【完結】私にだけ当たりの強い騎士様と1メートル以上離れられなくなって絶望中

椿かもめ

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28.冒険者ギルドにて

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 その光景が簡単に想像つくと思いながら、私は口元を緩めた。たしかに両親──特に母には今回の騒動で助けてもらったし、コルネリウスとも昨日話していたが一度実家に戻るべきだ。ついでに父の見舞いでもするとしよう。

 決めた私はコルネリウスへと問いかける。

「仕事はいつから復帰してもいいんでしょうか? リーフの件で聞き取り依頼があるって……」

「仕事に関して、希望であれば明日以降から復帰していただいて構わない。騎士団のとしての聞き取りは1時間あれば事足りるだろう」

「うーん。それじゃあ今日中に目的の場所をすべて回って、明日から仕事に復帰します」

 私の一言で本日の予定が確定した。
 
 バルテルは今日一日は私の付き添いをすると言って聞かなかった。普段から面倒見はいい方だが、告白をした彼は一段と素直で積極的だった。

 騎士団駐屯地までの道中、もちろんコルネリウスも同行したのだが、犬猿の仲の二人はちょっとしたことで口論になる。それで結局私が仲裁し──という完全に決まった流れで気苦労が絶えなかった。

 ふとした瞬間に心の奥のモヤモヤが吐き出してしまいそうで、それを忘れさせてくれるような空気であることに助けられていた。

 騎士団の聞き取り調査はすぐに終了した。
 リーフは基本住処である植木鉢から離れることはなく、今回の手枷の件が例外なのだと伝えた。今日も結局リーフは私の外出についてくる様子はなく、どうしようと考えていた矢先、コルネリウスが言った。

『妖精はここにいたいと言っている。無理に連れ出すのはよくないだろう。俺が騎士団で説明するから何も問題はない』

 その言葉に甘えて植木鉢は置いてきたのだ。
 対応してくれた騎士はどうやら団長だったらしく、『コルネリウスが世話になったね』と気遣いの言葉をかけてくれた。さらに帰り際に言われたことが強く印象に残っていた。

『あいつ──コルネリウスは素直になれない男なんだ。お嬢さんを傷つける言葉や態度をたくさん取ってしまうかもしれない。だがそれが全ては本心からのものだとは思わないであげて欲しいんだ。そこさえ成長して貰えば、騎士団を任せられる人材なんだがな』

 まるで今の私の心境を理解した上で出た言葉のようで、言葉を受け取ったときはあまりの偶然に目を見張ってしまった。

 さすが騎士団のトップに登り詰めるだけあって、人の心の機微にも聡いなと感心する。私はその足で冒険者ギルドへと向かった。

 ギルド内部では昼前ゆえか、かなり混雑していた。冒険者という人種は朝が苦手な者が多く、この時間になってようやく活動を開始するためだ。

 混み合う室内で見たのはものすごい早さが仕事を捌く母カレンの姿だった。私は目を丸くして呟く。

「す、すごい。つい10分前まではあんなに列ができてたのに、もう無くなった……」

「だよな、さすがカレンさんだぜ。あの師匠の手綱を握ってるだけあってバケモ──」

「だーれがバケモノですって! その距離からでも聞こえてるわよ、バルテル!」

 隣に立っていたバルテルはぼそりと「地獄耳だ」と口にした。逆サイドに立つコルネリウスは「馬鹿だな」と腕を組みながらふてぶてしく鼻を鳴らす。

「……ってか、なんでお前までギルドに着いてきてるんだよ! 騎士だろ? 仕事しろよ!」

 バルテルは青筋を立てながら私を挟んだすぐ隣に立つ無愛想な騎士に言い返した。確かにと内心思っていれば、コルネリウスはあからさまにため息をつきながら怒鳴る男に言う。

「これも騎士の任務の一つだ。いつも遊んでばかりのお前には理解できないかもしれないが、ここにいるだけでも護衛、情報収集の仕事を果たしている。部外者は口を出すな」

「なにをっ!」

 大の大人二人の小競り合いがまた始まり、私は途方に暮れつつその場を離れる。
 そのまま家での面影なく瞳をぎらつかせながら仕事に励む母に声をかけた。

「ごめんなさいね。お仕事から手が離せなくて。……よしっ! これでおわりっと! これで書類の処理は大体オッケーね。ステレちゃん、お待たせ! そうそう、どうやら呪い解けちゃったみたいね」

「お母さん、変わってくれてでありがとう。お仕事お疲れ様! ……それと『解けちゃった』って……解けてよかったんだよ!」

「え~! でもあのかっこいいい騎士様とせっかくのお近づきになれるチャンスだったに。まあステレちゃんがバルテルでいいなら私も応援するけど!」

 言葉を耳にした瞬間、気がつけばかっと頬が熱くなっていた。
 それを見た母は何かを察し、にんまりと満足そうな笑みを浮かべて数度頷いた。何も言われていないはずなのに、どうしてだか穴があったら入りたくなる。何を隠してもすべて見透かされていそうに思い、適当に受け流さんと顔を逸らした。

 そこにちょうどギルド長がやってきたことで居た堪れなさからは無事脱脚でき。

「カレン先輩のおかげで、ここ1ヶ月溜まっていた書類がすべて処理済みになりました。本当に感謝してます。それとどうかお願いします。ぜひ、現役職員としてギルドに戻ってきてください」

「うーん、それも楽しいかもしれないけどね……私はマイクのことと家のことを優先したいからごめんなさいね。期待には応えてあげられそうにないわ。その代わり私の可愛いステレちゃんをうんと鍛えてあげてちょうだい! 私の娘だもの、数年後にはきっと私以上に優秀になるわ!」

 そんなこんなでギルド長と母のやりとりがあり。
 母の優秀さにより気をよくしたギルド長は、『最後の日ではありますが、せっかくですのでカレン先輩も今日は上がって実家で家族団欒してきたらいかがですか』と告げていた。
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