嘘吐き転生〜死神物騙り〜

何歳

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プロローグ

始めにプロローグを語ってやろう

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『嘘吐き』

 そんなことを言われたオレは、つい笑ってしまった。
 いやいや、異世界の閻魔様にまで、オレは『嘘吐き』と呼ばれてしまうのか。
 喜べばいいのか怒ればいいのか、迷うところだよな。
 しかし、ここは素直に喜んでおこう。
 異世界に来てまで、オレは嘘吐きと認められたんだから。


***


「喜んでいるところ悪いが、これからおぬしは死神をやってもらう」
「オレの思考を読んだ挙句、重大な発表をいきなりするのはやめてほしいんだが?」

 なんかいきなり、閻魔王女もとい閻魔姫が何かすごいこと言ってきたんだが、これは夢か?

「夢じゃないから安心せい。それと、そろそろ本題に入らねば、あとがつかえているのでな。ついつい無駄話をしすぎてしまった。すまぬ」
「いや、こちらこそ悪かったな。幼女とか少女とか失礼なことを考えたりして。まあ、反省も後悔もしていないから安心してくれ」
「何を安心すればいいのかさっぱりわからんし、今すぐにでも先ほどの宣言を取り消して地獄に突き落としても良いのじゃが……」

 何やら閻魔姫が不穏なことを言っているが、何も聞かなかったことにした。

「さて、すでにおぬしは死んでいるわけだが」
「待て、誰が死んだって?」

 今、オレがすでに死んでいるとか言わなかったかこの少女。オレが?いつ?どこで?何で?いや、オレがなぜここにいるのかが問題だ。つい普通に受け入れてしまったが、それはそれでおかしい。死んでいなければ、目の前に死神や閻魔がいることを否定できたのに……どういうことだ?

「おぬしの死因は圧死。突然起こった大地震により避難したが、忘れられない元彼女を助けるため家族に嘘を吐いて助けに行き、彼女の身代わりに家の下敷きになり死亡。
 ……なんというか、諦めが悪い男じゃな。振られたら振られたで、素直に受け入れればいいものの、自分の心に嘘を吐き、自分の感情にも嘘を吐き、挙げ句の果てには家族にも嘘を吐き……全く、どうしようも無い嘘吐きじゃな。イレギュラーになってこちらに飛ばされてきた理由も、なんとなくじゃがわかる気がするわ」

 うるさいな、他人の心に針を刺してくるな。

「本来なら、嘘を吐きすぎたがために、あちらの世界では吼々処くくしょと呼ばれる地獄に落としても良いのじゃが……何しろ自由に動ける死神がいなくてな。しかも、こちらでは吼々処もどきじゃし、罪人を懲らしめるための施設も揃っておらぬし……」

 今現在、あなたが貶したせいで、オレの精神は針地獄状態である。
 しかも、さらっと地獄を施設と言ったぞ。どうなってんだこの地獄。

「死神になって欲しい理由としてはそんなこともあるが、他にもあるぞ。これは重大なことじゃが……異世界、まあおぬしの世界とか色々な世界から勇者が召喚されていてだな……」

 まさか現実に勇者召喚があるとは……

「しかも、本来なら亡くなっているはずなのに、一向にこちらに来ないんじゃ。もしかしたらと思い、勇者を送る途中経過の場所に天使がいるのじゃが、そやつに連絡を取ったところ……」

『えー、勇者なんだから、不老不死の固有スキルを上げて送っちゃったよ。まあいいでしょ?どうせ魔族を滅ぼすんだし、魔王が復活するたびに勇者が駆り出されるんだから。それに、魔王自身も復活するたびに勇者が増えてれば、もう復活することも諦めるでしょ?大丈夫!勇者じゃない奴には不老不死のスキルは上げてないから!』

「……とかムカつくことを言っていたな。こちらからは何もできぬゆえ、勇者を助けることもできない。かつ、もし勇者がこちらに来ても、審判を行って罪の重さに相応する地獄に落ちてもらわねばならん。地獄は種族や地位や職業など全く関係なく、全てが平等の世界じゃからな」

 天使の事を思い出したのか、彼女は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 親指の爪を噛み、何もできないことを悔やみ、助けることができないことを後悔しているのだろう。

「いや、女神に言いつけたら、その天使は『天使』という権利を剥奪されて、地上で人間として生活しておる。自らを神の使いだと偽ってな」
「それって結構ヤバいんじゃ?」
「確かに、ヤバいといえばヤバいのじゃが、人間は寿命がある故、長くは続くまい」
「ちなみに、それは何年前の話だ?」
「……ちょうど百年前の話じゃ」

 ちょうど百年。つまり、赤ん坊から生まれない限り普通の人間はすでに死亡していなければおかしい年数だ。まあ、途中で何もなかったらの話だがな。

 オレがそうやって考えていると、閻魔姫はさらにため息をついて諦めたように言った。

「しかも一年に一回、勇者の召喚が行われていて、その数百人以上。一回の召喚で複数人召喚されたり、巻き込まれて召喚されたりしたとか」
「マジかよ……」

 百人以上。つまり、一回の召喚で二人呼ばれていれば、百年で二百人。次いでに巻き込まれて召喚された人が混じっていれば、五百人は軽く行くかもしれない。学校のクラス規模で召喚されたことがあればの話だがな。

 そこまで考えて、オレは一つ気付いた。

「巻き込まれて召喚されたってことは、そいつは勇者じゃないってことだよな?」
「うむ、そうなるな」
「じゃあ、そいつはもうこっちに来たのか?」
「いや来ていない。先ほど言ったのは、『もし』の話であって『確実』の話ではない」
「どういうことだ?」

 彼女は腕を組み、再びため息をつくと言った。

「巻き込まれた者は、たとえ事故や寿命で死んでもこちらには来れん。これは決まりとかそういう話ではなく、そ奴らの魂に関係することじゃからな」

 曰く、異世界から召喚、もしくは転移した人間は、異なる世界の人間と魂が根本的に異なっている。言うなれば、水と油ほど違う。異なる世界の数ほど、魂の種類は多く存在するが、本来地獄や輪廻の輪はその世界の魂用に神より創り出されている。

「つまり、魂がこの世界の情報と合わないから、地獄にも行けないし輪廻の輪に入ることもできずに漂っていると?」
「簡単に言えばそうじゃな。じゃから、その魂をこの審判の間につれてくる橋渡しを、おぬしにやってもらいたいのじゃ」
「不老不死とかどうするんだよ」
「それは、今からわしがおぬしに加護やスキルを与えるから問題ない。説明も後で手紙を渡すから問題ないじゃろう」

 なるほど。それは良かった。
 待てよ、それはいいとして、これからオレはどうするんだ?

「そりゃ、転生させるに決まっておろう」
「どうやって?」
「ふむ……もちろん、こうやってーー」

 そう言うと、閻魔姫は左手を前に構え、右手を引いた。
 何をしているのかと問おうとした時、

「ーーじゃっ!!」

 の掛け声とともに、少女の拳がオレの鳩尾に突き刺さった。
 もちろん、オレはその威力に耐え切れず、気を失った。

 気を失う際、閻魔姫の「ふぅ、スッキリした!」と聞こえたのだが、きっと幻聴だろう。
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