【完結】私にだけ当たりの強い騎士様と1メートル以上離れられなくなって絶望中

椿かもめ

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18.変わるきっかけ コルネリウスside

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 俺は自分が素直じゃない人間だと自覚している。
 誰かに愛されたこともなければ、愛したこともない。
 ずっとそうだった。

 だが、それも4年前の出来事をきっかけに大きく変わった。


『今日も僕の話聞いてよー』
『コリィ! どこ行くの?』
『ねえねえ、遊ぼう!』

 周囲に飛び交う声。姿は見えないが、いつものことだ。
 これは妖精たちの声で、俺は幼少期より妖精の声が聞こえていた。それは成長した今でも同じことで。

「うるさい、少し黙ってろ。これから仕事だ。ついてくるんじゃない」

 俺が一言告げれば、周りを飛び交う声は『わかったよー』『しょうがないか』『またくるね!』と告げ、去っていく。騎士団の仕事の中で諜報活動として妖精たちに協力してもらっているため、完全に無視することはできない。故にこうして群がってくる妖精に対して相手をする必要があった。

 騎士団に入団して4年が経ち、俺は22歳となっていた。新人からようやく脱却した俺は、最近では妖精との親和性の高さと貴族出身を理由に重要な仕事を任せられることが増えてきた。

「コルネリウス。今日からお前にはとある対象の監視任務に当たってもらう。その人物の人柄、交友関係、嗜好などに至るまで調査した上で報告するように」
 
 己の所属する部隊の隊長──のちの騎士団長にそう告げられ、俺は「はっ」と敬礼をし、了承の旨を伝える。彼はそのまま続けた。

「監視対象はステレ・リート、18歳。今年成人したばかりの娘だ。親は英雄と名高い元Sランク冒険者のマイク・リートと元冒険者ギルドの受付嬢カレン・リート。そしてなにより特記事項は──妖精との親和性が高く、恐らく妖精視の特異体質を持っている」

 この時の俺は、この任務が自分の全てを変えてしまうことになると思いもしなかった。


 ステレ・リート。
 実は彼女のことは騎士団の任務以前より認識していた。
 俺がまだ年端もいかないくらい子供の頃。

『今日ねー、ステレがいっぱいお話ししてくれたんだよー。嬉しかったー』

「そうなんだ。ステレって子は俺と同じ妖精が分かるんだよな。他の妖精たちもよくその子のことたくさん褒めてるし」

 友達がいなかった俺にとっての唯一の話し相手が妖精で、その中でもよくステレの話題が出ていた。話の中で登場する彼女は自分よりもずっと年下の女の子で、無邪気で明るく、友達の多い優しい少女。殻に閉じこもりがちな自分とこれほどまでに違うのに、彼女も自分と同じくらいの妖精との親和性を持っている。そのことがどこか誇らしく、親近感を抱かせていた。ゆえに俺は妖精たちにその少女の話を聞くことが好きだった。

 だが成長するに従って、俺は妖精たちと距離を置き始めた。

 元々の陰気な性格に加え、誰もいないのに1人でぶつぶつと話しているとなれば奇異な目で見られることは必然だった。そんな俺を両親は忌み嫌い、貴族としてことを強要した。その教育もあってか、俺はいつしか妖精の存在をなるべく認識しないよう、聞こえないふりをして生活するようになっていった。

 だが18歳で騎士団に入団した際、その妖精の声を聞くことが出来る力が有用なものなのだと知らされた。今更これまで無視し続けてきた妖精たちの力を借りることなど都合が良すぎると思っていたが、そんな人間側の考えなど彼らにとってはどうでもいいことのようだった。何年間も返答すらしていなかったというのに、妖精たちは当たり前のように受け入れてくれた。

 そのとき貴族としてのを守り、生きていくことに対して疑問が浮かんだ。貴族としての矜持や見栄ばかりを気にする両親や兄弟たち。なぜ己の力を押し殺してまで気にしなければならないのか。吹っ切れた俺は実家から距離を置くことを決め、新たに屋敷を購入した。

 そして今に至り、あの頃の妖精の話に出てきた少女ステレの監視任務に当たることとなったのだ。

 どうやらその監視任務というのが、妖精との親和性の高い成人済みの少年少女たちが力を悪用しないか見極めるためのものだという。可能であれば騎士団への所属を薦めようという考えのもと行われていた。
 当たり前になるが、この任務は監視するものが何かしら妖精に干渉する力を持っていなければ意味をなさない。だからこそ自分にお鉢が回ってきたのだ。

 最初、俺はこの任務に対して気が乗らなかった。一般人の少女の監視など、犯罪者の捕縛や潜入任務などに比べて他愛無いことであり、閑職に追いやられたのかと思ったほどだ。若気の至りもあって意気込みに欠けていたし、なんでこんなことをとさえ考えていた。

 ステレ・リートは美しい少女だった。
 亜麻色の長髪は緩くウェーブがかっており、焦茶の瞳は好奇心旺盛にいつも輝きに満ちている。あの頃、妖精の話に出てきた想像そのもの──いや、それ以上だった。今は実家で元冒険者の父の手伝いをしたり、近所で子供たちに読み書きを教えたりしているようだった。

 その時にはすでにかなりの好感を抱いていたと思う。自分とは正反対で眩く、手の届かない存在。監視任務でありながらも、彼女を見ているだけで心が満たされる気持ちになってた。ただ、自分よりも4つも年下の成人したばかりの少女に俗な感情を持つことを自分の理性が許さなかった。

 けれどその考えは簡単に覆された。
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