23 / 49
23.触れ合い
しおりを挟む「なら、抱き合ったり口付けしたり……そのそれ以上も普段からしていくべきだろう」
「た、たしかにその通り……です」
「お前は…………俺と触れ合うのは嫌、じゃないか?」
コルネリウスの声は尻すぼみになっていった。
抱き合ったまま顔を少しだけ彼の方へと向ければ、その耳も頬も仄かに赤く染まっている。
その瞬間、私もコルネリウスの熱に侵されたように頬がかっと熱くなった。からりと喉の奥が渇き、呼吸が乱れる。
私は動揺を押し殺しながらも口を開いた。
「嫌じゃ、ないです」
途端、ばっと身体が離される。
コルネリウスは私の言葉の真意を確かめようと、まじまじとこちらを見据えてきた。その蒼い瞳が何を思ってそのような──期待するような眼差しを向けてきているのか。
「本当か? 俺と触れ合うことに忌避感は覚えていないんだな」
「ええ。もしそうなら、さきほど抱きつかれたときも突き飛ばしてるはずですから」
「お前に俺が突き飛ばせるのか?」
彼は口元に弧を浮かべて笑う。
いつもとは違う嫌味の含まれない口ぶり。
私の心をぎゅっと締め付けた。
「それならば今……触れてもいいのか?」
彼は腫れ物に触るように、おっかなびっくりと尋ねる。
恐る恐るといったその様子は、まるで飼い主に遊んでほしい飼い犬のようにも見えて。自然と表情が緩まるのを感じた。
「……はい、少しだけなら──って、きゃっ」
言葉がいい終わるのと同時、コルネリウスはまた私の唇を奪った。密着した粘膜をくすぐるように舌先で撫でられ、ぞくぞくとした感触が全身を支配する。
そばに置かれたソファに押し倒されるが、口付けをやめるそぶりはなかった。のしかかられながら、まるですべてを貪られてしまうかと思うような熱烈な口付けは脳を痺れさせていく。
くちゅ、と唾液を交換する音が直接耳に届き、気恥ずかしさにコルネリウスの服の裾を掴んだ。
唇が離れるとその間には銀糸が伝う。私たちは目配せをしたあと、お互い照れたように目線を背けた。
コルネリウスは熱い息をつきながら口にする。
「……手枷、どこまですれば解呪されるんだろうな」
「どこまでって……」
その言葉の意味が分かり、一気に体温が上昇する。
「2回触れ合ったが、この枷は何の反応も示さなかった。もしかすれば何度も同じように繰り返していけば、いつか解呪されるかもしれない」
私は彼の言葉に同意するように頷いた。
コルネリウスは続ける。
「だが仮に……最後までしなければ解けないのであれば──」
「──今までやっときた方法では解呪が出来ないかもしれないってこと、ですよね?」
「ああ」
気まず気に目線を彷徨わせるコルネリウス。
そんな彼の様子に対し、私ははっきりと告げる。
「……っ、しましょう! もちろん最後まで!」
自分から口にすることは非常に勇気のいることで、羞恥心に飲み込まれてしまいそうだった。
だが私の本心は言葉の通りで。
コルネリウスから『触れ合うことが嫌じゃないか』と聞かれたらとき、答えは出ていた。
恋愛感情があるかと聞かれれば、正直わからない。
彼とは数日過ごしただけで、以前は嫌われているから苦手に思っている相手だった。
けれど少しずつ彼の性格や言動を知って、嫌いだとは思えない自分がいることに気がついた。
共に過ごしていても意外と居心地がいいし、相手のことをよく見ているなと感じる節もある。
それにコルネリウスとの性的な行為をした後も嫌悪感は一切なく、むしろもっと触れて欲しいとすら思っていた。
彼ならば大事に自分を抱いてくれるだろう。そんな確信を抱かせた。
頷く私に対し、コルネリウスはぐっと喉の奥を鳴らした。
「ならば遠慮はしない。……お前──ステレのこと大事に抱くつもりだ。信じろ」
言葉は熱っぽく、その瞳は獣のように鋭い。
触れらていないのに体の奥から何か熱いものが込み上げてくる気配を覚える。
「……はい。初めてなので、優しくお願いします」
瞬間。
コルネリウスはかぶりつくような口付けをしてきた。先ほど以上にさらに深い口付けは意識を朦朧とさせるほどだ。
唇が離れたと思えば、額、頬、鼻先とちゅっと音を立てて唇を落とす。まるで恋人同士のようなそれに甘く全身が溶けていく。
コルネリウスは先に自らのシャツを脱ぎ捨てた。
汗の滲んだ鍛えられた肉体が視界に映り、今から行われる行為に対して現実感が湧いてきた。
私は今からこの男に抱かれるのだ。
その事実だけで淫らに腰が震えてしまった。
あの時の全身が攫われていくような絶頂を思い出し、下腹部が疼く。そんな好色な自分が恥ずかしく、俯いて震えていれば。
「……大丈夫か。無理してないか?」
優しく問いかけられ、恥じらいながらも頷き返す。
彼は「なら良かった」と囁き、私のブラウスのボタンを外しだした。
隠された肌が男の前に晒されれば、羞恥で消えてしまいたくなった。けれど私を見下ろすコルネリウスの瞳が恐ろしいほどギラギラと輝いており、獲物を前にした肉食獣のようで。
この触れ合いは発情の呪い抜きで行われる。
素面ですることになるのだ。
そのことをはっきり実感させられた。
3
あなたにおすすめの小説
男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
百門一新
恋愛
男装の獣師ラビィは『黒大狼のノエル』と暮らしている。彼は、普通の人間には見えない『妖獣』というモノだった。動物と話せる能力を持っている彼女は、幼馴染で副隊長セドリックの兄、総隊長のせいで第三騎士団の専属獣師になることに…!?
「ノエルが他の人にも見えるようになる……?」
総隊長の話を聞いて行動を開始したところ、新たな妖獣との出会いも!
そろそろ我慢もぷっつんしそうな幼馴染の副隊長と、じゃじゃ馬でやんちゃすぎるチビ獣師のラブ。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~
雨宮羽那
恋愛
魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。
そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!
詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。
家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。
同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!?
「これは契約結婚のはずですよね!?」
……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……?
◇◇◇◇
恋愛小説大賞に応募しています。
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"
モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです!
※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。
※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。
強面騎士団長と転生皇女の物語
狭山雪菜
恋愛
コイタ王国第一皇女のサーシャは、とある理由から未婚のまま城に住んでいた。
成人式もとっくに済ませた20歳になると、国王陛下から縁談を結ばれて1年後に結婚式を挙げた。
その相手は、コイタ王国の騎士団団長だったのだがーー
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる