泉の女神は問い掛ける

谷川ベルノー

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2 落としものは何?

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「はい、何でしょうか?」
「……落とすも何も、自分そもそも何も落としていないんですけど……」

 ちょっと散歩に来ただけなので、着の身着のままで財布すら持っていない。
 だというのに、いったい何を落としようがあるというのか。

「いいえ、落としています」
「えっ、何を?」

 心当たりなんて、全くないのだけど。
 一体全体なんだというのか。

「それは、ズバリ常識です。何で疑問一つ持たず、泉の女神である私の問いに冷静に答えているんですか? そこは『い、泉の中から絶世の美女が────!?』とか言って驚いてくれないと駄目じゃないですか~」
「……えぇ、それをダメ出しされるなんて……」

 なんというか、失礼極まりない。
 さっきから妙に馴れ馴れしいし。

「けれど! 残念な貴方に朗報があります! なんと、私からスペシャルなプレゼント!! 至極光栄に思いなさい!!」
(わぁ、うざい)

 半ば無理矢理、手渡されたものは自分で描いたのであろう額縁に入っている絵。

 ただそれは、子供でももう少しマシな絵が描けるのではないのか?
 そう思わずにはいられないほど、悪く言えばド下手なモノがそこのはあった。
  ────良く言えば、とても独創的と言えなくないかもしれないが。

(…………うわぁ、心底いらない…………)

「では、さらばです!!」

 相手が勢いよく沈んだせいで、本日二度目の突然の水しぶきに襲われた。
 もう全身余すことなく、完全にビッチャビチャになってしまった。

「……何だったんだ……」



 いや、まじでなんだったんだアイツ。
 もしかしなくても自分は、暇潰しにおちょくられただけではないのか。
 首を捻りながら、もと来た道を辿って家へと向かった。



【終われ】
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