終わりのない、閉じ込められた世界で

誘真

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始まりは突然に…

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ここはどこ?私は…私だわ。


名前はさゆり。仕事に疲れた26歳。恋人もいない孤独な一人暮らし。趣味は海外…特に欧州旅行。

気付くと、ヨーロッパ調の華美で重厚な劇場の客席に座っていて。天井にはシャンデリア、振り返るとバルコニー席があるわ。
夢?と思ったけど、座席のベルベットの手触りが凄くリアル。仕事に疲れ過ぎて、旅行に来たことも忘れたのかしら…?
両隣を見ると、日本人もチラホラ。やっぱりツアーで訪れたみたい。
でも私の知った顔はないから、一人で旅行に来たのかな…?いつもは友達を誘って来るんだけど。


演目は…何だろう?緞帳は上がっているけど、舞台には誰もいない。まだ始まる前なのかな。

少しすると欧州舞台にふさわしくない、機関銃を持った人が現れて。創作劇かな?なんて思っていると…

ダダダダダダッ!!
「きゃぁぁぁぁ!」「うわぁぁぁぁ!」

客席に向かって射ってきた!

「あなたもっ!早く逃げなさい!」
「はっ、はい!」

まだ欧州に来ていた実感もない中の銃乱射。
現実味がなさすぎてボーっとしちゃってたみたい。
撃たれた人は血を流して呻いてるし、本当に痛そう。
早く逃げなくちゃ…!


逃げる人波に逆らう事無く行動すると、地上ではなく地下水路に来たみたい。舞台が地下にある劇場だったのね。
地上に逃げて散った方が良かったんじゃ…と思ったけれど、もう遅い。後ろから機関銃の音が聞こえてくる。

「こっちに行けば地上に出られる!」

一緒の流れで逃げて来た人が、誘導してくれる。
地元の人なのかな?地下水路にまで詳しいなんて、凄いわね。

バタバタ走っていると、機関銃の音が止んだ。
リーダーがすかさず振り返る。

「静かに…!犯人はこっちに気付いていないかもしれない…!」

皆コクコク頷きながら、一度足を止め…足音を立てないように、ゆっくり歩く。
幸い水路がザーッと水音を立てて流れているので、普通の足音程度なら消してくれるのが有り難い。

後ろを気にしつつ、少し歩くと、脇道に管理用の小部屋があった。

「少しここで様子を見よう。犯人がこちらに追いかけて来ないということは、引き返して地上に出ているかもしれない」

リーダーの提案で小部屋に入る。

そこは水量の調整が出来る機械と、もしもの時の為の水と携帯食料が置いてあった。用意がいいわね。
リーダーが配ってくれたので、遠慮なくいただく。

部屋に入ったのは全部で10人。
リーダーとその奥さん、男性3人のグループ、若いカップル、年配カップル、そして私。
国籍も年齢もバラバラ。

「電話とか使えない?警察にここにいる事を連絡して、迎えに来てもらいましょうよ!」
「それがいいな!…って、電波がない!?」

若いカップルがコントをしてる。
地下なんだから特別にアンテナ建てたりしない限り、普通は電波ないでしょ。

「こういう施設には、地上と遣り取りできる固定回線があるはずだ」

年配カップルの指示で、皆で壁や機械などを探すけど、それらしき物は見当たらなかった。

「すまない、連絡手段が何もないとは…誤算だった。この先から地上を目指そう」

リーダーが謝るけど、普段運動していない私には良い休憩時間になったわよ。

さて行こうか…と立ち上がり、リーダーがそっと扉を開けると「パラララッ」遠くの方で機関銃の音がした。
急いで扉を閉め、施錠する。

「こっちに来てるの!?」
「もしかして複数いるのか…!?」

パニックに陥りかけるが…「静かに!」
男3人グループの1人(眼鏡)が、仕切り始めた。

「棚を動かし、バリケードを作ろう。幸いこの扉は鉄製で内側に開く仕組みだ。扉の前に物を集めれば物理的に開かなくなる」

そう言うと壁にある棚から物を下ろし始めた。
そんなので何とかなるの…?と思いながらも、棚は複数あるので、私達も真似て静かに下ろす。

1つ目の棚が空になったので、男性複数人で持ち上げて扉の前に置いた。
2つ目も同じように置いた…瞬間、扉のドアノブがガチャガチャと回された。

「ひっ…!」

手を口に押し当て、声を圧し殺し息を潜めた。
心臓がバクバク鳴っていて、緊張して気絶してしまいそう…!
その時。「ガガガガガガッ!」と扉を機関銃で撃った音が響いた。
悲鳴を上げなかった自分を褒めたいよ。

「…ダメだ、開かねぇ」

ガンッ!と扉を蹴りつけたような音がし…静かになった。
でも心臓はさっきよりも早く動いている。口を押さえている分、鼻息が荒くなる。
早くどこかに行って…!

少しの間、皆もビクビクと固まって震えていたが…

「…諦めて、どこかに行きましたかね…?」
「どうでしょう、私達がいた事はバレてなさそうですが、開ける道具を取りに行ったのかもしれません…」

外の気配を気にしながらも、ゆっくりと動き出す。

棚をもう1つ空にし、地面に倒すと、扉と壁の間のつっかえ棒として配置した。
これで扉は数センチしか開かないだろう。
一安心…と思ったのに。眼鏡が言う。

「数センチでも開いてしまえば、銃口は差し入れられるし、手榴弾的な爆薬を投げ入れられるかもしれない。犯人がこの場所を開けたがっていた以上、ここにいるのは危険だ」
「ではどうすると言うのだ?地上へのルートは扉の向こうしかないぞ?」

リーダーが反論すると、男3人グループの1人(金髪)がニヤリと笑った。

「この部屋、他の場所と繋がってそうだよね~」
「な、なぜそんなことを!?」
「いいからいいから!この棚を動かしてみてよ!」

半信半疑ながらも、金髪の言う通りに動かしてみると…

「通気孔だ!」
「ビンゴ!風の流れを感じたんだよね~」

ふんふんと鼻歌でも歌いそうな軽い調子で、通気孔の蓋を開ける。

「ほら、レディーファーストさ!そこのアジアンお姉さんから行きなよ!」
「えっ、もしかして私?」

ずっと日本語なので気にしていなかったけど、そういえば他の9人は明らかに外国人だわ。
えっ?何で日本語…?

「最後に棚を移動させてカモフラージュする必要がある。悪いが女性は先に行ってくれ」

…考える暇はなさそうね。

疑問は後にして、埃っぽい通気孔に入っていった。

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