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シルナス 1
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鉱山都市でゴーレムを倒し楽しく騒いだ日が遠く感じ始めた頃、クリスは草原の中を進んでいた。
乾燥地帯とは違い、緑豊かな大地へと変化していく。近くにあるフリスコン川の恩恵を受けるこの場所では、大規模な農地が広がる。
すれ違う農夫に、馬に乗るクリスは声を掛けた。
「すいません。ここは、ダンディルグ王国領シルナスですよね」
「いかにも、シルナスですよ。旅の方はどこを目指しておられるのかな?」
「俺は、ダンディルグ王国を目指しています。ここからまだ先になりますかね」
「そうじゃな、まだまだ先になるな。フリスコン川を越えて草原を更に二日ほど進み、山を越えなければならない」
「ふぅ、思った以上に遠いですね」
「あんたは、何処から来られたのか?」
「アルフェリアからです。出発してから一月と二週間が経ったので、そろそろ着くのかなと思っていましたが、甘かったですね」
「旅は気長にするものじゃ。焦らずにな。今晩は、この先の町で休んだ方が良い」
「ご忠告有り難うございます」
無理に急ぐ必要は無いしのんびり進んで行くかと思っていると、低い城壁に囲まれたシルナスが見えて来た。
ダンディルグ王国の台所とも呼ばれるシルナスは、生産した農作物を王国全土に供給する重要拠点だ。その割に町の防衛力は、低くい様に感じさせる。
不穏な動きをしているグランベルノ王国がここまで攻めて来るには、魔の森と山脈を越えてくる必要があるし、上手く山脈を越えられても国境を守る要塞が待ち受けている。
隣国からの脅威にさらされる可能性は限りなく低く、開拓により害獣が少ないシルナスは安全に暮らせる場所なのだ。
城門を守る衛兵に、身分証明書にもなるギルドのブロンズカードを見せた。
「ようこそ、シルナスへ」、衛兵は笑顔で旅人のクリスを迎え入れた。
「有り難う」
ギルドに登録していると信頼される。何の問題も無く、クリスは町の中に入る事が出来た。
寝る場所が確保出来れば、情報収集のために多くの人が集う酒場へと向かう。
「いらっしゃい、何にしますか?」
「酒と、お勧めの美味い料理を頼む」
分かりましたと、カウンターに座るクリスに亭主は答える。
亭主も含め店に居るのは、全員魔族だ。人族や獣人、エルフなど違う種族の姿は無い。
「お待ちどうさん」と、酒と料理をクリスの前に亭主が置いた。
「有り難う。ここには、魔族以外の種族は来ないのか?」
「ははは、こんな田舎町には来ないですよ。それに魔族と仲がいい種族は、居ませんからね」
「人族と文化も生活も似ているなのに。どうして仲良くできないのかな」
「人族の兄ちゃんは、面白い事を言うな」
「そうかな、俺はクリス。仕事でダンディルグ王国に行く途中だ。ここに来るまでに出会った人は、種族は違えどみんな親切で良い奴ばかりだったからね」、店主と挨拶を交わし、出された酒を口にした。
「見た目は、同じなのにな。ちょっと身体能力が人族より高いと言うだけで、魔族を嫌う者が多いのは残念だ。俺は、キースだ」、彼はサービスで酒の肴になる料理を一品出した。
「よろしく、キース。しかしこの料理は、美味いな」
「美味いか、ここで取れた穀物の上に野菜と肉とチーズをのせた料理だ」
熱々の料理に口の中を火傷しないように注意するクリスは、「はふはふ、平和が一番だが、ここ最近何か変わった事は無かったか?」
「変わった事か? なんか面白い事とかか?」
キースは、両腕を組みながら天井を仰ぎ見て考える。
「俺は、アルフェリアからここまで旅して来たから情報に疎いんだよ」
「それなら、近いうちに王国の勇者と騎士団が魔獣退治に行くらしいと、噂が出回っているな」
「魔獣退治か?」
「ああ、王国から東に位置する魔の森なのだが、近くの町や村を襲う魔獣が出たらしくて。そいつの退治をする見たいだな」
「へぇー、魔族の勇者か」と、クリスは名もなき森で出会ったカレンの事をすっかり忘れている様子だった。
「俺達の勇者様は、そりゃあベッピンさんだぜ」
「ベッピンさん? 女性か」
「十七歳になったばかりの綺麗な女の子だな」
「あっ・・・、ゴホゴホ・・・」、クリスは思わずむせてしまった。
「大丈夫か、クリス」
酒で喉を潤したクリスは、「おう、大丈夫だ。もしかして、その子はカレンか」
「知っているのか、カレン・レーシアズを」
「前にアルフェリアの近くなある、名もなき森で会った事がある」
そりゃあ良いと、種族で差別的な考えをしない人族のクリスを気に入ったキースは、奢りだと言って、酒をクリスのカップにつぎ足し一緒に酒を飲む。
酒を酌み交わしながら、クリスに知っている情報をキースは色々と教えてくれる。
赤い髪の毛に赤い瞳のキースの顔が酒で更に赤くなると、面白くなったのかクリスはクスクスと笑った。
フリスコン川にかかる石造りの大きな橋の入り口には、重装備の衛兵が往来する人を監視していた。
大河にかかる橋は、有事の際には重要な建築物となる。敵の侵攻から橋を守ることもあれば、侵攻を阻止するために橋を破壊する事もある。そんな重要な橋を守るのは、国として当たり前のことだ。
普段、魔族しか見かけない町で人族のクリスの存在は珍しい。そんな事もあり、クリスは橋の入り口で衛兵に呼び止められた。
「あなたは、人族ですね。この橋を渡って何処へ向かうのですか?」
「俺は、ダンディルグ王国へ向かっている」
「どのような用件で王国に行かれるのですか?」
用心深くなるのも仕方がない、衛兵を困らせても何の得にもならない。彼は、スライブから預かった書簡を衛兵に見せた。
「ダンディルグのギルドに用があるんだ。通してくれるか」
書簡に書かれた宛名を見た衛兵が、声を上げて驚いた。
「ギルドのシーリングスタンプに、えっ、これはモーガン・ギドー様宛じゃないか。た、大変失礼をしました」
書簡をクリスに返した衛兵は、向こう岸で失礼があると困ると話し、彼の馬を引いて一緒に橋を渡った。
クリスは、スライブから手紙と資料を受け取った時に、宛名を全く見ていなかった。モーガン・ギドーと言う名を知っているような気がするが、その時は思い出せなかった。
フリスコン川を渡ると草原を抜けるのに三日間かかった。その先には、シルナスの農夫が話していた通り山が見える。道は、山の中へと続いていた。
酒場のキースから貰った情報では、道なりに進めば二、三日で簡単に超えられる山だと聞いていた。
山を越えると直ぐ村があり、そこまで行けばダンディルグ王国は間近だ。
乾燥地帯とは違い、緑豊かな大地へと変化していく。近くにあるフリスコン川の恩恵を受けるこの場所では、大規模な農地が広がる。
すれ違う農夫に、馬に乗るクリスは声を掛けた。
「すいません。ここは、ダンディルグ王国領シルナスですよね」
「いかにも、シルナスですよ。旅の方はどこを目指しておられるのかな?」
「俺は、ダンディルグ王国を目指しています。ここからまだ先になりますかね」
「そうじゃな、まだまだ先になるな。フリスコン川を越えて草原を更に二日ほど進み、山を越えなければならない」
「ふぅ、思った以上に遠いですね」
「あんたは、何処から来られたのか?」
「アルフェリアからです。出発してから一月と二週間が経ったので、そろそろ着くのかなと思っていましたが、甘かったですね」
「旅は気長にするものじゃ。焦らずにな。今晩は、この先の町で休んだ方が良い」
「ご忠告有り難うございます」
無理に急ぐ必要は無いしのんびり進んで行くかと思っていると、低い城壁に囲まれたシルナスが見えて来た。
ダンディルグ王国の台所とも呼ばれるシルナスは、生産した農作物を王国全土に供給する重要拠点だ。その割に町の防衛力は、低くい様に感じさせる。
不穏な動きをしているグランベルノ王国がここまで攻めて来るには、魔の森と山脈を越えてくる必要があるし、上手く山脈を越えられても国境を守る要塞が待ち受けている。
隣国からの脅威にさらされる可能性は限りなく低く、開拓により害獣が少ないシルナスは安全に暮らせる場所なのだ。
城門を守る衛兵に、身分証明書にもなるギルドのブロンズカードを見せた。
「ようこそ、シルナスへ」、衛兵は笑顔で旅人のクリスを迎え入れた。
「有り難う」
ギルドに登録していると信頼される。何の問題も無く、クリスは町の中に入る事が出来た。
寝る場所が確保出来れば、情報収集のために多くの人が集う酒場へと向かう。
「いらっしゃい、何にしますか?」
「酒と、お勧めの美味い料理を頼む」
分かりましたと、カウンターに座るクリスに亭主は答える。
亭主も含め店に居るのは、全員魔族だ。人族や獣人、エルフなど違う種族の姿は無い。
「お待ちどうさん」と、酒と料理をクリスの前に亭主が置いた。
「有り難う。ここには、魔族以外の種族は来ないのか?」
「ははは、こんな田舎町には来ないですよ。それに魔族と仲がいい種族は、居ませんからね」
「人族と文化も生活も似ているなのに。どうして仲良くできないのかな」
「人族の兄ちゃんは、面白い事を言うな」
「そうかな、俺はクリス。仕事でダンディルグ王国に行く途中だ。ここに来るまでに出会った人は、種族は違えどみんな親切で良い奴ばかりだったからね」、店主と挨拶を交わし、出された酒を口にした。
「見た目は、同じなのにな。ちょっと身体能力が人族より高いと言うだけで、魔族を嫌う者が多いのは残念だ。俺は、キースだ」、彼はサービスで酒の肴になる料理を一品出した。
「よろしく、キース。しかしこの料理は、美味いな」
「美味いか、ここで取れた穀物の上に野菜と肉とチーズをのせた料理だ」
熱々の料理に口の中を火傷しないように注意するクリスは、「はふはふ、平和が一番だが、ここ最近何か変わった事は無かったか?」
「変わった事か? なんか面白い事とかか?」
キースは、両腕を組みながら天井を仰ぎ見て考える。
「俺は、アルフェリアからここまで旅して来たから情報に疎いんだよ」
「それなら、近いうちに王国の勇者と騎士団が魔獣退治に行くらしいと、噂が出回っているな」
「魔獣退治か?」
「ああ、王国から東に位置する魔の森なのだが、近くの町や村を襲う魔獣が出たらしくて。そいつの退治をする見たいだな」
「へぇー、魔族の勇者か」と、クリスは名もなき森で出会ったカレンの事をすっかり忘れている様子だった。
「俺達の勇者様は、そりゃあベッピンさんだぜ」
「ベッピンさん? 女性か」
「十七歳になったばかりの綺麗な女の子だな」
「あっ・・・、ゴホゴホ・・・」、クリスは思わずむせてしまった。
「大丈夫か、クリス」
酒で喉を潤したクリスは、「おう、大丈夫だ。もしかして、その子はカレンか」
「知っているのか、カレン・レーシアズを」
「前にアルフェリアの近くなある、名もなき森で会った事がある」
そりゃあ良いと、種族で差別的な考えをしない人族のクリスを気に入ったキースは、奢りだと言って、酒をクリスのカップにつぎ足し一緒に酒を飲む。
酒を酌み交わしながら、クリスに知っている情報をキースは色々と教えてくれる。
赤い髪の毛に赤い瞳のキースの顔が酒で更に赤くなると、面白くなったのかクリスはクスクスと笑った。
フリスコン川にかかる石造りの大きな橋の入り口には、重装備の衛兵が往来する人を監視していた。
大河にかかる橋は、有事の際には重要な建築物となる。敵の侵攻から橋を守ることもあれば、侵攻を阻止するために橋を破壊する事もある。そんな重要な橋を守るのは、国として当たり前のことだ。
普段、魔族しか見かけない町で人族のクリスの存在は珍しい。そんな事もあり、クリスは橋の入り口で衛兵に呼び止められた。
「あなたは、人族ですね。この橋を渡って何処へ向かうのですか?」
「俺は、ダンディルグ王国へ向かっている」
「どのような用件で王国に行かれるのですか?」
用心深くなるのも仕方がない、衛兵を困らせても何の得にもならない。彼は、スライブから預かった書簡を衛兵に見せた。
「ダンディルグのギルドに用があるんだ。通してくれるか」
書簡に書かれた宛名を見た衛兵が、声を上げて驚いた。
「ギルドのシーリングスタンプに、えっ、これはモーガン・ギドー様宛じゃないか。た、大変失礼をしました」
書簡をクリスに返した衛兵は、向こう岸で失礼があると困ると話し、彼の馬を引いて一緒に橋を渡った。
クリスは、スライブから手紙と資料を受け取った時に、宛名を全く見ていなかった。モーガン・ギドーと言う名を知っているような気がするが、その時は思い出せなかった。
フリスコン川を渡ると草原を抜けるのに三日間かかった。その先には、シルナスの農夫が話していた通り山が見える。道は、山の中へと続いていた。
酒場のキースから貰った情報では、道なりに進めば二、三日で簡単に超えられる山だと聞いていた。
山を越えると直ぐ村があり、そこまで行けばダンディルグ王国は間近だ。
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