、無茶はするなよ。お前の事だから、変な事に巻き込まれそうだし」

「何があるか分からないからな。無理はしないと約束するよ」

 スライブが店を出る頃には、宴会も終わりプルートが店の片づけをしていた。残っていたのは、ミディアに振られ気持ちよさそうに床に転がり寝ているランドだけだった。

 プルートの店を出たクリスは、人影のない通りをフラフラと千鳥足で歩いて行った。孤児院に入ると、いつものソファ寝床に寝転がる。物音を出したつもりは無かったが、暫くするとセリナが水の入ったコップを手に現れた。

「悪い、夜遅くに。うるさかったか?」と、クリスは手渡された水を飲んだ。

「ううん、大丈夫よ。飲んでいたの?」

「ああ、魔獣の素材が手に入ったから、買い取ってもらったのだが大金になった。久しぶりにみんなと宴会になったよ」

 魔獣と聞いてセリナは、「いくら強くても、あまり無茶しないでね」

「勇者達を案内した報酬だから、安心しろ。危なくなったら逃げるし」と、冗談まじりで話す。

 不意に見せたクリスの笑顔に、セリナは何かを感じ取った。

「何かあった?」

「どうして、そう思う?」

「何となく、何かあったのかと思って」

 クリスは少し間をおいてから口を開いた、「実は、急な仕事でダンディルグ王国に行く。出発は、明日だ。暫く留守になるから、これを渡しておくよ」と、金貨の入った袋をセリナに手渡した。

「いつも有り難う。本当に助かっているよ。クリス・・・」

 セリナは、クリスの手を取り強引に自分の部屋へ連れて行く。お互い好意はあるが、決して結ばれない相手だと彼女は確信している。年下の彼は、まだ結婚や家庭を持つことを望んでいない。今だけは、自分のものにしたい。自分だけを見て欲しいと彼女は感じた。

 部屋に入るとセリナは、クリスにキスをしながら彼の服を脱がしていく。

 ベッドの上で生まれたままの姿になった二人は、互いの肌の温もりを感じながら愛撫し合う。

「セリナ・・・」、クリスが話しかけると彼女は、唇で彼の口を塞いだ。

「良いの、今だけは私を見て。私の事だけ考えて欲しいの。今だけで良いから・・・」

「分かったよ」と、クリスはセリナを下にして上半身を起こした「暫く、会えないな」

「ふふふ、クリスが帰って来る頃には、良い人見つけて結婚しているかもよ」

「良いよ、お前が幸せになるなら。喜んで歓迎するよ」

 何も否定しないクリスは、セリナの大きく柔らかな胸に顔を埋める。クリスの頭に手を触れたセリナは、奥底に秘める気持ちが込み上げてくる。無意識に涙が、彼女の頬を伝って落ちた。

「良いか?」と、クリスの問いかけにセリナは静かに頷いた。

 これが最後になる様な気がするセリナは、なんだか切なくなった。火照った体を寄せ合い、二人は夜明けまで激しく愛し続けた。
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