滅んでしまった王国の元騎士は自由気ままな暮らしを満喫したい

川村直樹

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奔走 10

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 ダンディルグ王国で起きた襲撃事件やカルラシア王国での反乱など、グランベルノ王国が中心となり引き起こされている現在の情勢をオイゲンに伝えたクリス達は鉱山都市を後にした。

 乾燥地帯を抜けた一行は、草花のしげる草原地帯をのんびり歩きながら目的地を目指していた。これだけ見晴らしの良い景観の中だ、もし害獣や盗賊などが居れば直ぐに察知できる。

 そんな警戒する必要の無い場所でミツヤとシルクは、何かと会話が盛り上がっていた。クリスとサーシャの後ろを歩く彼等は一緒に冒険した仲だから昔話でもしているのだろう。

「なあ、ミツヤの事だけど、どう思う」と、唐突にクリスはサーシャに話しかける。

 表情を変えず淡々と歩く彼女から少し寂し気な雰囲気を感じ取ったクリスは、コミュニケーションを取るつもりで、何気に勇者としてのミツヤの事を聞いたのだ。

 しかし、言葉が少々足りなかったのかサーシャは男としてミツヤをどう思うと聞かれたと勘違いしてしまった。

「ミ、ミツヤさんですか? 人間族ですが、とても印象の良い男性だと思います・・・」

 見当違いの答が返って来たので、どうしたのかと思いクリスは隣を歩くサーシャの方を向くと、エルフ族としては珍しく落ち着きの無い表情を見せていた。

「えっ、なに言ってんだサーシャ。勇者としてミツヤには、見込みがあるか聞いたんだよ。お前、もしかして、ミツヤの事を意識してるんじゃ・・・」

「えっ、勇者としてですか。あ、あ、あれ、私、何て答えたんだろう・・・。勇者ですよね、うん、彼ならきっと強くて優しい勇者になれると思いますよ」

 クリスの言葉にサーシャの目が泳ぐ。慌てる彼女は直ぐに言い直したが、既に遅かった。

「ふーん、ちょっとはミツヤの事、意識してるんだ。確かに容姿も悪くないし、優しいからな。付き合うなら、丁度良いかも」

「ふぇ、私、い、意識してませんから。彼氏なんて未だ必要ないですし・・・」

「そんなこと無いぜ。大切な人が居れば、それはそれで励みになるから。それに種族を気にする奴じゃないから、サーシャとならお似合いだと思うけど・・・。どうだろう」と、クリスは内気な所のある彼女の背中を押して見た。

「そんな事言われても。私が良くても、ミツヤさんはどう思っているのか分からないし」

「相手がどう思おうと、君が彼をどう思っているかの方が大切なんだ。自分の気持を優先するんだよ、そうすれば上手く行くから」

「うーん、クリスさん。もしかして私の事、からかってませんか?」

「からかう訳無いだろ。これは俺からのアドバイスだ、魔法の修業も良いけど、それだけじゃあつまらないだろ。恋愛しても良いんだよ。それにそこから得られるものは、きっと役に立つものだから」

「ふう、考えておきます。まだ、旅の途中ですからね」

「そうだな、後悔しないようにな」と、笑いながらサーシャの頭を撫でた。

 クリスに頭を撫でられながらサーシャは、今まで以上にミツヤを意識し始めている自分に気が付いた。
 
 それまでは、良く分からないモヤモヤとした気持ちだったのだ。

 しかし、一度靄が晴れて答えが出てしまうと、この先、ミツヤと一緒に居ても平常心を保ていられるのか不安になるのだった。

 このまま順調に小一時間ほど歩けば、名もなき森を抜け目的地に到着するはずだったのに。道の真ん中で何食わぬ顔で寝ている魔獣と遭遇した。

「こんな場所に四つ足の魔獣が居るなんて珍しいな」

「寝ているなら直ぐに片付けましょうか」と、鞘から剣を抜いたミツヤが魔獣に近づこうとしたので、後ろからクリスは彼の肩に手をかけた。

「ちょっと待て、ミツヤ。何でもかんでも殺してしまうのは良くない」

「でも、このまま放置しておけば、誰かが襲われますよ」

「ただの気まぐれで、こんな所で寝ているんだろう。起きたら森の奥に帰るよ。それに、あまりこいつ等を殺し過ぎると森の生態系が崩れてしまうから今回は見逃そう」

「そうですか、まあ、何かあったら後で駆除しに来れば良いですね」

 日頃の訓練の成果を試したかったのか残念そうにするミツヤは、名残惜しそうに聖剣を鞘に納めた。そんな勇者に反してサーシャは、クリスの後ろでずっと隠れていた。

 ミツヤほど勇敢になれとは言わないが、それなりに実力はあるのだから四つ足の魔獣一匹でそんなにビビらなくても良いのにと、クリスは可笑しくなる。

 魔獣を起こさないよう静かに道を通り過ぎると、今度は見慣れない四人組の冒険者と出会った。これ以上進むと魔獣が居るから気を付けろとクリスが声を掛けようとすると冒険者の一人が息を切らして駆け寄って来た。

「あんた等、アルフェリアに行くのなら今は止めておいた方が良い」

「アルフェリアで何かあったのか?」

「ああ、グランベルノから軍勢が押し寄せて来てるんだ」

「それじゃあ、お前達はアルフェリアから逃げて来た・・・」

「いや、逃げて来たと言う訳じゃないんだ。害獣駆除の仕事を終え街に帰ろうと思ってたんだけど。こんな状況ではね」

「それは、困ったな。このまま引き返せないし・・・、なあシルク、ちょっと森の入り口の様子を先に見て来てくれないか?」

 姿を隠しながらついて来ていたシルクが、音も無く現れクリスの前に跪いた。

「はい、クリス様。仰せの通りに」

「何かわかったら直ぐに戻って来てくれ。これからどうするか決めたいから」

 クリスの要望を聞いたシルクは、フッと姿を消した。
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