58 / 66
奔走 7
しおりを挟む
「あれは、何かしら?」と、サーシャは黒煙の上がる山の麓を見つめていた。
「僕も気になっていたんすよ。前に此処を通った時も黒い煙が上がっていました」
「二人とも、あそこが何なのか知らないのか?」
「知りませんよ!」と、ミツヤとサーシャは声を揃えて返事した。
ほとんどの植物は姿を消し赤土と岩石がむき出しとなる乾燥地帯のど真ん中で、三人はドワーフ族の住む鉱山都市を見つめていた。
「それにしても煙の量が異常に多いような気がする」
「そう言われれば、前に僕が通り過ぎた時はあんなに沢山煙は出ていませんでしたね」
不自然に思ったクリスの足取りが早くなった。
「どうしたんですか? 何か気になる事でもあるんですか」
「ああ、何かきな臭い。いくら鉱山都市でもあの煙の量は、尋常じゃない」
「それじゃあ、急ぎましょう」
街に近づくにつれ立ち昇る黒煙は、鉱石を製錬する際に発生する煙では無い事に気が付く。それと同時に入り口の門からわんさかと人が出て来るのも見えて来た。
「事故ですかね。街の中で燃えている建物があるようですが」
ミツヤの言葉にクリスは、無意識に舌打ちをした。
点在して建物が燃えているのは、何かが変だ。通常の火事ではあり得ない。事故と言うより、誰かが放火したに違いない。
同じ光景をクリスは戦場で見たのを思い出し身震いした。
そうだ、これは敵対する都市に火を放ち、人々を混乱に陥れるやり口に類似している。
「ミツヤ、サーシャ、街の中に入る前に戦闘態勢を取ってくれ」
そう声を掛けられたミツヤとサーシャは、人混みを避けながら衛兵の居ない門を通り過ぎた。
街の中は、右往左往するドワーフ族の女子供と火を消すのに走り回る男達とで入り乱れていた。そんな混乱の中で、パニックになって都市の外へ逃げて行く者の中から咄嗟に女の腕をクリスは掴んだ。
「おい、待て・・・。お前は、確かグランベルノのお姫様の護衛をしていたよな」と、深く被っていたフードを脱がされ顔が白昼に晒された。
「・・・ッ」
緊張しているのか頭の上の小さな耳がピクピクと動かすのは、でグランベルノ王国の第四王女リリアを護衛していた獣人族のシルクだった。
「どうして君がここに居るんだ?」と、ミツヤは目を大きく見開いた。
「バレたのなら仕方がありませんね。そうです、シルクです。その節は助けていただき、有り難うございました」
「北の要塞を襲った奴らと同じか。こんな事をして、何が目的だ」
大声を出したクリスの顔を直視したシルクは、口元を上げ黙ったまま首を横に振った。
「・・・」
「グランベルノ王からの命令なのは、分かっている。ここで何をしているのか教えてくれないか」
「ふふ、正直に話す馬鹿がどこに居るんですか?」
そう答えるシルクにクリスは、両手を上げ肩をすぼめる。
「確かに答える訳が無いよな・・・」
「それに、あなた達に捕まり素性がバレてしまった以上、私は生き恥を晒したくありません」
「はあ、そんな簡単に死のうとするなよ。せっかく助けてやった命なんだから大切にしてもらいたいな」
「・・・クッ」、クリスから目を逸らしたシルクは魔獣と戦った時の事を思い出した。
「頼むから何をしていたのか教えて欲しい」
クリスに両肩を掴まれるシルクは、命の恩人からのお願いを無視できず心が揺らぐ。噛みしめる唇が、震えながらゆっくりと開いた。
「私は応援だったの・・・、特殊部隊で動ける者が居なかったから諜報部から頼まれて・・・」
「話してくれるのか、ありがとうな。それで、何を頼まれたんだ」
「カルラシアが奪還されてしまいました。その隙を突かれて魔族から侵攻されない様にするために鉱山都市で混乱を引き起こせと・・・」
「それで、火を付けたのか。お前だけなのか、街に火を付けたのは」
「いいえ、それだけじゃないんです」
「えっ、それだけじゃないとのか・・・」
「他の仲間達は、鉱山からゴーレムを外に連れ出しました」
「一体、何人居るんだよ」
「私を含めて五人です。他の仲間もこの混乱に乗じて逃げたはずです」
「お前らの作戦は、成功って訳か。でも、鉱山都市を出たら何処かで落ち合うんだろ」
「はい、そうです」
「じゃあ、俺をそこに連れて行ってくれ」
「いっ、嫌です。仲間を全員殺すんですよね」
「攻撃してこないのなら殺さないが・・・、全員捕まえてドワーフ族に引き渡す」
「そんな・・・」
「仕方が無いだろ、彼等の掟に従って裁いてもらう」
シルクの腕を掴んだまま外へ出ようとするクリスをミツヤは慌てて呼び止めた。
「クリスさん、僕たちは何をしたら良いんですか?」
足を止めたクリスは、頭を掻きながら振り向いた。すっかりミツヤとサーシャの存在を忘れていた様子だ。
「そうだった。ミツヤとサーシャの二人でゴーレムを倒してきてくれ。派手に土煙が上がっているから鉱山の場所は分かるだろ。後、ゴーレムはアーティファクトらしくて全身鉄より堅い鎧で覆われていて、魔法攻撃を反射するから注意しろよ」
「アーティファクトですか?」
首を傾げるミツヤにサーシャは、「古の技術で作られた物ですよ」
「分かりました、僕とサーシャで何とかします」と、二人は鉱山に向かって駆けだした。
「僕も気になっていたんすよ。前に此処を通った時も黒い煙が上がっていました」
「二人とも、あそこが何なのか知らないのか?」
「知りませんよ!」と、ミツヤとサーシャは声を揃えて返事した。
ほとんどの植物は姿を消し赤土と岩石がむき出しとなる乾燥地帯のど真ん中で、三人はドワーフ族の住む鉱山都市を見つめていた。
「それにしても煙の量が異常に多いような気がする」
「そう言われれば、前に僕が通り過ぎた時はあんなに沢山煙は出ていませんでしたね」
不自然に思ったクリスの足取りが早くなった。
「どうしたんですか? 何か気になる事でもあるんですか」
「ああ、何かきな臭い。いくら鉱山都市でもあの煙の量は、尋常じゃない」
「それじゃあ、急ぎましょう」
街に近づくにつれ立ち昇る黒煙は、鉱石を製錬する際に発生する煙では無い事に気が付く。それと同時に入り口の門からわんさかと人が出て来るのも見えて来た。
「事故ですかね。街の中で燃えている建物があるようですが」
ミツヤの言葉にクリスは、無意識に舌打ちをした。
点在して建物が燃えているのは、何かが変だ。通常の火事ではあり得ない。事故と言うより、誰かが放火したに違いない。
同じ光景をクリスは戦場で見たのを思い出し身震いした。
そうだ、これは敵対する都市に火を放ち、人々を混乱に陥れるやり口に類似している。
「ミツヤ、サーシャ、街の中に入る前に戦闘態勢を取ってくれ」
そう声を掛けられたミツヤとサーシャは、人混みを避けながら衛兵の居ない門を通り過ぎた。
街の中は、右往左往するドワーフ族の女子供と火を消すのに走り回る男達とで入り乱れていた。そんな混乱の中で、パニックになって都市の外へ逃げて行く者の中から咄嗟に女の腕をクリスは掴んだ。
「おい、待て・・・。お前は、確かグランベルノのお姫様の護衛をしていたよな」と、深く被っていたフードを脱がされ顔が白昼に晒された。
「・・・ッ」
緊張しているのか頭の上の小さな耳がピクピクと動かすのは、でグランベルノ王国の第四王女リリアを護衛していた獣人族のシルクだった。
「どうして君がここに居るんだ?」と、ミツヤは目を大きく見開いた。
「バレたのなら仕方がありませんね。そうです、シルクです。その節は助けていただき、有り難うございました」
「北の要塞を襲った奴らと同じか。こんな事をして、何が目的だ」
大声を出したクリスの顔を直視したシルクは、口元を上げ黙ったまま首を横に振った。
「・・・」
「グランベルノ王からの命令なのは、分かっている。ここで何をしているのか教えてくれないか」
「ふふ、正直に話す馬鹿がどこに居るんですか?」
そう答えるシルクにクリスは、両手を上げ肩をすぼめる。
「確かに答える訳が無いよな・・・」
「それに、あなた達に捕まり素性がバレてしまった以上、私は生き恥を晒したくありません」
「はあ、そんな簡単に死のうとするなよ。せっかく助けてやった命なんだから大切にしてもらいたいな」
「・・・クッ」、クリスから目を逸らしたシルクは魔獣と戦った時の事を思い出した。
「頼むから何をしていたのか教えて欲しい」
クリスに両肩を掴まれるシルクは、命の恩人からのお願いを無視できず心が揺らぐ。噛みしめる唇が、震えながらゆっくりと開いた。
「私は応援だったの・・・、特殊部隊で動ける者が居なかったから諜報部から頼まれて・・・」
「話してくれるのか、ありがとうな。それで、何を頼まれたんだ」
「カルラシアが奪還されてしまいました。その隙を突かれて魔族から侵攻されない様にするために鉱山都市で混乱を引き起こせと・・・」
「それで、火を付けたのか。お前だけなのか、街に火を付けたのは」
「いいえ、それだけじゃないんです」
「えっ、それだけじゃないとのか・・・」
「他の仲間達は、鉱山からゴーレムを外に連れ出しました」
「一体、何人居るんだよ」
「私を含めて五人です。他の仲間もこの混乱に乗じて逃げたはずです」
「お前らの作戦は、成功って訳か。でも、鉱山都市を出たら何処かで落ち合うんだろ」
「はい、そうです」
「じゃあ、俺をそこに連れて行ってくれ」
「いっ、嫌です。仲間を全員殺すんですよね」
「攻撃してこないのなら殺さないが・・・、全員捕まえてドワーフ族に引き渡す」
「そんな・・・」
「仕方が無いだろ、彼等の掟に従って裁いてもらう」
シルクの腕を掴んだまま外へ出ようとするクリスをミツヤは慌てて呼び止めた。
「クリスさん、僕たちは何をしたら良いんですか?」
足を止めたクリスは、頭を掻きながら振り向いた。すっかりミツヤとサーシャの存在を忘れていた様子だ。
「そうだった。ミツヤとサーシャの二人でゴーレムを倒してきてくれ。派手に土煙が上がっているから鉱山の場所は分かるだろ。後、ゴーレムはアーティファクトらしくて全身鉄より堅い鎧で覆われていて、魔法攻撃を反射するから注意しろよ」
「アーティファクトですか?」
首を傾げるミツヤにサーシャは、「古の技術で作られた物ですよ」
「分かりました、僕とサーシャで何とかします」と、二人は鉱山に向かって駆けだした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる