【完結】私にだけ当たりの強い騎士様と1メートル以上離れられなくなって絶望中

椿かもめ

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23.触れ合い

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「なら、抱き合ったり口付けしたり……そのそれ以上も普段からしていくべきだろう」

「た、たしかにその通り……です」

「お前は…………俺と触れ合うのは嫌、じゃないか?」

 コルネリウスの声は尻すぼみになっていった。
 抱き合ったまま顔を少しだけ彼の方へと向ければ、その耳も頬も仄かに赤く染まっている。
 その瞬間、私もコルネリウスの熱に侵されたように頬がかっと熱くなった。からりと喉の奥が渇き、呼吸が乱れる。

 私は動揺を押し殺しながらも口を開いた。

「嫌じゃ、ないです」

 途端、ばっと身体が離される。
 コルネリウスは私の言葉の真意を確かめようと、まじまじとこちらを見据えてきた。その蒼い瞳が何を思ってそのような──期待するような眼差しを向けてきているのか。

「本当か? 俺と触れ合うことに忌避感は覚えていないんだな」

「ええ。もしそうなら、さきほど抱きつかれたときも突き飛ばしてるはずですから」

「お前に俺が突き飛ばせるのか?」

 彼は口元に弧を浮かべて笑う。
 いつもとは違う嫌味の含まれない口ぶり。
 私の心をぎゅっと締め付けた。

「それならば今……触れてもいいのか?」

 彼は腫れ物に触るように、おっかなびっくりと尋ねる。
 恐る恐るといったその様子は、まるで飼い主に遊んでほしい飼い犬のようにも見えて。自然と表情が緩まるのを感じた。

「……はい、少しだけなら──って、きゃっ」

 言葉がいい終わるのと同時、コルネリウスはまた私の唇を奪った。密着した粘膜をくすぐるように舌先で撫でられ、ぞくぞくとした感触が全身を支配する。
 
 そばに置かれたソファに押し倒されるが、口付けをやめるそぶりはなかった。のしかかられながら、まるですべてを貪られてしまうかと思うような熱烈な口付けは脳を痺れさせていく。

 くちゅ、と唾液を交換する音が直接耳に届き、気恥ずかしさにコルネリウスの服の裾を掴んだ。
 唇が離れるとその間には銀糸が伝う。私たちは目配せをしたあと、お互い照れたように目線を背けた。

 コルネリウスは熱い息をつきながら口にする。

「……手枷、どこまですれば解呪されるんだろうな」

「どこまでって……」

 その言葉の意味が分かり、一気に体温が上昇する。

「2回触れ合ったが、この枷は何の反応も示さなかった。もしかすれば何度も同じように繰り返していけば、いつか解呪されるかもしれない」

 私は彼の言葉に同意するように頷いた。
 コルネリウスは続ける。

「だが仮に……最後までしなければ解けないのであれば──」

「──今までやっときた方法では解呪が出来ないかもしれないってこと、ですよね?」

「ああ」

 気まず気に目線を彷徨わせるコルネリウス。
 そんな彼の様子に対し、私ははっきりと告げる。

「……っ、しましょう! もちろん最後まで!」

 自分から口にすることは非常に勇気のいることで、羞恥心に飲み込まれてしまいそうだった。
 だが私の本心は言葉の通りで。
 コルネリウスから『触れ合うことが嫌じゃないか』と聞かれたらとき、答えは出ていた。
 
 恋愛感情があるかと聞かれれば、正直わからない。
 彼とは数日過ごしただけで、以前は嫌われているから苦手に思っている相手だった。
 けれど少しずつ彼の性格や言動を知って、嫌いだとは思えない自分がいることに気がついた。
 共に過ごしていても意外と居心地がいいし、相手のことをよく見ているなと感じる節もある。

 それにコルネリウスとの性的な行為をした後も嫌悪感は一切なく、むしろもっと触れて欲しいとすら思っていた。
 彼ならば大事に自分を抱いてくれるだろう。そんな確信を抱かせた。
 
 頷く私に対し、コルネリウスはぐっと喉の奥を鳴らした。

「ならば遠慮はしない。……お前──ステレのこと大事に抱くつもりだ。信じろ」

 言葉は熱っぽく、その瞳は獣のように鋭い。
 触れらていないのに体の奥から何か熱いものが込み上げてくる気配を覚える。

「……はい。初めてなので、優しくお願いします」

 瞬間。
 コルネリウスはかぶりつくような口付けをしてきた。先ほど以上にさらに深い口付けは意識を朦朧とさせるほどだ。
 唇が離れたと思えば、額、頬、鼻先とちゅっと音を立てて唇を落とす。まるで恋人同士のようなそれに甘く全身が溶けていく。

 コルネリウスは先に自らのシャツを脱ぎ捨てた。
 汗の滲んだ鍛えられた肉体が視界に映り、今から行われる行為に対して現実感が湧いてきた。

 私は今からこの男に抱かれるのだ。

 その事実だけで淫らに腰が震えてしまった。
 あの時の全身が攫われていくような絶頂を思い出し、下腹部が疼く。そんな好色な自分が恥ずかしく、俯いて震えていれば。

「……大丈夫か。無理してないか?」

  優しく問いかけられ、恥じらいながらも頷き返す。
 彼は「なら良かった」と囁き、私のブラウスのボタンを外しだした。

 隠された肌が男の前に晒されれば、羞恥で消えてしまいたくなった。けれど私を見下ろすコルネリウスの瞳が恐ろしいほどギラギラと輝いており、獲物を前にした肉食獣のようで。
 
 この触れ合いは発情の呪い抜きで行われる。
 素面ですることになるのだ。
 そのことをはっきり実感させられた。
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