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5 望まぬ気持ち
しおりを挟む「……婚約……破棄だ……婚約……破棄を……する……嫌だ……うっ、ぐぅっ……」
「コンヤ様! どうしたのですか!!」
婚約破棄を唱えながら苦しそうに拒絶するコンヤ様。
それは、目に見えて明らかな異常。
「コンヤ様……すみません!!」
「うっ!?」
只事ではない様子に見かねて、私はコンヤ様に手刀を叩き込んで意識を奪った。
肉体を回復させる魔法は苦手だが、武力行使には自身があるので得意な方法で気絶させたのだ。
「いや~、失敗しちゃったよ。あっはっはっ」
「誰っ!?」
鳥が羽ばたく音と共に空から現れたのは、大体十代くらいの年齢に見える少年。
一見ただの子供にしか見えないが、背中から黒く小さな翼が生えているので人間でないことは確か。
手には、頑丈そうな作りの弓矢を持っている。
「まさか、堕天したキューピット……?」
キューピットが何らかの事情で堕天するとデビルキューピットになるということをこの前、ソンナ様が教えてくれた。
デビルキューピットになってしまうと白い羽根は真っ黒に染まり、弓矢は愛を破滅させる力へ変化してしまうという。
「コンヤ様が苦しんでいたのは、その弓矢の力ってこと……?」
そうなれば、あの苦しみは望まぬ婚約破棄を言おうとする自分に抗っていた証ということになる。
ソンナは、コンヤの愛に感動しながらデビルキューピットを睨みつけた。
「いや~、まいったまいった。
自分、暇潰しで打ってってたんだけどさぁ?
なんか偶然ソイツに当っちゃったんだよねぇ」
ヘラヘラ笑いのふざけた答え。
偶然というのが嘘であることを曝け出しまくっている。
要は面白半分の遊び半分で、相手を苦しませたようだ。
「遊びで、コンヤ様を打ったというの?」
怒気が目に見えるオーラとなって、ソンナの身体から溢れ出していく。
デビルキューピットへ向ける眼差しは、殺意にも似た強い怨みの念がこもっている。
「ごめんごめん、怒らないで。可愛い顔が台無しだよ?」
怒りに震えるソンナへの返答は、笑い混じりの適当な謝罪。
小馬鹿にしていることを全く隠していない。
「謝罪をする気があるなら、ちゃんとして下さらない?
そもそも、私だけでなくコンヤ様にも言うべきでしょう」
女神の顔も三度まで。
最終通告を無視するならば、肉体言語の行使も待ったなし。
「え~? やだよ、面倒くさいからパス。
可愛い女の子以外と喋るとか、趣味じゃない以前に生理的に無理だし、そもそもかったるいじゃん」
人間は遊び道具でしかないと言うかのような、明らかになめくさっている態度。
ソンナの堪忍袋の緒が、音をたててブチ切れた。
「コンヤ様へわざと無礼を働いておいて…………私、あなたを絶対に許さないわ!!」
デビルキューピットをボコボコに打ちのめした後、弓矢をへし折り魔法で消去。
力の源を断ったことで、コンヤ様の苦しみは無くなった。
無理矢理な婚約破棄など、させないっ!
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